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松居大悟監督「友だちになりたいと、自分が思えるキャスティングに」

  • 2021.5.13
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友人の結婚式で余興を披露するためにあつまった高校の帰宅部仲間たちが過去に思いをめぐらせながら、とある秘密と向き合っていく映画『くれなずめ』。当初は4月29日より全国公開されるはずだったが、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言発令を受けて公開延期に。

そして、5月10日に急遽発表され、5月12日に公開された。今回の松居大悟監督へのインタビューは、延期が発表された直後の27日におこなったものである。松居監督の言葉には、こういった状況だからこそ、作品への思い入れがより強まっていることを感じさせた。

取材・文/田辺ユウキ

左から、藤原季節、若葉竜也、成田凌、高良健吾、浜野謙太、目次立樹。(C)2020「くれなずめ」製作委員会

「人とお金を使って耐えうる題材ではないと感じていた」

──4月26日に公開延期が発表されましたが、そのとき松居監督はTwitterで自作の絵を添えて「くやしい!!!」とつぶやいていらっしゃいましたね。

僕は本来、こういう状況では冷静でいられるタイプなんです。映画は作品として必ず残っていくものだし、「また改めて」と気持ちを切り替えられるはずなんですけど、今回はちょっと無理でした。

──どの作品であっても思い入れはあるはず。ただ『くれなずめ』は特にその気持ちが強かったからですか?

自分の体験をもとにして、友だちに捧げるように作った映画だから思い入れもかなりあるんですけど、それ以上に、監督12作目で初めて「いけるかも」という感触があったんです。

取材時のライターさんたちの温度感や、映画サイトでの注目度の数字など、今までのどの作品よりも多かったですし。早く作品を届けたい気持ちがあったので、公開延期は本当に悔しくて。

──今まで以上に、作品を待ち望む人の多さを実感できていたわけですね。

そうですね。もともとは自分の劇団であるゴジゲンの舞台が原作で、とにかく内側に向けて作った話。大きく当たるように作っていない分、「これがうまくいけば、今後も自分らしく映画が作れる」という気持ちがあったんです。

先に公開された監督作『バイプレイヤーズ もしも100人の名脇役が映画を作ったら』は自分のなかで一番外に向いた作品だったし、真逆な2本を同時期に観てもらったらどういう反応になるのか楽しみにしていました。

──当初『くれなずめ』の映画化はまったく考えていなかったそうですね。

映画としてたくさんの人とお金を使って耐えうる題材ではないと感じていました。映画化の話があったときも一度、お断りしたんです。

それでもプロデューサーから「たくさんの人に観てもらうべき」とアプローチされて、「じゃあ、これをよそ行きのものにせず映画にしよう。なるべく個人的感情のまま作ろう」って。だから今までとは作り方が違うんです。全然、外に向いていません。

松居大悟監督とは大阪と東京でのリモートインタビューで実施

──序盤のカラオケのシーンを象徴としてある意味での内輪ノリにどんどん引き込まれていく。しかし一方で、物語の世界が少しずつ広がるギミックにもなっています。

そのあたりは演じてくれた6人が本当に素晴らしかったです。今回、「この人たちと友だちになりたい」と自分自身が思えるキャスティングをしました。この6人って根本的なことをあえて言わないんです。しゃべらずともそれを共有できる。

「(主人公の)吉尾ってそもそもどういう状況なのでしょうか?」とか、口に出すと大事なものが失わせそうなことはまったくしゃべらない。本当の友だちって超えてはいけないラインを分かっているから、一緒にいて楽じゃないですか。6人にはそういう空気感がありました。とは言っても、実際に僕は彼らとは友だちにならないですけど。

──「友だちになりたい」という願望止まりですか。

本当に「友だちになろうよ」となると、それはちょっと違うよなって。作品とプライベートの線は超えたくないんです。たとえば恋愛映画を作っていて、現場で恋に落ちるのは良いけど、撮影が終わって告白とかしてたら「え、そこを超えるんだ」みたいな感覚。妄想ですけど。

「不安をどこにぶつけて良いのか分からなくなっていた」

──主人公・吉尾を演じた成田凌さんは、松居監督とずっと一緒に仕事がしたくて松居作品を観続けていたそうですね。

成田凌はすごい俳優でした。僕自身、吉尾という男のことをつかみ切れていなかったんです。役の正解が分からなかった。でも成田凌が演じたらちゃんと魅力的になって、筋が通り、みんなが吉尾にまた会いたくなる雰囲気があらわれた。「吉尾ってこういうことを考えていたんだ」と、成田凌が演じる姿を見て初めて気づきました。

──あとワンシーンだけの出演ですけど、お笑いトリオ「四千頭身」の都築拓紀さんのことを、松居監督がとてもおもしろがって撮っているように見えました。

都築さんは顔がとても良いんですよね!

──前田敦子さんがゴミの分別について怒鳴り散らかす場面ですけど、都築さんの受け答え方が絶妙で、前田さんもそれに乗ってどんどんヒートアップしていく。松居監督はもしかして、都築さんをメインで撮りたいんじゃないかと思えるほどでした。

芸人さんが映画に出るときって、コントとは違う芝居をするのがおもしろくて。ちょっとだけ映画俳優になる瞬間があって、僕はそれがすごく好きです。撮影は1日だけだったけど、都築さんのことをもっと撮ってみたかったですね。

成田凌演じる吉尾和希。高校時代は清掃員で、左側が後輩役を演じる四千頭身の都築。(C)2020「くれなずめ」製作委員会

──4月25、26日には2夜連続で今泉力哉監督とライブ配信をしていらっしゃいましたね。26日は公開延期発表後とあって複雑な雰囲気がありましたが。松居監督にとって今泉監督はどういう存在ですか。

友人ではないですね。なんだろう。監督という同じ職業をしている、割と気をつかないで良いヤツ。まあ、彼は優しいからいろいろ話せるんですよね。

──好きな映画監督の話題にも広がって、松居さんは「横浜聡子監督のことが好き!」とか。

横浜さんは人となりを知ってますけど、好きな映画監督って、人となりよりも作品に漂うムードなんです。

逆に「この人は苦手だな」と思うことも当然ありますけど、人間性が嫌いなわけではなく、やっぱり作品なんですよね。僕自身、監督に対して人間性とかそこまで重要に思っていないというか。ほかの映画監督って友だちじゃないから、人柄を好きにも嫌いにもならないんです。

──今泉監督と酒を飲みながらずっとそんな話をしていましたが、あのインスタライブで公開延期のショックは少しやわらぎましたか。

いやいや、余計に猛反省でした・・・(苦笑)。今泉とふたりで飲んで話すというイメージだけでやり過ぎちゃって。人が見ているとか、忘れちゃっていて。

──途中で成田凌さんもコメント欄に降臨してきましたよね。

公開延期を発表した日、成田くんと連絡をしていて、彼もちょっと気持ちが落ち込んでいたような感じがあったんです。あのときインスタライブをのぞいてくれたのは、彼も同じようにどこか不安があったのかなって。なにより僕自身が不安をどこにぶつけて良いのか分からなくなっていたから。

──その気持ちが伝わってきました。

いろんな方が「公開日を待っています」と言ってくれるけど、でも「実際に待ってくれるかどうかは分からないよな」と考えちゃうんです。今はそう言うけど、改めて公開するときまで、「気持ちをつなぎとめられるだろうか」って。

『くれなずめ』は想いにまつわる物語なのに、どうして自分は待ってくれている人の想いを信じることができないんだろうと、情けない気持ちになります。作品のことをもっと信じられるようになりたいです。

──いや、松居監督が自分の作品をどれだけ大切に感じているか、非常によく伝わってきますよ。

2020年も監督作『#ハンド全力』がコロナの影響で舞台挨拶が一度もできず、すごく寂しい経験をしました。もう、自分の作品がそんなことになってほしくない。だからこそ、ご覧になった方はどんな感想でも良いでの書いて欲しい。そして少しでも作品が広がって欲しいんです。お願いします、みなさん。

『くれなずめ』

2021年5月12日(水)公開
監督:松居大悟
出演:成田 凌、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹/高良健吾
配給:東京テアトル

(C)2020「くれなずめ」製作委員会

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