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『鬼滅の刃』全米席巻! 外国語映画オープニング歴代1位の本当の意義

  • 2021.4.29
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『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

ご存知のように、新型コロナウイルスの感染拡大に関して1年以上ほとんど無為無策、ワクチンの接種に関しても諸外国に比べて大きな遅れをとっている日本政府は4月23日(金)、映画配給や劇場運営の現場をまったく考慮していないたった2日後となる4月25日(日)から東京、大阪、京都、兵庫の4都府県に昨年3月から数えて3度目、3ヶ月ぶりとなる緊急事態宣言を発出。それを受けて、該当地域の大手シネコンチェーンを中心とする約100サイトの劇場が当面の間の休館に入った。つまり、先週末の成績は、緊急事態宣言発出直前の土曜日と、発出直後の日曜日の2日間の成績ということになる。

前週、2019年4月に公開された前作『名探偵コナン 紺青の拳』との興収比117.5%というオープニング成績でスタートをきった『名探偵コナン 緋色の弾丸』は、土日2日間で動員54万9000人、興収7億7400万円で2週連続1位に。前作の2週目の興収は8億8600万円だったので、あくまでも単純計算をすると本来ならば10億4000万ほどの2週目週末興収を見込むことが可能だったわけだが、その数字を基準にすると約25%減。もっとも、先週土曜日に関しては駆け込み需要もあった(政府の方針からすると本末転倒としか言いようないが)と見られるので、この結果が今後の成績の指針にはなりえない。今週以降はさらに大幅ダウンを余儀なくされるだろう。

『名探偵コナン 緋色の弾丸』以上に大きなダメージを受けたのは、昨年からの公開延期を経て、ようやく4月23日(金)に公開された『るろうに剣心 最終章 The Final』だ。土日2日間の動員は36万2000人、興収は5億2800万円。2014年9月に公開された前作『るろうに剣心 伝説の最期編』のオープニング週末2日間の興収は9億1947万9200円だったので、興収比約57%という数字。結果的には、何のために昨年7月から10ヶ月近くも公開を延期したのかわからないことになってしまった。さらに、6月4日に公開を控えている次作『るろうに剣心 最終章 The Beginning』の興行への悪影響も必至の情勢だ。

気が滅入る話ばかりなので、明るい話題も。4月23日、ようやく国内の映画興行が通常に戻ったばかりのアメリカで公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(『Demon Slayer -Kimetsu no Yaiba- The Movie: Mugen Train』)は、オープニング3日間で英語吹き替え版と字幕版を合わせて興行収入約2100万ドル(約22億円)を記録。週末の全米興行ランキングでは僅差で『モータルコンバット』に次いで2位に初登場となったが、『モータルコンバット』が全米3070館でのスタートなのに対して、『鬼滅の刃』は1600館(それでも十分に多くて驚かされるが)ということをふまえると、期待されていた以上のポテンシャルを発揮したことになる。なにしろ、2100万ドルというオープニング成績は、実写作品も含め、アメリカで公開された外国語映画のオープニング興行成績の歴代1位なのだ。

『鬼滅の刃』の北米興行で注目すべきは、共同配給としてアニプレックスの子会社、アニプレックス・アメリカが入っていること。つまり、これまでの多くの日本映画のように海外では配給権を売って、そこでどんなにヒットしたとしても収益のほとんどは現地の配給元に入る、という構造を変革した上で、歴史的な成功を収めたわけだ。ちなみに、アメリカで『鬼滅の刃』はR指定(17歳未満は保護者同伴)を受けている。

先週の全米興収ランキングを改めて見渡すと、1位の『モータルコンバット』と3位の『ゴジラvsコング』はストリーミングサービスのHBO Maxで同時配信されているワーナー配給作品。そして2位の『鬼滅の刃』がアニプレックス・アメリカとファニメーション・エンターテインメントの共同配給作品。パンデミックによる主要都市の約1年間に及ぶ劇場閉鎖を経て、アメリカも映画興行のあり方そのものが大きく変化していることがわかる。まあ、アメリカと比べて感染者数も死者も桁違いに少なかったはずの日本は、変化を云々する以前に、主要都市ではまた劇場閉鎖期間へと戻ってしまったわけだが……。(宇野維正)

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