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現代アートの新しい聖地ロマンヴィル【広がるパリを探索する】

  • 2021.6.4
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ひと昔前、パリで現代アートといったら誰もが13区のルイーズ・ヴェイス通りを思ったものだ。1988年にフランソワ・ミッテラン大統領がフランス国立図書館の建築計画を発表し、その開発に伴って生まれたのがルイーズ・ヴェイス通りで、気鋭のギャラリーが集まり、モード界のクリエイターたちもアート作品や現代家具を求めて通い……この通りに行けば、画廊巡りが気軽に楽しめるのが魅力だった。

いま、コンテンポラリーアートの地区として発展中なのは、パリの東に隣接するロマンヴィルだ。地下鉄5番で簡単に行ける。終点ひとつ前のパンタン・ボビニー・レイモン・クノー駅で下車。この地の名所であるアウトレットのPaddock(パドック)の先、かつて薬品会社Fiminco(フィマンコ)の研究所と工場があった広大な敷地に生まれたフォンダシオン・フィマンコがパリっ子たちの新たな現代アートの聖地となりつつあるのだ。

フォンダシオン・フィマンコ。1940年代の建築物が敷地に並ぶ。©Martin-Argyroglo

フォンダシオン・フィマンコが生まれたのは2019年で、11,000㎡の土地に5つの建物で構成されている。その中で目印となるのは煙突がにょきっと立つかつてのボイラー室を改造したギャラリースペース「La Chaufferie(ラ・ショーフリィ)」。天井の高さはなんと14mもある。最近ではここでプレタのブランド「Atlein(アトライン)」が映像化のためのショーを開催しているように、マルチに使用されるスペースだ。

左:天井が14mあるラ・ショーフリィ。右:ボイラー室だった時代の写真が階段に掲げられている。photos:Mariko Omura

隣の建物には、フォンダシオン・フィマンコによる世界の若いアーティストを集めたレジデンスがあり、またモードとデザインの学校Person'sのパリ校舎も入っている。その向かいの建物の地上階に並ぶのは、パリから移ってきたエール・ドゥ・パリ、イン・シチュ・ファビエンヌ・ルクレール、ギャルリー・サトールといったアートギャラリー、そして若いアーティストのクリエイションを支援するアソシエーションだ。もうひとつの建物には、やはりパリから移ってきたギャルリー・ジョスラン・ウォルフが。ここに来るだけで、アート散策ができるとあってパリから足を運ぶ人の数は徐々に増えている。

左:2月に開催されたレジデンスのオープンデーには、各アトリエでアーティストたちが自作を展示した。右:地下にはセリグラフィー、版画などのためのアトリエが設けられている。ここでレジデンスのアーティストたちが技術者と意見交換をすることで、新しい作品へと導かれる可能性もあるそうだ。photos:Mariko Omura

5月6日には敷地内に、パリを含むイル・ド・フランスの現代アート地域基金(略称Frac)の所蔵作品の保管所が落成した。Frac イル・ド・フランスは1980年から収集を始め、現在2000点以上のアート作品を所蔵している。絵画、彫刻、写真、ビデオ、映画、デザイン……それら作品の保存と管理のための1600㎡、展示のための400㎡というのがこの建物の構成だ。今日の芸術を収集し、それを大勢に見せること使命とするFrac。これで複数の倉庫で所蔵していた作品がロマンヴィルに集められたことで、よりパワーを増してゆくことだろう。

正面がfrac イル・ド・フランスの所蔵品を収める建物。右側の建物がレジデンスのアトリエとパーソンズ・パリ、左側の建物の1階にギャルリーが並ぶ。この裏手の建物には、コンテンポラリーダンスの振り付け家ブランカ・リーのカンパニーが入る予定だ。© Martin-Argyroglo

Fondation Fiminco43, rue de la Commune de Paris93230 Romainvillefondationfiminco.com

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