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自然からの贈りもので、手作りの暮らしを楽しむ。

  • 2021.5.23
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ロックダウンがきっかけとなり、パリから田舎に移る人たちが急増中。庭仕事をしながら自然に向き合い、心豊かに過ごすアリスの場合は?

5年前、パリを離れてパートナーの生家で暮らし始めた。それまでデザイナーとしてモードブランドで働いていたアリスは、ノルマンディへの引越しと同時にフリーランスに転身。家からパリまで列車で1時間あまり。週に一度、仕事のためパリへ日帰りする。

もともと、料理やパン作り、花や植物が好き。自給自足の考えにも興味があった。とはいえ、子どもたちのために田舎暮らしをしよう、というパートナーの明確なビジョンに比べると、彼女には当初、田舎暮らしに対しての特別な思いはなかったという。

「フリーランスになったこともあり、時間が自由に使えるようになった。夜中に仕事することもあるけど、ヨガや瞑想、庭仕事や料理をして……生活がすっかり変わり、興味を持っていた暮らし方が少しずつ形になった。いつか、この暮らしそのものを仕事にできたら」

数日前に完成したばかりのオープンキッチン。棚は穀類やスパイスの食材が整然と並ぶ。庭の花で作るブーケも欠かさない。6年前に立ち上げたブログ「Alice in food」も昨年から力を入れ、毎週のニュースレターでレシピを発信。ワークショップも開催予定。

自分の手で作ること。自然の恵みを最大限に生かすこと。美しいものに囲まれ、落ち着いて過ごせること。当たり前のようでいてなかなか難しい、「暮らしそのもの」に向き合う心を持てることが、田舎暮らしの最大の利点。

庭ではリンゴ、洋ナシ、プラムやマルメロの木が実をつける。お隣さんに教わって世話をする菜園で、カボチャやズッキーニ、トマトにナス、アーティチョークやインゲンを収穫する。5羽の鶏が卵を少しだけ産んでくれる。

庭で採れた果実は、ジャムやコンポート、ドライフルーツに。トマトはピューレの瓶詰めにすれば一年中味わえる。

庭のローリエ、セージ、ローズマリーを束ねたスマッジングスティック。バラの実やドライローズも彩りに。乾燥させてから燃やし、家を浄化。

自家製のシロップ漬けフルーツやジャム。布とラベルでドレスアップさせるのもアリスのこだわりだ。

「田舎暮らしでは、近所付き合いも新しい発見。一度にたくさん採れた果物や野菜は、互いに分け合い交換する」

ホワイトビネガーに柑橘類の皮を漬け込んで、芳しい掃除用ビネガーを作る。庭のローリエとハーブは束ねてスマッジングスティックに。食材の無駄をなくすレシピや身体に害のないキッチンツールにこだわったり。彼女の生活は、おしゃれなだけではない。パリジェンヌがいま求める、サステイナブルな価値観にしっかりと繋がっている。

秋の終わりに収穫したカボチャやジャガイモは、貯蔵庫に保存。今日はこのカボチャとオレンジでジャムを作る。

隣家の羊とも仲良し。田舎暮らしで近所付き合いも楽しむように。

家の近くに生える野生の野 バラの実は、クコの実よりもビタミンCが豊 富。「ティザーヌにするとおいしいの」

Alice Rocaアリス・ロカファッションデザイナーポール カやコントワール・ド・コトニエでデザイナーを務め、フリーランスに。ブログやインスタグラムで田舎暮らしを発信し、レシピや暮らしのアイデアをまとめた書籍も準備中。@aliceinfood

*「フィガロジャポン」2021年5月号より抜粋

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