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剛力彩芽さん「終活に向き合うことで、今後どう生きるかを考える楽しさがある」

  • 2021.5.19
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終活、決して寂しいことじゃない

――定年から10年近く経った夫・真一と、趣味に打ち込む妻・千賀子が、離婚寸前の危機の中、終活を通して人生を“整理”するストーリーです。

剛力彩芽さん: お話をいただいた時は正直「終活なんて自分にはまだ関係ない」と受け止めていました。でも、台本を読んで「決して寂しいことじゃないんだな」「大切な人のことを思ったら、この年齢でもやったほうがいいな」と気づきました。“人生をどういう風に終わらせたいか”に向き合うことで、今後どう生きるかを考える楽しさがあると感じます。
私の両親にも、“明るいこと”として捉えてもらいたくて、この作品に参加したいと思いました。

朝日新聞telling,(テリング)

――真一と千賀子はけんかが耐えません。家のことは妻に任せっきりの夫が印象的です。

剛力: 真一と千賀子は文句を言い合ってるけど、なんだかんだお互い好きって伝わってくる。だから亜矢もまっすぐな子。亜矢は、ドタバタしているお父さんお母さんを「面白いな」とか「めんどくさいな」と思いながら見ていて、その距離感も好きです。

――剛力さんのご家族はどんな雰囲気ですか?

剛力: 顔がすごく幼い、童顔一家です(笑)。
雰囲気はどうだろうなぁ、楽しいですよ。夏はバーベキューとか流しそうめんをするので結構アクティブ。私と母は人を家に招待するのが好きで、父と姉は、お酒を飲むのが好き。ワイワイやるのはみんな嫌いじゃないって感じですね、私と母が勝手に人を呼んでるだけですが(笑)。
父にはピリッと厳しいところもあり、一方で母がマスコットのような人で、いつも「楽しいね!」みたいなノリ。すごくいっぱい愛がある家族ですね。
意外と大原家と似たような感じなんじゃないかな。私の父はここまで頑固じゃなくて、もうちょっと柔らかい人ですけど。母がワーってうるさく言って、父がムッとする雰囲気は、分かる気がします(笑)。

朝日新聞telling,(テリング)

――30歳の亜矢はキッチンカーを営んでいます。結婚していない一人娘を心配した真一から見合いを勧められ、断るシーンもありました。

剛力: 自分の生きたいように生きているし、お父さんに何でも平気で言える子。割とナチュラルに演じられました。
これまで私は「新人」とか「助手」みたいな、どちらかと言うとキャピキャピしてる役が多かったんです。でも、今回は一人の女性として、娘として、すごく自立している役。大人になった感じがしましたね、私にとって新しかった。こういう役が私のもとに来たことが、うれしかったです。

朝日新聞telling,(テリング)

本当に仲の良い両親、憧れるけど…

――映画の中で、共感したセリフはありましたか?

剛力: 「愛するは許すこと」「お父さんとお母さんを見て、結婚も悪くないと思いました」という亜矢のセリフは好きです。
真一と千賀子ってお互いに文句を言ってるけど、最終的に全部許せちゃうんですよね。それは多分長い年月一緒にいたからで。
「愛ってなんだろう」って考える時期があるじゃないですか。今私がこういうこと言うと含みがありすぎるんですけれど(笑)。家族や友達、愛するパートナーに対するものも含めて「愛ってなんだろう」と考えてた中で、「愛することは許すこと」というメッセージはすごく大切だと感じました。両親って自分が一番近くで見てる“人生の先輩”だから、その二人から得られるのも素敵だな、と。

朝日新聞telling,(テリング)

――ご自身も、両親を見ていて感じることはありますか?

剛力: 幼少期に母から父の悪口聞いたことがないんです。父は単身赴任でずっと海外にいて、「お父さんが働いてくれるから、生活ができてるんだよ」と母からずっと言われてきました。今はたまに私と母で父の悪口を言うことがあるけど、それも愛があるからこそ。この前、家族で出かけた時なんか、父と母は手を繋いでいました。本当に仲がいいんです。お互いを認め合っているし、尊敬し合っている。すごく憧れますね。
理想がどんどん高くなっちゃうので、困りますけどね(笑)。憧れる男性像も夫婦像も、上がっちゃって。同じようにはなれないだろうけど、私の家族の理想像に共感してくれる人がいたらいいな。

――剛力さんご自身は、リタイア後の理想の姿はありますか?

剛力: この仕事は定年がないので、多分長く続けているんじゃないかな。
昔から、沖縄で牧場を開いて、動物に囲まれて暮らすのが夢だったんです。でも、沖縄はゴキブリがめちゃくちゃデカい、というのを知って「じゃあ北海道にしよう」と安易な考えをしていました(笑)。動物がすごく好きなので、動物と、たくさんの孫に囲まれて暮らしたいです。

朝日新聞telling,(テリング)

――橋爪功さん、高畑淳子さんとの共演でした。

剛力: お2人とも大先輩なのに、すごく芝居しやすい環境をつくってくださいました。
最初はめちゃくちゃ緊張したんです。橋爪さんとお会いした時、特に。いらっしゃるだけで空気が変わるんですよ。それも察する人だから、みんなを笑わせてくれたり、でも締めるところは締めてくれたり。まさに“お父さん”のような雰囲気を出してくれてました。高畑さんも「彩芽ちゃん」って優しくしてくださったから、自然に娘になれましたね。

――印象的だったことは?

剛力: 橋爪さんが芝居でキレるシーンがあって、すごく静かに怒るんです。それがめちゃくちゃ怖かった。「怒鳴ったり大声を出したりするのだけが“怒る”じゃないんだな」という気づきがあったし、人生の経験値がそうさせてるのかな、とも。カットが入ると普段通りに戻るので、その瞬間だけで役をつくれるのも、すごい。本当に勉強させていただきました。

朝日新聞telling,(テリング)

思い出は仕事のことばかり。高校がすごく楽しかった

――真一と千賀子の金婚式の中で人生を振り返るシーンがありました。剛力さんにとっての思い出とは?

剛力: 振り返ってみると、仕事のことばかりなんです。「芸能界に入りたい」と思ったのが7歳で、事務所入ったのが10歳、大きなお仕事が決まったのが16歳。それぞれのターニングポイントで人生がちょっとずつ変わっていっていて。この仕事とともに生きてきたなって、改めて感じます。
学校のことは全然覚えてないんですよね。小学校と中学校が本当に嫌いで、できれば行きたくなかった。先生には恵まれたので、よくしてもらいましたけど、友達は仕事で出会った子ばかり。「学業優先」って母から言われていたので、行ってましたけどね。

――どうして学校が嫌いだったのですか。

剛力: 幼稚園児の時から小学校低学年まで、母と離れたくない気持ちが強かったんです。その延長で、小学校・中学校はなんか好きじゃなかった。母のそばにいたかったし、勉強も得意じゃなくて。いじめられたことはなかったけど、人見知りだったので、同級生と仲良くなるのに時間がかかったのもあったかな。
当時はお仕事をしながら、ダンス教室にほぼ毎日通っていて。「お腹痛い」とか「気持ち悪い」とか言って学校を休もうとしたんですが、そうすると「ダンスも休む?」って母から言われてしまう。「いや、じゃあ行ってきます」って諦めて学校に行ってましたね(笑)。
でも高校は芸能科で、すごく楽しかったですよ。同じ夢を持つ人たちと過ごせたことが大きかったですね。

●剛力彩芽さんのプロフィール
1992年、神奈川県生まれ。2008年からティーン向けファッション誌『Seventeen』(集英社)の専属モデル。2007年、ドラマ『チョコミミ』(テレ東系)で女優デビュー。「ランチパック(山崎製パン)」や「au」などのCMに出演し11年、『日経トレンディ』(日経BP社)が選ぶ「今年の顔」に選ばれた。代表作に映画『黒執事』(14年)やドラマ『女囚セブン』(17年、テレ朝系)などがある。20年、個人事務所「株式会社ショートカット」を設立した。

■奥 令のプロフィール
1989年、東京生まれ。不登校・高校中退から高卒認定を取得し大学へ。新聞の記者・編集者を経て、2020年3月からtelling,編集部。好きなものは花、猫、美容、散歩、ランニング、料理。

■齋藤大輔のプロフィール
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。

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