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菅田将暉×神木隆之介×仲野太賀『コントが始まる』2話ラスト5分に震える。1話まるごと前フリ?何この贅沢なドラマ

  • 2021.5.1
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『コントが始まる』(日本テレビ 毎週土曜夜10時〜)第2回は、放映直後からSNSは「凄い」「泣いたー!」など感動のことばで湧いた。解散を決めたお笑いトリオ「マクベス」(菅田将暉、神木隆之介、仲野太賀)の結成秘話が明かされ、それは3人の関係を大きく揺さぶっていく。作中に登場する『ぷよぷよ』の作者であり、ドラマもお笑いも大好きなゲーム作家・米光一成が、1話からの見事な前フリとその回収を考察する。

最高のラストに伏線がぎゅっと回収されていく

泣いたー。第2話、ラスト。
もうエンドクレジットが出て「終わったー第2話も良かったー」と思ったあとの、短いコントの場面にぐっときて、もう耐えられずまた泣いた。 しかも、改めて観てみると、この最高のラストにすべての伏線がぎゅっと回収されていくように構成されているのだ。凄い。

第2話はコント「屋上」から始まる。
文化祭では春斗(菅田将暉)と潤平(仲野太賀)が2人でやっていたコント。今回は、瞬太(神木隆之介)もいる3人バージョンだ。
春斗と潤平が夫婦役。正面の屋上から飛び降りようとする若者を瞬太。

「引っ越してきたばかりなんだ。ローンもあと35年残っている。引っ越し初日に君が飛び降りる姿を見せられる気持ちを考えてくれ」
コントグループ「マクベス」の「屋上」を見ているのは、マネージャーの楠木。 「10年やって人気ないヤツに可能性なんてあります?」と反論する春斗に楠木が言う。
「いま売れてるやつらは例外なくもう限界だってなったところからもうひとふんばりしてきてるんだよ。だから、ここが我慢のしどころなんだよ」

マネージャーの楠木を演じるのが、ブレイクまで10年以上かかった中村倫也。完全に当て書きとしか思えないセリフにぐっとくる。(ちなみに2018.10.15「菅田将暉のオールナイトニッポン」にゲスト出演した中村倫也は、菅田将暉を「理論派なのに野性味で勝負したがってるところがあるのがかわいい」と絶賛している)

第1話が前フリとして機能している

「春斗にひとつだけ秘密にしていることがある」
第2話のナレーションは潤平。第1話で、春斗視点で描かれた場面が再び出てきて、潤平視点で語られる。第1話では知りえなかった意外な事実が明かさていく。第1話が前フリとして機能しているのだ(贅沢な前フリ)。
文化祭で観客が少なすぎて春斗は意気消沈していたが、潤平はそうではなかった。観せたいと思っていた奈津美(芳根京子)がいたからだ。
「俺にとってコントは、彼氏の小林に対抗するための手段でしかなかった。奈津美にできるせいいっぱいの求愛行動が誰よりも笑わせることだった」
そして、ラーメンを食べ終わり、春斗がコントをやろうと潤平を誘う場面。

第1話では、
瞬太「春斗なら絶対いけるよ」
春斗「おまえ観てないくせに言うなよ」
瞬太「観てないけど何となくわかる」

と会話しているふたりの顔を映していたカメラは、潤平の手元、奈津美からの携帯のメール「コント最高に面白かった! 潤平が初めてカッコよく見えました」を映し出す。
潤平は、春斗とコントを始めることを決意する。
第2話、後半のナレーションを担当するのは瞬太(ちなみに、第1話は、前半を有村架純演じる中浜里穂子ナレーション、後半が春斗ナレーション、最後のシーンはふたり声をそろえてナレーションというカッコいい構成だった)。
「人生で一度だけほんとに死んでもいいかなと思ったことがある」

瞬太は、学校の屋上に佇んでいる。
偶然そこにやってきた春斗は、潤平が明日(奈津美に)告白するから、成功する可能性が限りなくゼロに近いその可能性をこれ以上下げることになるので自殺はやめてほしいと奇妙な理屈を語る。瞬太は思いとどまる。
そして、潤平の告白場面。春斗と瞬太が跳び箱に隠れてのぞき見している。体育館倉庫で、告白前にアキレス腱を伸ばす潤平。これが、ラストのコント「屋上」でアドリブを入れようと決めてアキレス腱を伸ばす潤平への前フリになっている。

おまえの選択は間違ってないぞ

アドリブに関しても前フリが効いている。

第1話、瞬太が「マクベス」に入る時に、潤平は「俺たち作り込まれたコントやってんから。アドリブなんか入れようならすぐ破門だからな」と言う。
第2話、橋の上で瞬太が潤平について「俺がちょっとでもアドリブたそうとしたら怒るんだって」と言う。
潤平が今までアドリブを入れることをタブーにしていたという前フリがあるからこそ、ぐっとくるのだ。

潤平がアドリブで言ったのは、シンプルでまっすぐな言葉だ。その言葉が響くのも、いくつもの前フリがあるからだ。まず、中盤の潤平と奈津美がブランコで話しているシーン。 潤平が言う。
「(奈津美の元カレの)小林が社長になって有名になってるの見るたんびになんか申し訳なくてさ。おれいつまで芸人なんかやってんだろって」
奈津美がまっすぐ答える。
「まったく後悔してないから。順平、選んでよかったって思ってるよ。……こんなことまで言わせんな」
ここで、すでに「過去の選択を後悔していない」という意味のセリフがでてきているのだ。

「マクベス」オタクの里穂子が春斗と瞬太に教えた潤平のブログにも、「過去の選択」は出てきている。
“高校の帰りにHとSとよく来たポンペイ。
高校3年の文化祭の後にHとコンビを結成した思い出の店。
昔の俺に一言。
おまえの選択は間違ってないぞ。”

解散を決断した3人の苦しみ

いや、こういった直接的な言葉による前フリだけではない。第1話、第2話の内容そのものが、幾重にも、前フリとして機能しているのだ。
第2話、焼き肉屋の大将に「おまえには瞬太や潤平にをお預かりして一生を共にしていこうという気持ちはなかったのか」と言われ、春斗は激怒する。

もちろんその気持ちはあった。あったからこそ、第1話で、春斗は「俺が誘ってなきゃもっと順風満帆の人生だったはずなの。俺が狂わしちゃったんだよ」と過去の選択を後悔し涙を流した。
それに対して、里穂子は「3人が過ごしているあの時間は後悔するような時間には見えませんでした。むしろこっちが嫉妬するぐらい輝いて見えました」と言うのだ。後悔しなくていい、と。
第2話の潤平視点で判明したもうひとつの事実。潤平が文化祭でコントに誘ったのは、春斗が一番ではなかったということ。その前に2人誘って断られていたのだ。そのことが春斗にバレて喧嘩になる。

潤平「じゃあマクベスやったこと後悔してんのか?」
春斗「当然だろ。知ってたら引き受けてなかったし、お前に間違ってもコントやろうなんて言わねぇよ」

しかも、潤平は、売り言葉で買い言葉で、
「おめぇと組むんじゃなかったわ」
そう言って、ビール缶をキッチンにぶち投げて、出ていく。
喧嘩して、お互いが、あの時の選択を後悔しているかのように言ってしまう。そして、そう言ってしまったことをお互い後悔する。ずっと揺らいでいるのだ。
選択したことを後悔せずにすむように俺たちはやれているのか。
解散を決断した3人が、苦しみもがく姿が描かれている。
だからこそ、シンプルでまっすぐなラストのアドリブの言葉で、胸が熱くなるのだ(しかも、潤平の言葉のあとに、瞬太のさらにまっすぐなアドリブ。心動かされる波状攻撃)。

第3話は、コント「奇跡の水」。楽しみだ。

『コントが始まる』公式サイト(日本テレビ)

脚本: 金子茂樹
演出: 猪股隆一、金井紘
出演: 菅田将暉、神木隆之介、仲野太賀、有村架純、古川琴音、松田ゆう姫 他

主題歌: あいみょん「愛を知るまでは」

『コントが始まる』1イメージイラスト/オカヤイヅミ

『コントが始まる』2イメージイラスト/オカヤイヅミ

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