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「今ある人生、それがすべてですな」 『おちょやん』千代を待っていたみんなの“おかえり”

  • 2021.5.13
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『おちょやん』写真提供=NHK

連続テレビ小説『おちょやん』(NHK総合)第114話、ついに千代(杉咲花)にとって一日限り、そして私たちが見ることのできる最後の“喜劇”に向けて刻一刻と時間が進んでいく。

千代が鶴亀新喜劇の舞台を一番見せたい相手、それは春子(毎田暖乃)。稽古期間はわずか5日、しかも『お父さんはお人好し』の収録もある中で、夢を諦めている子供のために決意した千代の横顔を見てシズ(篠原涼子)は誇らしげだ。血は繋がっていなくともシズから母の“無償の愛”を受けた千代が、今度は自分が母として春子に愛を注ごうとしている。

千代が2年ぶりに道頓堀の舞台に立つ――。その吉報を受けて、周囲の反応も様々。夫婦役として千代と名コンビを組んでいる当郎(塚地武雅)はかつてのパートナーである一平(成田凌)に、脚本家として千代が輝く場を提供している長澤(生瀬勝久)は鶴亀新喜劇に、それぞれ千代をとられたようで嫉妬を隠せない。

れど、最後は子供役のキャスト全員で千代を「いってらっしゃい」と送り出す。一方、鶴亀新喜劇の稽古場では熊田(西川忠志)が目に涙を溜めて千代の帰りを待っていた。復帰公演『お家はんと直どん』のチラシには「お帰り竹井千代」の文字が。

これまで行き先を次々と追われ、その度に孤独を抱え傷ついてきた千代。あてどのない旅を送った結果、彼女が手に入れたものは温かい「いってらっしゃい」と「おかえり」が待つ“家”だった。千代が帰る場所はあちらこちらにある。

「もし、あのまま私ら一緒にいてたらどないな人生があったやろか」

『お家はんと直どん』の脚本に追加した千代の台詞。そんなこと考えても仕方がないと言う一平の台詞に千代が返したのは、「今ある人生、それがすべてですな」だった。

千代が奉公に出されることもなく、女優という夢を追わなかったら。千代と一平が出会わず、鶴亀家庭劇が生まれなかったら。一平が千代を裏切ることなく、あのまま2人一緒にいたら。その先に続く、“もしも”の世界は想像に過ぎない。目を向けるべきなのは、今、ここにある瞬間だけ。

千代が春子という宝物を抱えている。そんな2人を「おかえり」と迎え入れてくれる優しい人たちがいる。そして、久しぶりに舞台に立った千代を、かめさん(楠見薫)たち「岡安」の仲間や『お父さんはお人好し』のキャスト・スタッフたち、天国から千代の家族、福助(井上拓哉)、大山社長(中村鴈治郎)まで、たくさんの人が目を輝かせ見守っている。

何が起きるかわからない人生は、まさに“喜劇”だ。時折どこか寂しそうに笑う春子にそのおかしみを伝えるため、女優・竹井千代は道頓堀の舞台に舞い降りる。

明日は『お家はんと直どん』、そして『おちょやん』の“千秋楽”だ。(苫とり子)

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