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『おちょやん』杉咲花の“千秋楽”に拍手! “どん底”を描いた先にあった人生の希望

  • 2021.5.14
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『おちょやん』写真提供=NHK

昨日の雨から一転して、全国的に快晴となった5月14日。約半年にわたり放送してきた『おちょやん』(NHK総合)が千秋楽を迎えた。幕引きの柝の音に合わせ、万雷の拍手が全国に轟いたことだろう。

『おちょやん』がどんな朝ドラであったかと聞かれれば、大半の人が「しんどかった……けど、笑えて楽しかった」と答えるはずだ。近年の朝ドラにはなかったどん底を描いた『おちょやん』は、その千代(杉咲花)の壮絶な人生に、喜劇とは何たるかを投影していた。第111話で、一平(成田凌)はインタビューの中で「目ぇ覆いたなるようなことの先にこそ本当の喜劇がある」「私は喜劇なんかなくなる世界を作るために喜劇をやってるのかも分かりませんな」と答えているが、大事な人の死の先に、戦争の先に、裏切りの先に、いつも『おちょやん』には笑いがあったのだ。

最終回では、千代が特別公演として鶴亀新喜劇に出演する。演目は、彼女が新喜劇で最後に演じた『お家はんと直どん』。演じる千代と一平は役に入り込みつつも、それぞれが人生を振り返りながらセリフを噛み締めていく

「もし私ら一緒にいてたら、どないな人生があったやろか」
「そないなこと考えてもしゃあないがな」
「そうですな。今ある人生それが全てですな。あんたと別れへんかったら大切な人たちと出会うこともでけへんかった。あんさんも私も愛する我が子と出会うこともでけへんかった」

会場の席には千代を見つめる春子(毎田暖乃)、舞台袖には新平を抱く灯子(小西はる)の姿が。さらには鶴亀新喜劇の団員や岡福の面々、ラジオドラマ『お父さんはお人好し』のキャスト、スタッフが千代の晴れの舞台を見守っている。千代は波乱万丈ながら、出会いに満ちた人生でもあった。土砂降りの雨のような苦労の連続にも、必ず誰かがそっと手を差し伸べてくれた。やがて千代がぎゅっと抱きしめ守る側に。それが栗子(宮澤エマ)から託された春子というかけがえのない娘だった。

最終週で描かれているのは、これまで関わるのを避けていた舞台に再び向き合う千代の姿。また一歩前に踏み出していく千代を見て、春子は看護婦になるという夢を決心する。春子は千代にとってもお母ちゃんとして成長するための大切な存在であった。そんな2人が未来を思い、手を繋いで歩いていく姿で物語自体が幕を閉じるのは、これ以上ないハッピーエンドだったのではないだろうか。

さらにサプライズだったのは、サエ(三戸なつめ)、テルヲ(トータス松本)、ヨシヲ(倉悠貴)も千代の舞台をあの世から観劇しに来ていたこと。テルヲとヨシヲは相変わらず啀み合っていたが、最愛のお母ちゃんに舞台を見せられた。これで千代の心残りもないだろう。きっと、栗子もどこかの席で見守っていたはず。綺麗な花籠を膝の上にちょこんと乗せて。

「生きるっちゅうのは、ほんまにしんどうて、フフッ……おもろいなぁ!」

劇中のこのセリフはまさに『おちょやん』の泣き笑いのエピソードを表すセリフだ。千代だけでなく、この世で生きる誰もがつらい思いを抱えながら日々生きている。『おちょやん』を観ながら、千代のように強く生きられたら、と思ったのはきっと筆者だけではないだろう。視聴者のお母ちゃんであり続けた千代は春子だけでなく、我々の気持ちも半年間、前に推し進めてくれていた。「今日もええ天気や」ーーこんな晴れた日は、そう自分に言い聞かせることで、また1日を頑張れる気がする。(渡辺彰浩)

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