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『ドラゴン桜』は日曜劇場の勧善懲悪を受け継ぐ 道理にかなう桜木流の生徒への寄り添い方

  • 2021.5.3
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『ドラゴン桜』(c)TBS

16年ぶりの続編『ドラゴン桜』(TBS系)。東大合格というゴールは前作から変わらないが、初回から日曜劇場のエッセンスを注入し、大胆にも進化した作風を見せつけてきた。第2話ではいよいよ東大専科が始動。桜木(阿部寛)がZ世代の高校生を相手に熱弁を振るう。

前作との比較がネット界隈をにぎわせる中、最大の注目ポイントは桜木がやさぐれオーラを全身から放っていること。衣食住に事欠き、教え子の水野直美(長澤まさみ)にたかる桜木の零落ぶりは衝撃的だ。16年の時を経て帰ってきた桜木は、とにかく人生ハードモード。住む場所がないため教室にテントで寝泊まりし、不良のバイクを取り上げる。思わず現役と見間違えそうな暴走族上がりのスピリットで、手垢のついたイメージをぶち壊すのだ。

そんな強面な桜木が、暴走族を知らない高校生世代をどうやって指導するのか。第1話のタイトルが「時代に負けるな。今こそ、動け!」で、「甘ったれた」デジタルネイティブたちに喝を入れただけに興味は尽きないところ。だが、名刺代わりのインパクトは初回のみで、意外にも個々の生徒に対しては、言うべきことは言うけれど、決して押し付けない桜木流の寄り添い方を実践してみせた。

東大専科を志望する生徒は2人。桜木に海に突き落とされた天野晃一郎(加藤清史郎)は、優秀な弟にコンプレックスを抱いている。早瀬菜緒(南沙良)は、桜木のスピーチを「生まれて初めてめちゃくちゃ怒られた」と喜ぶ。“今どきの若者”な2人に、直美は大学入学共通テストの過去問を受けさせる。東大合格の第一条件は「己を知る」ことで、今の実力を把握するためだ。だが、2人は1日でリタイアしてしまう。

直美と対照的だったのが、岩崎楓(平手友梨奈)に対する桜木の指導だ。楓は将来を嘱望されるバドミントン部のエースで、強豪大学への推薦入学を希望していた。しかし、楓には人には言えない秘密があった。桜木に万引きの事実を知られて自暴自棄になった挙句、かばってきた右膝の半月板を故障してしまう。

「推薦でバドの有名大学入って、オリンピック目指して、そういう人生しか考えたことなかった」。選手生命の危機を前に弱気になる楓を、桜木は突き放す。「お前はこれまでも自分で選んできたんだろ。全部、自分で決めたことだ。自分の責任でな」。親が敷いたレールでも、それを歩んできたのは自分自身だと語る。実は楓の怪我には裏があり、悪事に鉄槌を下す日曜劇場の勧善懲悪はここでも受け継がれていた。

問題が起きた時に周囲や他人を責める「他責」ではなく、自身の原因として捉える「自責」はよく耳にする。しかし実際は、頭でわかっていてもなかなか気持ちが追い付かないものだ。動揺する楓に、桜木は自身の経験を語る。「人生『これ』と決めて突き進んだものが急に失われる。苦しすぎて暴走族で随分暴れた」。その時に桜木を救ったのが勉強だった。「がむしゃらにやってるうちに、これが近道だと気づいた。いつの間にか苦しさも消えた」。食い入るように見つめる楓に、桜木は「お前の道はお前が決めろ」と付け足すことを忘れない。

無意識に選んできた選択肢を、初めて自分自身の意思で決めた楓。その瞬間、これまでのことは全て過去になった。裏方としてサポートする楓は、自身を陥れたパートナーにも「恨んでない」と言い切る。自分に勝った楓の心は晴れやかで、チームの勝利を祝福できる。たとえ、その輪の中に自分がいなくても。

桜木は決して特別なことをしたわけではない。対等の立場で自らの経験を語り、最後の選択は本人の手に委ねた。暴走族だった過去を隠さず、高校生だからといって遠慮することもない。そうやって一定の距離を保ちながら、見事に楓を立ち直らせた。「オリンピック選手になるよりも、東大に入る方がはるかに簡単だ」。一見してやさぐれているように見える桜木の寄り添い方は、どこまでも道理にかなっている。

※高橋海人の「高」は「ハシゴダカ」が正式表記。
※鶴ヶ崎好昭の「崎」は「たつさき」が正式表記。

(石河コウヘイ)

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