1. トップ
  2. お笑いの千鳥、ゴルファーの渋野日向子、アーティストの藤井風etc. 岡山県の魅力に迫る!vol.1

お笑いの千鳥、ゴルファーの渋野日向子、アーティストの藤井風etc. 岡山県の魅力に迫る!vol.1

  • 2021.5.18
  • 3936 views

女子高生が「ワシ」と言った。夕方の地下鉄銀座線での出来事だった。マスクしている会話だから聞き間違い?いや確かに一人称は「ワシ」。そう、素知らぬ顔をして岡山はあなたのそばに、すぐ隣にいるのです。全9回の連載で、岡山の魅力をお届け。

岡山に心、奪われて

世の中の変化が目まぐるしい中、ここ数年の岡山人の台頭ぶりはすごい。なぜ今、時代は岡山なのか、岡山評論家の福田フクスケさんにきいてみた。

「GINZA編集部、いいところに気がつきましたね。牽引している岡山勢はお笑い界では千鳥、ゴルファーの渋野日向子、音楽界YouTubeで注目の藤井風。自然にギャグやスウィングやメロディに岡山弁を入れ、メジャーな活動をさらっとやり遂げる。全英女子オープン制覇後に渋野日向子の放った一言『まったく泣かん。なんでじゃろ』、藤井風は曲のタイトルが『何なんw』ですよ。で、歌詞の岡山弁がもうおしゃれで。そして千鳥。あの『イカ二貫』。イカ二貫に潜む岡山弁のリズムを感じませんか?」


渋野日向子さん

岡山出身者の活躍の要因は?
「ずばり気負いのなさです。主張の強い大阪、名古屋、広島、福岡にとって岡山はノーマークでしたから、ライバル視さえしていない。ところが今もう日本が岡山色に染まりつつある。岡山は自分たちを“権威化”する気持ちがまったくない。無欲の勝利です。名産品ランキングでもことごとく2位か3位。M-1グランプリで決勝常連ながら優勝しなかった千鳥も今は人気沸騰。これまでも岡山出身で活躍している人は多いですよ。B’z稲葉浩志、オダギリ ジョー、星野仙一監督。桃太郎というみんなが知っている童話の主人公も岡山人なのに、あまり自慢しない。もっと言っていいはずなんですが。岡山の人は謙虚なんです」

千鳥さん

ところで編集部でもいつの間にか、自分のことをワシって言う人増えています。撮影中もワシワシって。

「そうでしょ。そこが岡山弁の耳触りの良さの魔法です。たとえば千鳥も使う『〜しょーる(している)』という岡山弁の語尾には異国情緒がある。そこにはグラン・ギニョール(*1)の猥雑さがあり、セニョール(*2)の優美さも同居する。僕はね、疲れたときにいつも目をつぶって『セニョール、グラン・ギニョール、何しょーる』ってそっと呟くんです。そうするとね、心が穏やかになる。なんならオダギリ ジョーも、B’zのベストアルバムのタイトル『トレジャー』『プレジャー』も岡山弁っぽいでしょ」

岡山の魅力をわかりやすく表現していただけますか?

「対照的な二面性の共存。これに尽きますね。また千鳥の話に戻りますが、岡山をシンプルに解説すると、大悟とノブ。『大悟っぽさ:ノブっぽさ』とはすなわち『いかつさ:可愛らしさ』であり、『ガラの悪さ:親しみやすさ』であり、『わい雑さ:品の良さ』なんです。昭和の風情を色濃く残す千鳥はいつの間にか笑いの最前線、最先端にも立っていて、ファッション業界でも千鳥好きが多い。これは山に自生する野趣あふれる果物だったイチジクが、いつの間にか意識高い系のフルーツとして扱われているのと似ていますねえ。“岡山のイチジク化現象”と呼ばれています」

岡山の浸食は続くのでしょうか?

「浸食もなにも、東京の人が勝手に岡山の虜になっているだけですよ。今、活躍している岡山人たちはますますグローバルになってくると確信しています」

*1 フランス語で「見世物小屋」。
*2 スペイン語で「紳士」。

GINZA2020年11月号掲載

元記事で読む
の記事をもっとみる