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切ない思いが名作バレエに呼び起こされる。新国立劇場が送る『コッペリア』

  • 2021.5.2
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ゴールデンウィークの楽しみがまたひとつ増えた。新国立劇場バレエ団が名作『コッペリア』の公演を無料ライブ配信することになったのだ。名振付家のローラン・プティ氏が画期的な演出と振付で創作した同作は、コミカルな動きやバラエティ豊かな民族舞踊が特徴的な作品だが、演出家によって結末が異なるのも見どころのひとつ。配信のカメラを通じて見ることによって、ダンサーひとりひとりの表情や、先端まで意識の届いた美しさを捉えることができるのも嬉しい点。日本有数のバレエ・カンパニーである新国立劇場バレエ団が送る『コッペリア』に注目だ。

新国立劇場では昨年来、新型コロナウイルスの影響で中止となった公演を、映像配信を通じて多くの人に届けてきた。自宅でもバレエの魅力や芸術性を存分に感じることができ、配信後には大きな反響も呼んだ。今回は5月2日(日)、4日(火)、5日(水)、8日(土)の全4公演が、すべて異なる主要キャストで上演される。それぞれの違いに着目して観劇するのも面白そうだ。

原典版とは異なるプティ版『コッペリア』の世界

プティ版『コッペリア』は1975年にマルセイユ・バレエで誕生した。それまでの『コッペリア』が19世紀の時代精神を体現するバレエだとすると、本作は現代に生きる人々が主人公で、時代を超越した人生と愛がテーマとしてはっきりと浮かび上がる。プティ氏独特のユーモアやフランス流の洒落た仕掛けの妙味や、ラストに待ち受ける奥深いメッセージが心に残る作品となっている。

見どころは何と言っても主役のスワニルダとフランツの繰り広げるおしゃれな恋の駆け引きと、プティ流のコケティッシュな振付、洒落っ気が効いた美術・衣裳による独特の世界観だ。そして、原典版と異なり老人形師のコッペリウスがスワニルダに恋しているという点が重要な設定のひとつ。彼を通して、人の愛とは何かといった普遍的な問いも投げかけている。単なる喜劇にとどまらないのが、プティ版『コッペリア』の特徴だろう。

観劇する者のあらゆる感情を呼び起こす

主役のスワニルダはフランツに夢中だが、フランツはコッペリウスの家のバルコニーに座っているクールな美少女コッペリアに心惹かれている。しかし、コッペリアが実はコッペリウスの作り出した自動人形であることをスワニルダもフランツも気づいていない。一方、コッペリウスは密かにスワニルダに想いを寄せていて……。

恋する想い、もどかしさ、嫉妬心、そして喪失感。舞台で交錯するあらゆる感情は、誰もが一度は経験したものであるだろう。『コッペリア』を観ていると、自分の心の奥に眠っていたそんな思い出の数々が呼び起こされる。ラストの忘れられない印象的な幕切れと相まって、観劇後はしばらく幻想的な余韻に包まれるに違いない。

ゴールデンウィークは新国立劇場バレエ団が送る『コッペリア』を観劇して、日常に埋もれていたファンタスティックな感情を呼び覚まそう。人の愛とは一体何なのか。コッペリウスがコッペリアを作り出した心情に、思わず共感するかもしれない。

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