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「ねとらぼ」副編集長に聞きましたヒット記事連発を支える「哲学」(後編)

  • 2021.5.27
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アイティメディア本社にて、「ねとらぼ」副編集長・池谷勇人さん

アイティメディア(東京都港区)が運営する「ねとらぼ」副編集長・池谷勇人さんに、ヒット記事を生み出す秘訣を語ってもらう。前編では「読者に喜ばれる記事を作り続けるために重視しているネタの選び方」「サイト誕生からの歩み」にまつわる裏話を聞いた。

今回は後編。記事タイトルや本文に込めている具体的なこだわりや、約22万6000フォロワーを抱える「ねとらぼ公式ツイッターアカウント」の運用について、興味深い話となった。

意識高い系、上から目線の記事は「時代遅れ」

どんな記事を手がけるにしても、まず池谷さんが重要視しているポイントは「下から目線」だ。もっとも、卑屈になったり、自分たちの記事を卑下したりするわけではない。

「いわゆる意識高い系、上から目線の『私が教えてやろう』的な記事は時代遅れだと考えています。えらそうなことを書けば、必ず自分たちに跳ね返ってきますから。記事内に過度、あるいは高圧的な『ライターの個人的意見』が見受けられたときは、編集で削っています」

ただ「事実100%」で出来ている記事は、読者と距離が開いてしまう。読者に親しみを感じてもらい、さらに「身内」になってもらうブランディング戦略も欠かせない。

「事実:ライターの主観」を、8:2ないしは9:1のバランスに調整。そのうえで、記事の最初と真ん中にライターの主観、つまり取り扱うモノ・コトに対して書き手が感じた疑問やワクワクといった感想を入れ、イジリポイントとする。

「タイトルは、記事内容がわかりやすく伝わることが大前提ですが、読者の関心を集められる強い単語『パワーワード』を並べて掛け合わせるのが、ねとらぼ流です。自分がよく好んで使うのは『爆誕』ですね。あとは、取材コメントが記事に載っているよ、渦中の人に話を聞いたよ、と示せる一言も強いのですが、タイトルに取ると言葉のキレやテンポが悪くなることが多く、悩みどころです(笑)」(池谷さん)

こうした「タイトルに入れられなかった要素」をカバーするのが、ツイッターだ。

「あの、ねとらぼだしな」と思ってもらえるユルさ

ねとらぼツイッターの投稿は、99%が記事紹介だ。(1)ライターの感想や、読者の感情に訴えかける10文字前後の説明文、(2)タイトル、(3)URL、を基本形として、所属する編集スタッフ約30人それぞれが書いた記事をツイートしている。 (1)で、前述した「タイトルに入れられなかった要素」を語る場合もある。

内情を知らなければ、1人の専任担当者が全投稿を作っているように見えるほど、ツイートのスタイル、文章の柔らかさ、情報量といった各要素が揃っている。マニュアルがあるのか。池谷さんは「それが、そういったものはないんです(笑)」と話した。

ただ、根幹である「媒体のトンマナ」が一貫しているため、「自然と各スタッフのツイート内容もブレないのだと思います」。専任担当者がおらず、かつ複数人がツイートできるため、スタッフの入れ替わりがあっても運用に影響が出ず、後任のツイッター担当を決める必要に迫られない。

一方で、中の人が見える「ゆるいツイート」をする難しさを感じているという。メディアアカウントである以上、主役は記事ツイートであり、フォロワーが欲しているのはニュースだと考えられる。フォロワーに煙たがられない程度に、人間味が伝わる投稿を増やすにはどうすればいいか、悩んでいるそうだ。

「普段から『良い意味でゆるい、意識の低い』印象を与えることで、ちょっとしたミスをしてしまったときに『まあ、あのねとらぼだしな』とお目こぼししてもらえる、おいしいポジションを保ち続けたいからです(笑)」

ねとらぼツイッターでは、投稿内容に誤字や脱字があったとき、記事URLがリンク切れしていたときなど、ミスが発覚した場合にスタッフを「おやつ抜きの刑」にすることがある。昨今では投稿に誤りを見つけたユーザーから「リンク切れだけど、これはおやつ抜きの刑ですかね?」といったイジりが、リプライが寄せられるほど、和やかな雰囲気が出来上がっている。

池谷さんは最後に、ツイッターにまつわるトリビアを教えてくれた。今では当たり前になっている文化を、ねとらぼが新たに作りだした話だ。

「ツイッターで一般ユーザーが投稿した画像を、メディアが取り上げたいときに、『使わせてもらえませんか』とリプライやDMで許諾を取るのが一般的になっていますが、ツイッターのサービス開始当初は見られませんでした。その『ユーザー許諾依頼』のパイオニアが、ねとらぼだそうです。『ホントか?』と思ったのですが、以前Twitter Japanの方と話したときにそう言っていたので、多分ホントなんでしょう(笑)」

(J-CASTトレンド編集部・藤原綾香)

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