受賞者らが反旗！ゴールデン・グローブが抱える問題とは？

ダイバーシティ不足の指摘を受け、ゴールデン・グローブの主催組織が、一連の改革を発表した。だが、トム・クルーズやスカーレット・ヨハンソンをはじめ、ハリウッドの一部からは不充分だ、との声が上がっている。

スカーレット・ヨハンソン、全米映画俳優組合賞にて。（ロサンゼルス、2020年1月19日） photo : Hahn Lionel / ABACA

ゴールデン・グローブは袋小路にはまっている？

各賞の投票と授賞式を行なうハリウッド外国人映画記者協会（HFPA）が、批判の的になっている。去る２月、ロサンゼルス・タイムズ紙が、収賄、利益相反、仲間内体質、ダイバーシティ不足、そして80人の会員に一人も黒人が加わっていないことなどを暴露する記事を発表して以来のことだ。

そこで5月6日、HFPAは一連の対策を発表した。その中には、近いうちに公正、ダイバーシティ＆インクルージョン担当責任者を命名し、新メンバーに門戸を開くという項目も含まれている。

スカーレット・ヨハンソンは、この決定は不充分だとして、5月8日の「ザ・ハリウッド・リポーター」で厳しい声明を発表した。

「映画のプロモーションを行う女優として、賞のシーズンには、記者会見や授賞式に出席しなければなりません。過去には、性差別的な質問や、HFPAのメンバーの一部によるセクシュアルハラスメントギリギリのコメントに立ち向かわなければなりませんでした。それがまさに、ここ数年、私がHFPAの記者会見への出席を拒否している理由なのです」

さらに彼女は、性的暴力と強姦による罪で昨年有罪判決を受けたハーヴェイ・ワインスタインとHFPAを結びつけてこう続けている。

「HFPAは、アカデミー認知の機運を高めるため、ハーヴェイ・ワインスタインのような人たちが正統化した組織であり、業界がそれに追随したのです。組織の中で根本的な改革が行われない限り、私たちはHFPAと距離を置き、私たち自身と業界全体の団結の重要性と強さに焦点を当てるべきだと考えています」

5月10日、今度はトム・クルーズが、ゴールデン・グローブに対して強い態度を示した、とアメリカのサイト「デッドライン」が伝えている。これまでに受賞した3つのトロフィ（『7月4日に生まれて』、『ザ・エージェント』の主演男優賞、『マグノリア』の助演男優賞）を返上したのだ。

さらに同じ日、例年授賞式の放映を続けてきたNBC局が、来年は放映を行わないと発表した。

問題だらけの組織

世界に向けてハリウッド映画を振興することを目的に1943年に創立されたHFPAは、海外メディアのジャーナリストたちで構成され、ゴールデン・グローブ賞は、こんにち、オスカーの前哨戦とみなされている。

前述した2月の暴露記事に続いて、多くの著名人が、2月21日に行われた第78回授賞式の際にこの組織を皮肉った。コメディアンのサシャ・バロン・コーエンや、プレゼンテーターを務めたティナ・フェイとエイミー・ポーラーも例外ではない。キャリア全体に対して賞を贈られたジェーン・フォンダも、「みんなのストーリーが見られ、聞かれるチャンスがあるように」と呼びかけている。

HFPAの対策が不充分だと考えるのは、スカーレット・ヨハンソンとトム・クルーズだけではない。5月7日には、ミニシリーズ「ある家族の肖像/アイ・ノウ・ディス・マッチ・イズ・トゥルー」で今年のゴールデン・グローブを受賞したばかりのマーク・ラファロも、ツイッターにこう投稿した。

「いまこそ過去の間違いを指摘し、態度を改める時だ。正直なところ、ゴールデン・グローブを受賞したばかりの僕だが、受賞したことに誇りも喜びも感じることができない」

ネットフリックスとアマゾンは、事態に新しい動きが出るまで、HFPAと仕事はしないと発表した。さらに態度を保留する企業は100ほどもある。

ワインスタイン事件の直後に誕生した、エンターテイメント業界における性的ハラスメントと差別と闘う組織Time’s Upも批判的だ。代表のティナ・チェンは次のように発表した。

「これらの措置は、HFPAの現在の構成員の大半がそのまま残るということ、そして、何年も前から存在している基本的な問題の中で、引き続き今後のゴールデン・グローブが選ばれていくことを意味しています」

「さらに驚くべきは、深い問題を抱えている賞のノミネートの過程について、全く触れられていないことです。賞と部門から差別的な基準がなくなる、独占的でプロ精神に欠けた記者会見の伝統が終わる、投票者はノミネートされた作品を観るという基本的な義務を果たす、これらを保証するエンゲージメントが欠けているのです」

一方、HFPAの代表は、声明の中で、スカーレット・ヨハンソンにこう答えている。

「我々の協会が行うべき変革について憂慮されていると理解しました。我々はこれらの点について、急遽、対策をとっていくつもりです」