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母は偉大なり! アカデミー賞2021の記憶に残る“ベスト・マザー・モーメント”。

  • 2021.4.29
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Yuh-Jung Youn, winner of Best Actress in a Supporting Role for "Minari," poses in the press room at the Oscars on Sunday, April 25, 2021, at Union Station in Los Angeles.

『ミナリ』で助演女優賞に輝いたユン・ヨジョンの心温まる受賞スピーチは、今回のアカデミー賞において最も印象的だったと言えよう。韓国映画界の至宝とされる73歳の大女優は、プレゼンターのブラッド・ピットから名前を呼ばれると驚いた様子で壇上に上がり、オスカー像を受け取った。そして監督やスタッフたちに感謝を述べ、撮影中のエピソードをジョーク混じりに話して笑いを誘い、最後には2人の息子たちにこう呼びかけたのだ。「私を今まで働かせてくれた息子たちに感謝したいです。このオスカー像は、ママが頑張って働いた証よ」

Emerald Fennell, winner of Best Original Screenplay for "Promising Young Woman," poses in the press room during the 93rd Annual Academy Awards at Union Station on April 25, 2021 in Los Angeles, California.

そんな誇らしい母の姿を見せたのは、ユン・ヨジョンだけではない。『プロミシング・ヤング・ウーマン』で脚本賞に輝いたエメラルド・フェンネルは現在、第2子を妊娠中だ。女性として13年ぶりに同賞を獲得した彼女は、本作品で監督も務めている。第1子を妊娠中に撮影にのぞみ、その時のことを「息子が撮影終了の数週間後まで誕生を待ってくれて、本当に助かった」と振り返った。

ABC's Coverage Of The 93rd Annual Academy Awards - Press Room

一方、『Judas and the Black Messiah(原題)』で助演男優賞を受賞したダニエル・カルーヤは、母親との強い絆をスピーチで語った。「母に感謝を伝えたい。今まで支えてくれて、本当にありがとう。あなたは僕に全てを与えてくれた。あなたが育ててくれたからこそ、僕は堂々と生きられる」

彼がこう述べている瞬間、ロンドンで息子の受賞に歓喜していたダニエル・カルーヤの母が涙する姿をカメラが捉え、皆に感動をもたらした。だがその後、悲願のオスカーを受賞した興奮からか、彼はこのようにスピーチを続けてしまう。「この瞬間を祝福しないと! 生きていることをお祝いしよう! 僕たちが息をしていること、歩いていること。全てが素晴らしい。母と父がセックスをして(僕が生まれたんだ)── それって凄いことじゃないか! そして僕はここにいる。生きていることが本当に嬉しい。だから僕は今夜、あの瞬間(自身が作られたこと)を盛大に祝おうと思う」。── 誇らしげだった母親の表情を曇らせる結果となってしまった。

過酷な環境の映画業界で子を持つ女性が働くことは、かなりハードだ。それは見過ごされがちだが、今回の受賞者のスピーチから、その大切さに改めて焦点が当てられた。もちろん、彼らがオスカーを受賞したことで、業界内で働く母たちの立場が一夜にして塗り替えられるわけではない。しかし、ユン・ヨジョンとエメラルド・フェンネルが母としての姿を犠牲にすることなく、実力でオスカー像を勝ち取ったことは、大いに喜ばしい。さらに、ダニエル・カルーヤが自らのキャリアの決定的な瞬間を母に捧げ、受賞スピーチの主役を飾ったことも、これからのハリウッドの新しい方向性を示す結果になったかもしれない。

Photos: Getty Images Text: Emma Spector

From VOGUE.COM

Photo_ ABC via Getty Images
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