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生瀬勝久、朝ドラ出演4作目『おちょやん』での円熟味 千代の再起を支えるキーパーソンに

  • 2021.5.3
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『おちょやん』写真提供=NHK

『おちょやん』(NHK総合)第21週目「竹井千代と申します」では、千代(杉咲花)を表舞台に返り咲かせる立役者として登場したのが漫才師・花車当郎(塚地武雅)と脚本家・長澤誠役の生瀬勝久だ。

ラジオドラマ「お父さんはお人好し」で、花車の妻役として人気女優の箕輪悦子(天海祐希)を起用するつもりだったが、花車からの他薦を受けて千代のルーツがある道頓堀に聞き込みに行く。多くは語らず、余計なことは一切言わない長澤ながら、作品に傾ける情熱には並々ならぬものがあり、その分シビアな部分もありながらも、きちんと他人の意見にも耳を傾ける公平さを持ち合わせた誠実な人柄が印象的な役どころ。

ラジオドラマ出演のオファーのために千代に直々に会いに行き、改めて問いかける「お芝居はもう、辛い思い出でしかあらへんのですか」の最後の一押しには、お芝居に関わる者同士にしかわからない、他では味わい難い高揚感や、皆で1つの作品を作り上げていく困難さと共に楽しさ、観客のリアクションという至上の喜びなどを一気に千代に思い起こさせたのではないだろうか。花車のあっけらかんとした、以前会った時と何ら変わらない“腫れ物に触る感”が皆無な対応に千代の警戒心も解けたところに、長澤の核心をつく投げかけがあって千代は遂にラジオドラマへの出演を引き受けることにする。

生瀬といえば、朝ドラ出演は『純ちゃんの応援歌』『まんてん』『べっぴんさん』に続き本作が4作目(そもそも1作目である『純ちゃんの応援歌』に出演することになり、それまで使っていた芸名の槍魔栗三助(やりまくりさんすけ)を本名に変更したそうだ)。

言わずと知れた名バイプレイヤーだが、これまでも『トリック』(テレビ朝日系)で演じた金と権力に弱く、頭髪を異様に気にする警部補の矢部謙三役や、『ごくせん』(日本テレビ系)で仲間由紀恵演じる熱血高校教師ヤンクミといがみ合う猿渡教頭役を好演。ここで見せた「顔芸」のやり合いは、大いに視聴者の笑いを誘った(『半沢直樹』(TBS系)でキャスト陣の“顔芸合戦”が話題をさらったが、元祖顔芸はもしかすると『ごくせん』での生瀬なのではないだろうか)。

反体制的な主人公と対立するなんだか憎たらしくも憎みきれない、権力に従順で情けない、けれどもどこか隠しきれない人情味も持ち合わせたNo.2役や中間管理職的ポジションを演じることが多い。そこでのコミカル度合いも生瀬の手にかかれば自由自在だ。『MIU404』(TBS系)で演じた刑事部長・我孫子役でも、第4機捜隊長・桔梗(麻生久美子)と敵対する立ち位置だったが、おふざけ度は前述の2作品よりは抑え目で、もう少し“堅物感”が強調されていた。

かと思いきや、先期ドラマ『知ってるワイフ』(フジテレビ系)では、主人公のタイムスリップのきっかけになったキーパーソンで謎の男・小池役を演じた。ドロップアウト臭が凄まじく、何かしら過去に秘密を抱えているのは明らかで、意味深な言動が気になる、最後まで物語の鍵を握る人物を“胸をざわつかせる何か”と“違和感”はそのままに、しかしいつしか視聴者にとって“お決まりの風景”と化して見せてくれた。

本作での生瀬はこのどちらでもなく、どっちかと言えば寡黙、絶対に出過ぎた真似をしないキャラクターだ。偶然、花車と千代の掛け合いを目の当たりにした際に、千代宅の前で佇んでいるだけの立ち姿だけで彼自身の中に起きた変化や決心、閃きを語らせていたのはお見事だった。

第22週「うちの大切な家族だす」では遂に千代が出演するラジオドラマの放送が開始となる。千代の第2の女優人生のきっかけをくれた2人が出揃ったところで、ここから彼女のどんな快進撃が待ち受けているのか楽しみだ。

■佳香(かこ)

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