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ダイエットの「我慢」「辛い食事制限」という考え方は今すぐ捨てる【森拓郎】

  • 2021.4.27
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運動指導者・森拓郎さんによる本『森拓郎の読むだけでやせる言葉』は、さまざまなダイエット方法が溢れる世の中において、本質的な知識や情報を記し、一生続く食習慣を提案してくれる一冊。今回は著者である森さんへインタビュー。前編に引き続き、後編では具体的な食事の取り方や、ダイエットが引き起こすストレスへの対策などを伺いました。

5月に刊行された『森拓郎の読むだけでやせる言葉』には、ダイエットの本質ともいえる内容が記され、私たちの生活の中にある“食事”が、ダイエットをする上でいかに大切なのか、具体的にどうすれば美しく健康的な体へとたどり着けるのかを、綴っています。

先日公開したインタビュー「健康的なカラダを目指すなら、安易なダイエット情報に惑わさてはいけない【森拓郎】」に続き、後編ではダイエットにおける食事の摂り方、そして、無理な減量によって多くの女性が抱えているであろうストレスへの対策方法など、著者・森拓郎(もり・たくろう)さんに詳しく伺いました。

■DRESS読者にダイエットに関するアンケートを実施

前編にも引き続き、DRESS読者やライター陣の方々の協力を得て調査したダイエットに関するアンケート結果をもとにインタビューを進めていきます。

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■ダイエット指導をするのが嫌になって本を出版した

――森さんがダイエットへの関心を持つようになったきっかけってなんだったんですか?

僕はダイエットの指導をできればしたくないんですよ。もともと苦手ですし、運動指導がしたくて業界に入ってきたので。

今でこそ、「痩せるためには、食事を変えないといけないんだな」という考えがジワジワと浸透してきましたけど、以前なんて「食事が大切なんですよ」なんて言っても、まともに聞いてもらえませんでした。

そもそも、お客さんがフィットネスクラブに来るのは、“食べ物のことを気にせず運動でなんとかしたいから”なんですよ。運動したら痩せるだろって期待している人に、「やっぱり食事が大事なんですよ」と伝えても、「金払ったんだから運動でなんとかできないの?」って言われる。それが嫌だから、僕は当時からダイエット指導を専門としてやっていないんです。

――そうだったんですか。今ではダイエット専門家としての印象が強いような気がします。

「食べすぎちゃった」とか「どうしてもお菓子がやめられない」とかって、もう運動面はほぼ関係ないし、運動以外のメンタルカウンセリングに近いですよね。フィットネスクラブに来てもらっているのに、1時間の大半を食事の話に費やしていると、僕はなんのためにこの仕事を始めたんだろうって思えてくる。それがきっかけで、本を出したんです。

そうすれば「本を読んでください」で済むじゃないですか。本を読んで、納得してもらってから来てもらわないと、僕にお金を払うのがもったいないですよって。

お客さんに膝の角度や姿勢がどうとか指導して、それをきちんとできるようになっても、普段食べすぎていたら脂肪は落ちませんから。

――やはり痩せるためには、食事が大切だと。

運動というのは、体の形を変えるためのもの。だけど、痩せるか太るかは食事の問題です。そこの部分は分けて考えてほしいんですって伝えていますね。

■大切なのは“食事”であって“食事制限”ではない

――「痩せるためには食事が大切」という考え方は、アンケート結果を見ても、浸透しているのかなとは思います。多くの方々が減量をするときに、“食事”へと意識を向けているのではないでしょうか?

でも、それがまた間違って広まってしまっているようで。「ダイエットは食事が9割」っていうのは「食事が大切だよ」ってことなのに「食事制限が9割なんだ」と勘違いしている人がいます。食事を我慢して減らさなければいけないんだ、という考え方ですね。だから今回のアンケートでも「食事制限」が1位になってしまっているんだと思います。

食事がダイエットにおいて大きな影響を持っていることは浸透したけれども、まだ本質的な部分が理解されていないのが問題なんですよ。

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■自分の体をコントロールする感覚が必要

――たしかに、ダイエットの失敗談でも「カロリー制限や食事制限を気にしすぎて、逆に食事のことしか考えられなくなってしまった」という方もいるようです。摂食障害になった、なんて話もありますね。

こういう摂食に問題を抱えないためには、一度正しく太ってもらうことも大切ですよ。

――書籍の中にも「減らしてやせないなら、増やしてみる!」と書いてありましたね。

体重が増えても減っても、動じずに「こうしたから増えたんだ」とか「これだから減るんだ」とかっていう自分の体をコントロールする感覚が必要なんです。

「こうしたら、こうなるんだ」っていう自分の体で起きていることが体感できれば、体重が増えても心は動じません。こうなると、痩せてきたところで体重が停滞したときに、「それじゃあ食事量を増やしましょうか」という指導も、すんなり受け入れてくれます。

――体重を気にする方にとって、そのアドバイスは受け入れ難いんじゃないですか?

「そんなことしたら太っちゃうじゃないですか?」って普通の人は言いますね。でも「痩せるために太るんですよ」という指導を理解してもらわないといけない。

ほとんどの人が、食べすぎて体重が増えれば脂肪が多くなって、食べなくて減れば脂肪が少なくなっていると思っちゃう。でもそんな短期間で、脂肪の増減による体重の変化はほとんど起きません。大半が水分や、食べ物自体の重さによって起きているんですよ。

昨日よりも太っているという人がいますが、これは、ただむくんでいるだけ。もし昨日より体脂肪が増えていたとしても、それは何十グラムとかのレベルでしかなくて、昨日よりも1キロ、2キロも脂肪が増えることなんて生理学的にあり得ません。脂肪1キロあたり7200キロカロリーもあるのに、あなたはどうやって7200キロカロリーを合成したの? って話になるんです。

■外食や会食が多いなら、まず環境を変える努力をすること

――仕事や友人との付き合いで、外食や会食などが多い方は、自分で食事をコントロールすることが難しいのかなと思います。森さんはこのあたりをどう考えていますか?

その人の環境ってものすごく大事だと思います。

例えば「禁煙」の話ですが、たばこをやめられない人って、たばこ吸う人ばかりが周りにいたりするんです。飲み会に行けば、周りの人たちはたばこを吸うし、自分も酔っぱらうと吸いたくなっちゃう。そういう環境の悪さってありますよね。

こういったことが食事でも同じようにあります。お酒を飲むことが大好きな人たちと付き合っていたら、お酒を飲む回数も、飲み方も同じようになる。食べることが大好きな人が周りに大勢いたら、食べるものの種類を自分で決めることは難しいですよね。

だからこそ、自分がいる環境を変えていくことは、時間をかけて取り組んでいかなければいけないと思います。

――とくに仕事上の付き合いだと、変化を起こすのは厳しそうです……。

最悪、仕事の種類を変えるとかね。ただ、どうしようもないってときには、ベターな選択をしていかなければいけません。

お酒を飲むんだったら、「普通の醸造酒よりも蒸留酒にしましょう」とか「おつまみを、たんぱく質のものにしましょう」とか。こういうことしかできなくなってくる。

ベターな選択肢をとっていれば、まったく気をつけていない人よりは結果を出せると思います。ただ、環境をしっかり変えている人と比べると、結果を出すのは難しいと思いますよ。やらないよりはマシってことです。

毎日お酒を飲むわけではなければ、他のところで調整すればいい。

ただ「毎日お酒を飲むような仕事だから仕方がない」って言われたら、それはもう時間かけて環境を変える努力をしていくしかない。僕のお客さんで飲食店を経営している女性がいます。毎日お酒を飲まなきゃいけないし、仕事が朝に終わって、起きるのが昼すぎ。夕方くらいにトレーニングしに来られて、そこから夜仕事するって人なんですけど、やはり結果が出るのに時間がかかっています。

■我慢するダイエットが、ストレスを生み出す

――ストレスというのが、ダイエット失敗の大きな原因だと思うのですが、こういったストレスを減らす考え方やコツなどあれば教えていただきたいです。

何がストレスになるかは、人それぞれ違ってくるとは思っています。

ただひとつ言えるのが、食べ物を減らすことがストレスになるのなら、減らさなきゃいいんですよ。減らさないで、食べるものの種類を変えればいいんです。これまでひどい食生活を送ってきたのなら、質の良いものを食べるようにすればいい。

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――食事量はそのままで、食生活を良いものに変化させることでストレスを軽減する、ということでしょうか?

そうです。でも、好きなものは食べたいじゃないですか。だから、月に何回までは好きなものを食べるって決めればいい。だけど、みんなここを0回にしちゃう。

すべて我慢する必要なんてないんですよ。今まで5だったものを3にするだけで、前進しているのに、0にするからストレスが出てくる。そうしないと変わらないと思っている。これがダイエットでリバウンドする考え方。

これからの人生で、我慢し続けるんですかって話ですよ。これも禁煙に例えられるんですけど、たばこを吸わない人って、吸うのを我慢しているわけではないですよね。吸いたいと思わないから吸わないだけ。

だけど、これまでたばこを吸っていた人たちは、我慢をしなければいけないって考えている。これが間違いなんです。吸いたくなくなればいい話なので。

要は吸いたくなくなる頭の思考に変えればいい。そうなるためには、我慢をしてはいけない。まずは我慢をしないことありきで考えなければいけません。

――どうしたら辛くないのかを考えることが第一歩になる。

そうそう。

禁煙セラピーとかでも紹介されていますけど、まずはたばこを持たない。それで、吸いたくなったら買って吸う。吸ったらすぐ捨てる。こういったことを繰り返していくと、買うのがだんだん面倒になってくるんですよ。

食事もこれと同じです。まず、お菓子を買い置きしない。食べたくなったら買って食べる。お得パックを買わない。友達に誘われたら食べるけど、自分ひとりでは食べない。いろいろ方法はあります。

「これをやっちゃダメ」ではなくて「これをこれに変えてみましょうか」ということをやっていかないと前に進んでいかないんです。「我慢し続けることによって、全く食べなくなりました」なんて奇跡は起こりえませんよ。みんな自分の意思力を過信しすぎていると思います。

――食事のことを考えないようにしようとすると、逆に食事のことしか考えられなくなる。だから我慢はしない、ということですね。

「痩せろ」って言われ続けた結果、「食べてはいけない」と考えることで、もともと甘いもの好きじゃなかったのに、食べちゃうこととかあるんですよ。

「食べちゃいけない」って頭の中では「食べたい」ってことですから。そうじゃなくて、プラスに働くことをもっとしたいと思わなければ変わっていきません。

■運動後は速やかに栄養を摂ることで、痩せやすい体質をつくる

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――本書を読んで、ダイエットにおいて筋肉の役割が非常に重要であるといった印象を受けました。これは脂肪燃焼効果が上がる、といったことなのでしょうか?

もちろん、それはあるのですが筋肉が増えたからといって何を食べても太らなくなるというほど甘いものではありません。

大事なのは運動によって筋肉に刺激を与えること。そうすると、体がうまくエネルギーを使うようになります。有酸素運動でもなく、筋トレをして、筋肉を増やすことばかりでもなく、筋肉に刺激を与えたあとに、どういう風に栄養素を取り入れるかが重要なんですよ。

――運動後にすぐ食事を取ることは、もったいないと思ってしまいます。

それは間違えた考え方なんですよ。

筋肉に刺激を入れると、体は「筋肉をつくりたい」というシグナルをいっぱい送ります。このときに、材料となる栄養を入れないでどうするの? って話なんです。だから運動後は速やかに栄養を摂ってください。

体が乾いたスポンジみたいになっているところに、食事を取ってあげることで、栄養を取り込むルートができやすくなるんです。そうすると体は、体脂肪ではなくて、筋肉とか細胞にエネルギーを作ってあげるようになる。要はこれが代謝が上がる状態。

普段、筋肉に刺激を与えていない人は、代謝が落ちているからエネルギーが余っちゃって、体脂肪に蓄えちゃう。だから、運動後に栄養を摂ることで、細胞がエネルギーを使いやすい道をつくってあげることが大切なんです。

運動後30分以内にプロテイン飲めとかってよく言いますよね。ただ、プロテインじゃ足りないから、もっと吸収のよいものとか、ほかの栄養もたくさん取ってください。

■間食に食べていたお菓子は、卵やプロテインに変える

――栄養ってお話が出てきたんですけど、本書の中では卵が「スーパーフード」としてフォーカスされていたかと思います。こういった食材は、コンビニで販売されているサラダチキンなどでも応用できるのでしょうか?

サラダチキンのほうが、たんぱく質としては良いです。なので、食べる意味はあると思いますよ。結局のところ1日のうちで必要なたんぱく質の量を満たしているかが大切なんです。

たんぱく質は体の構成要素なので、絶対に必要量をとらなければいけません。逆に、ほぼエネルギーにしかならないものが、糖質だったり脂質だったりするわけです。

だから僕はたんぱく質を優先的に摂取して、そこから糖質や脂質のバランスをとって、量を考えるようにしましょうって言っています。

例えば、間食でお菓子とか食べていたのを、甘い味のするプロテインとかに変える。同じ満足度でも摂ったのはたんぱく質。今までは、脂質や糖質を摂取していたわけですから、体の中では満足はしていても、必要なものを摂っている状態と不要なものだけを摂っていたという事実は変わってきますよね。だからプロテインは大切だし、これは卵も同じことです。

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――森さんのお話を聞いていると、これまでダイエットに持っていた知識では、そりゃ成功するはずないなと思いました……。

ただね、みんな別に自分の体が変わらないことに悲観する必要はないと思います。

食事も運動も自分が選択したことじゃないですか。もっとその選択に自信を持てばいいのに、「がんばっても痩せられないから私はダメな人です」みたいに言うでしょ。

それならいっそのこと開き直って、「私ダイエットしてないから」って言っている人のほうが「私なんてダメだから」って言っている人より美しいと思うし。だから僕は痩せていない人のことを絶対にバカにしませんよ。

(完)

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森拓郎さんプロフィール

運動指導者。大手フィットネスクラブを経て、2009年、自身のスタジオ「rinato」(加圧トレーニング&ピラティス)を東京・恵比寿にオープンし、ボディメイクやダイエットを指導。ファッションモデルや女優などの著名人のクライアントも多く、その指導に定評がある。テレビ、雑誌など多くのメディアで注目されている。著書に、『ダイエットは運動1割、食事9割』『ダイエットは運動1割、食事9割 91日間実践ノート』(ディスカヴァー)、『オトナ女子のための食べ方図鑑』(ワニブックス)などがある。

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