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「継続は力なりのウソ」仕事ができる人ほど"無駄な努力"にさっさと終止符を打てるワケ

  • 2021.6.4
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成功する人ほどあきらめが早い。不動産コンサルタントの午堂登紀雄さんはそう指摘します。「彼らはコロナ禍の初期に閉店や撤退を決意し、最近は新店オープンや新事業の報告が多くなっています」。なぜ成功者たちは、さっさとあきらめてしまえるのでしょうか――。

伸びをする女性
※写真はイメージです
今年に入って、攻めの投稿が増えた富裕層たち

私は多くの起業家や経営者、富裕層とSNSでつながっているのですが、このコロナ禍で気付いたことがあります。

それは、コロナの影響を直撃した人の多くは、「あきらめが速い」「変わり身が速い」という点です。

2020年の早いタイミングで、「閉店します」「撤退します」「損切りします」という投稿が相次いだと思ったら、昨今は「新店オープンしました」「通販事業を始めました」「いまこれに投資しています」と攻める投稿が増えているからです。

なぜいち早くあきらめられるのか

たとえばある飲食店経営者は、都心の家賃が高額な大箱の店舗を閉じ、住宅街にある既存店を改装するなど選択と集中に舵を切りました。

借りていたセミナールームを解約し、完全オンラインに切り替えた人もいます。

インバウンド需要に依存していた外貨両替機を売却したり、ゲストハウスをワーケーション施設やコワーキングスペースに改装した人もいます。

富裕層が持っている能力のひとつに、自分が置かれた状況を冷静に把握・認識して、自分がやっていることや向かっている方向が適切でないかもしれないと気がつくこと、そして素早く切り替える力があります。

その中で当然ながら「あきらめる」という判断を迫られることがあるわけですが、ではなぜ彼らは、いち早くあきらめることができるのか、既存の事業に執着せず方向転換できるのか。

あきらめないことを美化する傾向は危険

一般的に「あきらめる」には、無念さ、苦しさ、みじめさ、挫折、夢破れて撤退、といった苦渋に満ちた敗北のイメージがあります。

また「あきらめた人」には、無能、意志が弱い、根性なし、無責任、などというダメ人間のイメージがあります。

一方、「継続は力なり」「あきらめたらそこで試合終了だよ」「石の上にも3年」「初志貫徹」などの言葉が私たちを縛ります。努力という名の宗教が、社会的な圧力をかけているようにすら感じます。

あきらめずに成し遂げたという美談ばかりが強調され、あきらめて大成したという話はあまり出てこないように、とくに日本では「あきらめないこと」「がんばれば報われる」という価値観が主流です。

それでがんじがらめになったり、行き詰まったり、先行きが見えなくなったり、プレッシャーに悩まされたりすることは、おそらく多くの人が経験してきていると思います。

無駄な努力に終止符を打つ

しかし富裕層が持つ「あきらめる」はちょっと違います。

「あきらめる」とは「効率の悪さへの自覚」であり、無駄な努力に終止符を打つことです。

そう自覚するためには、自分の見栄やプライド、固定観念を排して機動的かつ柔軟に認識する必要があります。がんばることや継続することは手段であって目的ではないことに気づける力。その目的すらも、もっと先にある真の目的に合致しているか、そのつど点検できる力です。

つまり彼らは事業を投げ出したのではなく、「あきらめて」「方向転換した」のです。

机の上のメモ帳
※写真はイメージです

投げ出すことは単に自暴自棄、思考停止による責任放棄ですが、あきらめることは優先順位をつけて見切りをつけることです。

「あきらめる」というのは、もとは仏教用語で、「明らかにする」が語源だという説を聞いたことがあります。挫折や敗北、軽蔑の対象という意味ではなかったようです。

つまりあきらめるとは、執着からの解放であり気持ちを切り替えること、自分にとって大切でないものを捨て、より大切なものを選ぶ決断術というわけです。

あきらめないことは思考停止の一種

このように、「ここらであきらめたほうがいいかもしれない」と判断できれば、冷静に考えることができるようになります。

たとえば資金があるうちに従業員に割増退職金を支払って円満に退職してもらったり、もっと家賃の安い事務所に引っ越したりなど、打てる手はいくつか残されます。

一方あきらめきれずに粘るのは、合理性よりも単に本人の意地の問題で、思考停止しているだけのことがあります。この先どうがんばっても業績が改善する見通しは立たないのに事業を継続することに執着してしまうと、それ以外の選択肢が見えなくなります。

継続することにしがみついている間にお金が尽きていき、お金がない焦りでさらに冷静さを失います。ズルズルと資金は減り、割増退職金を出す余裕もなく、引っ越し費用すら賄えなくなり、身動きがとれなくなります。

事態は悪化の一途をたどり、もはや選べる手段がなく、どうにもならない。そして最終的には「投げ出す」、つまり倒産や夜逃げです。

その結果、周囲に迷惑をかけ、どん底に陥るのは珍しいことではありません。

あきらめれば客観的になれますが、あきらめないと冷静さを失いやすいのです。

サンクコストを無視できる

また、意思決定においてサンクコスト(埋没費用)を無視できるというのも、富裕層が持つ「あきらめる力」の一つです。

たとえば冒頭で「ある飲食店経営者は、都心の家賃が高額な大箱の店舗を閉じ」という話を紹介しましたが、その店は高級店でしたから、内装造作には数千万円の初期投資がかかっているはずです。

普通なら「せっかくこんなにお金をかけたんだから」とあきらめにくいところですが、ここに費やしたお金はもう戻ってくることはないし、今後垂れ流すことになるであろう赤字を食い止めるためにもバッサリ捨てられる勇気があるということです。

これは難関国家資格の受験勉強を続ける人も同じく、「せっかくここまで勉強したんだから」とそれまでの努力をあきらめきれず、以降何年も勉強に費やし気づいたら社会に出るきっかけを失っていた、ということがあります。塾やお稽古事でもよくありますね。

そんな変化に苦痛や面倒くささを感じることもあります。

自分が信じていたことを変えるのは受け入れがたいという人もいるでしょう。自分の考えを曲げるのは屈辱的だと感じる人もいるでしょう。しかしそうやって変わらないのはラクな一方、現実逃避や思考停止と同義です。

富裕層が富裕層であり続ける理由

自分が直面している現実に対し、自分がやってきたことや自分の考えを否定しなければならないこともある。

それでもプライドを捨てて自分を適応させる意欲を持ち、大きな流れに逆らわず、抗わず、波に乗ってみたり、別の波が来るまで待ったりする度量も必要。

自分のやり方を変えなければならないと気づくことは、自分の誤りに自覚的になることであり、それまでの自分のやり方に決別し、違うやり方を取り入れること。つまり、変化することです。

それこそが「知性」であるはずで、それを持つがゆえに富裕層は富裕層であり続けるということなのでしょう。

あるいは計画や交渉などにおいて、状況が悪くなったり行き詰まったりしたときに「白紙に戻す」ことが行われます。

これも、問題がこじれる原因となった前提条件や、それまで考えてきたこと、話し合ってきたことなどをいったんあきらめて(リセットして)、ゼロベースで考え直そうということです。

このように、身動きができなくなりそうになったときに「白紙に戻す」というのは、未来志向の発想だといえます。

「水に流す」こともこれとよく似ています。トラブルやミスなどによって生まれた感情的なわだかまり・しこりをゼロクリアして新しい関係を築こうということですから、やはり未来志向でしょう。

こだわりを捨てると人間関係も円滑に

ここでもし、あきらめきれずに当初の予定や自分の意見を押し通そうとすれば対立を生み、人間関係を失うこともあるでしょう。あきらめきれないと、ムキになったり意固地になったりしやすいからです。

自分の考えに固執しすぎれば「いいえ、それは違います」「それには納得できません」などという「面倒くさい人」にもなりかねません。

でも、そうしたこだわりをあきらめることは「譲り合い」になりますから、人間関係が円滑になったり、禍根を残さず別れたりすることができます。

恋愛でも、別れた相手を引きずっていると、すぐそばに素敵な相手が現れても気づくことができません。過去の相手に縛られて周囲が見えなくなっているからです。

しかし、未練や執着を手放すと視野が広がります。今まで気づかなかった状況や変化を客観的にとらえられるようになり、新しい出会いに恵まれやすくなります。

あきらめないのは現状への執着ですが、あきらめるのはそれを変えること、そして未来への再出発といえるでしょう。

ブレないことは実はリスク

同様に、「ブレない」「一貫性がある」というのは、好ましいことのように思いますが、現代のように環境変化が激しい時代にはむしろアダになるリスクがあることにも、敏感になっておいたほうがいいと思います。

さまざまな経験を積み、自分のできることが変わっていけば、ものの見方や考え方、価値観も変わります。

テクノロジーの進化や新しいサービスの普及で以前よりもずっと簡単に、ローコストで、瞬時にできるようになれば、自分はそれ以外の付加価値にフォーカスしたほうがいいという判断になることもあるでしょう。

だからこそ、富裕層は簡単にあきらめることができ、変わり身も速いのだと思います。

午堂 登紀雄(ごどう・ときお)
米国公認会計士
1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒。大学卒業後、東京都内の会計事務所にて企業の税務・会計支援業務に従事。大手流通企業のマーケティング部門を経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。2006年、株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。現在は不動産投資コンサルティングを手がけるかたわら、資産運用やビジネススキルに関するセミナー、講演で活躍。『捨てるべき40の「悪い」習慣』『「いい人」をやめれば、人生はうまくいく』(ともに日本実業出版社)など著書多数。「ユアFX」の監修を務める。

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