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『不滅のあなたへ』OP・ED映像が視聴者に与える効果 “遥かな道のり”の反芻を促す

  • 2021.5.3
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『不滅のあなたへ』(c)大今良時・講談社/NHK‣NEP

大今良時の原作コミックをTVアニメ化した『不滅のあなたへ』が、NHK Eテレにて毎週月曜22時50分より放送中だ。

はじめは球体だったが、刺激を受けたものから情報を獲得し、やがては様々な生き物に変身する能力を得る、永遠を生きる存在“フシ”。本作はこのフシを主人公に、人々の永きに渡る営みや、彼らの生命を巡る壮大な物語が描かれるファンタジー大作だ。原作は15巻までが刊行済み。フシの旅路は途方もなく長い時間と空間に渡るものとなっており、特に13巻からはじまった「第2部」からは、それまでとはまったく別の時代が舞台となっている。

アニメ版では、TVアニメの主題歌を手掛けるのは初となる宇多田ヒカルの「PINK BLOOD」がオープニングテーマ、『ファイナルファンタジーXIII』などの音楽を手掛けた浜渦正志の「Mediator」がエンディングテーマとなっていることも話題だ。

「PINK BLOOD」は、フシが変化を続ける存在……というか、大切な人が増えていくことで、否応なしに変化を続けなければならない存在であることが表現されたような歌詞が、胸を打つ。

対して「Mediator」はインスト曲となっており、フシ自体というよりは、フシが旅していく時間や空間の途方のない長さ、雄大さを表現するようなサウンドが、アニメ本編終了後の余韻を心地よいものにしてくれる。

このオープニング、エンディングの映像を観てみると、物語序盤しか放送されていないアニメ版では、まだ登場していないキャラクターたちが次々に姿を表す。原作を読んでいない人にとっては、「このキャラクターたちがフシとどのように出会い、どんな関係を結ぶのだろう?」と期待が高まるし、原作を読んでいる人ならば「このキャラクターたちに早くまた会いたい」と“再会”が楽しみになる映像だろう。

また、どちらも最後は“物語のはじまり”を思わせるシーンで終わっている。「PINK BLOOD」はフシがはじめて出会った人間の少年が腰掛けていた椅子と、壁に描かれた彼の顔なじみだった者たちの似顔絵。「Mediator」では球体だったころのフシと、それを優しく掴み取る誰かの手。

これらの映像が毎週本編の前後に流れることで、我々視聴者は、フシの旅路が始まってからどれほど長い年月が経ったのか、そしてどれほど遠い場所までたどり着いたのかということに、毎回想いを馳せることになるだろう。そこにはフシがどれほどの経験を“獲得”してきたか、というものも含まれる。

このように、アニメ版のオープニング・エンディングの映像は、物語序盤では「これから起きることへの期待」に胸が膨らみ、そして回を重ねるごとに「これまで起きてきたことへの感慨」の重みが増していくという、物語が進むにつれて視聴者が抱く感情を変容させていく映像となっているのだ。

『不滅のあなたへ』は、定命の存在である我々では得られない“不死なる者”の視点を通して、「人間とは何か?」という問いを、客観的かつ広い視点から捉え直そうと試みる作品でもあるように思う。

そんな本作の“遥かな道のり”を反芻し続けることを、我々に促すふたつの映像は、ひとりひとりが「人間とは、我々とは何か?」、「限りある短い命をどう生きれば良いのか?」といった疑問への自分なりの答えを見出すための、ちょっとした助けになってくれるかもしれない。

本編の物語はもちろん、その進展と共にこれらの映像を繰り返し観ることで自分の胸に去来する感情に対しても、耳を傾けながら視聴を続けていきたい。

(小林白菜)

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