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日本の知られざる“おいしい”魅力を発掘し続ける「ご当地クラフトコーラ」

  • 2021.5.12
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いま、空前の人気を誇る「クラフトコーラ」の黎明期よりクラフトコーラをつくり続けている「ともコーラ」。現在ではオリジナル商品のみならず、コンセプトメイクから商品開発までを一貫して請け負う「ご当地クラフトコーラ」も展開中だ。流行のクラフトコーラという商品を通して、日本の知られざる「おいしい魅力」を世に放つ異色のプロジェクト。現在取り扱い店も拡大中であり「一緒にものづくりしたい!」とのオファーも絶えない大注目のともコーラ調香師・古谷知華さんに、ご当地クラフトコーラやそこに込める想いをうかがった。

幼い時からもともとスパイスやハーブなどに興味があったという古谷さん。ひょんなきっかけから「和ハーブ」というジャンルがあることを知った。
一般的にスパイスといえばインドやスリランカなど南国産のイメージだが、実は日本の地方には原生のスパイスや薬草が多数存在するのだという。ただどうしても一般的には流通しないニッチなものが多いので、そのまま商品化したりPRしても伝わりづらい。そこでわかりやすいよう、コーラの原材料にしてみたのが始まりだ。
地域に眠る、知られざる食材を通して、その魅力を発信するのが、ともコーラの手がける「ご当地クラフトコーラ」プロジェクトだ。

誰もがわかる「コーラ」だからこそ際立つ個性

ともコーラが生まれたのは2018年。クラフトビールやクラフトジンなど、アルコール業界ではすでに、「クラフト」文化が根付き始めていた。少数生産でもこだわりの製法や独自の個性を表現する、インディペンデントなブランドが増えてきたのである。
大量生産・大量消費の時代から、その商品のストーリーごと楽しんでもらうという時代へ。そうした変化から生まれてきた概念が「クラフトコーラ」だ。
同じくクラフトコーラのメーカーであり、イベント出店や実店舗オープンで話題の「伊良コーラ」とはなんと3日違いの誕生だという。当時はお互い知り合いではなかったのでその偶然にびっくりしたのだそう。

コーラといえば、あの黒い液体であることと、大手コーラメーカーがつくる “あの味”というイメージが強く、そのどこか不健康な印象も含め、おそらく全国民がそのものを知っている。だが150年以上昔にアメリカで誕生した薬液シロップが起源であることはあまり知られていない。

「コーラ・ナッツ」が原料に入っていることと、炭酸飲料であることなどその定義は実にゆるいものだ。その「誰もが知っているようで、知らない」コーラというブラックボックスのような商材に懐の深さとポテンシャルを感じたという古谷さん。

ともコーラは、ハーブやスパイスの味を強く感じる商品だ。素材の味や魅力を活かして商品をつくるので、みんなが知っている“あの味”との差が個性として際立つのだ。「誰かの好奇心をくすぐるようなものをつくりたい」との想いが込められたともコーラは、たくさんの人の心を掴んだ。

知られざるおいしいものを発掘する、こだわり

ともコーラを運営しながら、広告業界の会社員でもある古谷さんは、クリエイターでありつつ他のクリエイターのものづくりにも関わっている。大量消費を前提としたものづくりの限界を感じ、経済合理性にかなわないいいものをつくりたいとの想いがあったのだという。

「どうしても、コンセプトとものづくりって両立が難しい。どちらかを妥協したり、やっていく中でコンセプトが削がれていったり。でも、ともコーラはそれを常にやり切ることにこだわっています。ブランドを広く伝えるとか、多く売るとかという観点より、ブランドとしてのメッセージを大切にしたい。妥協はしないからこそ、クリエイティブも含めて理解しあえる方たちと一緒につくっています」

「ご当地クラフトコーラ」のプロジェクトにおいて、ともコーラと協業するのは、地域のメーカーや農家さんが多いのだという。

2021年4月現在までにつくった「ご当地クラフトコーラ」は5種類。いわゆる誰もが想像する「コーラっぽさ」と、「素材の個性」のバランスで個性や味の特徴をつけている。プロジェクトごとに、パートナーとともに、配合やレシピを決めているのだという。

たとえば「AWAトクシマコーラ」は柚香をフィーチャーしている。

徳島で採れる希少な「柚香」は柚子と橙の交配種(という説がある)。

柚子といえば、欧米では人気のある食材だ。料理やデザートにとどまらず、コスメなどにも幅広く使われている。人気であるがゆえに「ちょっと変わった柚子」である柚香に惹かれるヨーロッパのシェフも多いのだという。パリの有名ホテルでもお菓子に利用されるほど可能性のある柑橘だ。だが日本人にはあまり知られていないだろう。その柚香に、伝統的で希少な製法でつくられる、阿波晩茶という発酵緑茶をあわせ使うことにより、その奥深さを表現。

伝統的な樽製法でつくる阿波晩茶Harumari Inc.

いずれも古谷さん自身が足を運び、その目で見て選び、その場所でしかつくり得ない地物でコーラをつくった。

岐阜でつくった「ぎふコーラ」は、薬草を多用している。

岐阜と滋賀の県境の薬草山「伊吹山」。オランダ文化・蘭学に強く影響を受けた織田信長がつくった薬草園といわれている。

このチームと一緒につくったクラフトコーラは、主にこの薬草園で採れる和ハーブを主役としている。

ドクダミ、ヨモギなどの有名な薬草から、カキオドシなどの珍しいものまで使用。その薬草の一つひとつについての説明やトリビアなど、そのバリエーションの話は聞いているだけで引きこまれる、魅力的なワールドだ。

このエリアでは薬草を使った文化も根強く残っており、その文化をまるごと伝えることにこだわった。

ものづくりに必要なのは、味だけじゃない

「たとえば原材料だけ送ってやりとりして、『これを商品化する』みたいなことは私たちはやっていないんです。現地を実際に見て、現地の文化に触れて。商品そのものだけでなく、コンセプトやラベルデザインなどに活かせることも多い。資料館とかそういった場所にも足を運びます。『他にも面白そうな食材ありませんか?』というやりとりを頻繁にします。お互いにもっともっと勉強する。そうすると、『こんな食材見つかりました!』とか現地の人でもまだまだ知らないものが出てくることがある。これって、やっぱり深掘りしないと出てこないと思うんです」
「『これはここにしかない』というストーリー性を一本に凝縮したい」。これがともコーラのご当地クラフトコーラならではのこだわりだ。

観光だけじゃ知り得ない、ものづくりの奥深さを通した地域の魅力

このご当地クラフトコーラには、プロダクトを通して、その地域の奥深い魅力を伝えたいという想いがある。

「それは食べた味そのものだけにとどまらず、食文化とか、歴史とか。季節によって旬が変わるということも魅力なので、そのおもしろさも発信したいんです。なので、むやみやたらにラインナップを増やすのではなく、ひとつひとつのプロジェクトの奥深さをもっと掘っていきたいと思っています」

妥協をしないともコーラの「深掘り欲」。これがあるから、地域の人たちですら気づけなかった、見知らぬ“おいしい”が発掘されるのだろう。これからの「地域の魅力」は、その妥協しない探究心があるからこそ発見できるものなのかもしれない。

ご当地クラフトコーラづくりを通して、日本各地に足を運ぶ古谷さん。
「県や地方が違うだけで本当に歴史や文化が全然違う。知らないことってまだまだたくさんある……というよりは、知らないことしかないくらいです(笑)。そこに行かないとわからないことや食べられないものも実は多いし、外に出てこない地域の情報ってかなりあるんですよね。それは観光でも気づかないものだと思います。掘れば掘るほど、魅力的なものが発掘される。みんな知っている定番品じゃない部分にフォーカスしていくことで、これからの日本の食文化がもっと面白くなるんじゃないかなと思う。たかがコーラなんですけれど、プロダクトを通して、日本の地域に眠る知られざる魅力をもっと伝えたいですね」

ともコーラ

ともコーラ ご当地コーラプロジェクト

撮影:yoshimi

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