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「寄付も投資もしない」日本人のお金の使い方が残念すぎる理由

  • 2021.4.28
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ある調査によると、寄付をしたことがある日本人の割合は23%。世界的に見て低い数値です。なぜ日本人は寄付も投資もしないのでしょうか。そして経済コラムニストの大江英樹さんが指摘する寄付の思いがけない効果とは――。

硬貨の入った瓶を持つ親子の手
※写真はイメージです
お金を増やすことと同じくらい大事な「お金の使い方」

言うまでもないことですが、人生の目的はお金持ちになることではなく、しあわせな人生をおくることです。もちろんそのためにはお金がある程度必要ですが、お金儲け自体はあくまでも手段であって、人生の目的ではありません。楽しくしあわせな人生を送ることが人生の目的です。したがってお金をどうやって増やすか、ということと同じぐらい大事なのは“お金をどうやって使うか”ということです。「そんなことを考えたり心配したりするのは結構な身分の人でしょ。私たちはとてもそこまでは行かないわ」と思う人も居るかもしれませんが、そう考える人は失礼ながら、恐らくお金の本質とか意味がまだあまりよくわかっていないのではないかという気がします。

お金を増やすたったひとつの方法

お金というのは現金で手元に置いておいても決して増えることはありません。1万円はいつまで経っても1万円のままです。ではどうすればお金が増えるのか? 今持っているお金を増やすたったひとつの方法は、そのお金を世の中に回すことです。つまりお金を使うことによって世の中にお金が回り、経済が活発になることで世の中全体も豊かになり、給料も増えることになります。経済学で言う「乗数効果」というのがこれです。

もちろん、消費だけがお金を回すことではありません。預金や投資も世の中にお金を回すことになります。ただ、残念ながら今の時代は預金ではそれほどお金は増えませんので、むしろ投資を考えた方が良いでしょう。投資というのは「今すぐに必要としないお金を持っている人」が、「今すぐにお金を必要としている人にお金を回してあげる」という行為なのです。例えば企業が設備投資をしたいと思った場合、方法は大きくわけて2つあります。1つは銀行から借りる方法、そしてもう一つは増資や社債発行によって資金調達をする方法です。われわれが銀行に預金したお金がめぐり巡って企業に貸し出されるわけですから、銀行預金も間接的に世の中にお金を回していることになります。ところが株式や社債を購入するのはもっと直接的に企業にお金を回してあげることであり、これが投資なのです。

したがって、投資とは「自分が儲けるためにやるもの」ではありますが、同時に「人の役に立つためにやるもの」でもあるのです。預金に比べると“お金が必要な人を助けてあげる感”がより強いと考えても良いでしょうね。

寄付と投資の共通点

意外に思うかもしれませんが、寄付も実は投資と同じ意味を持っています。寄付も投資と同様、「今すぐに必要としないお金を持っている人」が、「今すぐにお金を必要としている人にお金を回してあげる」行為であるという点では同じです。投資の場合は、回してもらったお金を使って事業をし、利益が出たらその一部をお礼として投資してくれた人に渡します。これが「配当」や「利息」と呼ばれるものですね。

寄付の場合は例えば災害に遭った被災者が暮らしに困っているのであれば、回してもらったお金で今の生活をよりよくすることができます。違いは投資では利益が出た場合に配当が得られる(もちろん無い場合だってあります)のに対し、寄付は寄付した相手からは“感謝”の気持ちは返ってきますが、お金が戻ってくることはありません。

寄付の思いがけない効果

ところが寄付には思いがけない効果があるのです。

私は寄付の大きなメリットは、「国に税金の使い方を指定すること」だと思っています。例えば震災や台風で被害を受けた被災地の人に寄付しようと思い、その地域で被災者支援の活動をおこなっている認定NPO法人に義援金として5万円を寄付したとします。この場合、所得税と住民税を合わせると2万4000円ほど税金が戻ってきます(※住民税は自治体によって異なります)。つまり実質的に自分が負担したのは2万6000円です。ところが義援金は間違いなく5万円分が渡っているのです。ということはつまり戻ってきた2万4000円分というのは税金から被災者に支払われているということになります。

スマートフォンで寄付
※写真はイメージです

社会保険の場合は目的限定ですから保険料が何に使われるのかは一目瞭然です。ところが税金の場合、自分の払った税金が何に使われているのかがよくわかりません。ところが寄付することで自分が実質的に負担した2万6000円に加えて、自分が払った税金の中から2万4000円が支払われているわけです。これって税金の使い道を指定していることになりませんか? すなわち税金の使途が見える化されることになるわけです。これはとても良いことではないかと思うのです。

「投資は利己的で、寄付は利他的」ではない

それに寄付したことで「人の役に立つことをした」「困っている人を自分が助けてあげた」と感じますから、とてもしあわせな気分になれます。一見すると投資は自分が儲けるためにやるのだから「利己的」なことで、寄付は人にためにお金を出すのだから「利他的」な行動だと思いがちですが、決してそんなことはありません。

投資にも世の中で必要とされるところへお金を回すという意味では世の役に立つ立派な利他的行為であり、逆に寄付することは自分の心の満足を得るためでもあるので、これは利己的な行為とも言えます。もちろんこうした寄付はある程度生活に余裕がなければできないことかもしれません。でも誰もが自分のできる範囲内で困っている人たちに対してお金を回してあげるというのはとてもすてきな行為だと思います。

寄付をしたことがある人の割合、日本は64位

ところが、残念ながら、日本人は投資も寄付もあまりやりません。欧米に比べると投資をしないということは割と良く知られていますが、寄付もしないのです。英国のチャリティ団体Charities Aid Foundation(CAF)が公表している世界寄付指数(World Giving Index)というのがありますが、2019年に発表された数字を見ると「寄付をしたことがある人」の割合では日本は世界で64位、23%の人しか寄付をしていません。日本よりもずっと貧しい国であるスリランカでも50%、インドネシアでは69%の人が寄付をしています。そして寄付する人の割合が世界一なのはなんと今大変な騒動になっているミャンマーで81%の人が寄付をしているというのです。

つまり日本人は投資もやらないし、寄付もやらない、(その割にはビットコインやパチンコのような博打は大好きですが)ということで、結局お金そのものが大好きなんですね。お金を大事に手元に置いておきたがる。でもそれってあまりかっこいいことではないと私は思います。

大事なお金に旅をさせるという発想

第一、お金を手元に置いていたのではいつまで経っても増えることはありません。ことわざで「かわいい子には旅をさせろ」と言いますが、大事なお金だからこそ、世の中に回して旅をさせることで成長して自分の元に戻ってきてくれるのです。また同じくことわざで「情けは人のためならず」と言います。これは誰かに何か良いことをしてあげるのはその人のためにしてあげたように見えても、それは結果的にめぐり巡って自分に良いことがもたらされるだろうということを言います。

私も先日刊行した自著『いつからでも始められる 一生お金で困らない人生の過ごしかた』はその印税を全て、コロナ禍でとてもつらい思いをしているシングルマザーを支援する団体に寄付しました。そのお金はすぐに自分の手元に戻ってくることはないけど、支援した子どもたちから感謝の言葉や写真が送られてくるのを見ると、本当にしあわせな気持ちになります。誰もが自分のできる範囲内で「寄付」というお金の使い方をやってみてはいかがでしょうか。きっとすてきな気持ちになれると思います。

大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト
大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。

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