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日本のSDGsを支える外務省の方に聞く、日本のSDGsの現状とは?

  • 2021.4.25
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2015年9月、国連サミットにて193カ国の加盟国の全会一致で採択された、「持続可能な開発目標」(SDGs)。それぞれの国が世界的に解決されていない課題の目標達成を目指し、活動しています。日本はその中で、どんな取り組みをしているのか。また、世界からみた日本のSDGsの現在とこれからすべきこととは? 外務省でSDGsの広報を担当する吉橋明日香さん(取材当時)と照屋友紀さんにお話を伺いました。

SDGsと日本。そう考えたときに、カーボンニュートラルなど自然環境について取り組む環境省や教育を担う文科省などが日本のSDGs課題をそれぞれ考えているのでは? と、シンプルに思ったが意外にも、外務省を中心に日本のSDGs達成に向けた取り組みは考えられているそう。2016年に日本政府が設置した「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」。その事務局を担っているのが、外務省なんです。

「SDGs推進本部のトップは総理大臣です。さらに全国務大臣が参加し、日本政府として何に重点を置きSDGsをいかに推進していくかを話し合っています。その取りまとめをしているのが外務省なんですよ。国内外の課題解決のためには、各省庁がそれぞれの役割を担うことが必須です。誰が何をするべきか。何から考えるべきか。その調整や窓口となる役割を外務省が担当しています」(吉橋さん)

外務省は、SDGsにおける各省庁との連携を取り仕切るだけでなく、それを国内外に発信し、広めていく役割も担っています。

「2015年のSDGsの採択を受け、外務省でまず考えたのは日本のみなさんに当時、まったく知られていなかったSDGsという言葉を知ってもらおうということでした。子どもたちにも伝わるようにピコ太郎さんとコラボして『PPAP』SDGsバージョンをYouTubeにアップしたり、国内外の情報を伝えるために外務省公式SDGsツイッターアカウントも開設したり。幅広い層にまずSDGsという言葉や、それがどういう取り組みなのかを伝えていくのもSDGs元年での私たちの仕事でした」(吉橋さん)

「ジャパンSDGsアワード」を通して生まれる様々な“つながり”

そのひとつとして外務省では、2017年にSDGs推進本部にて「ジャパンSDGsアワード」を創設。SDGs達成に資する優れた取り組みを行っている企業・団体などを表彰するもので、過去4回開催されています。これにより、政府機関と企業だけでなく、企業、NGO、地方自治体、教育機関、病院など多様なステークホルダーとSDGsという取り組みを軸に多くのつながりを生むことに成功します。

「SDGsには17もの目標があり、このゴールが設定される前からSDGsに貢献する活動をしている国内の企業や団体はたくさんあったんです。SDGsって何をすればいいかわからない。企業も自治体もそう感じていた当時ですから、そういう、良い取り組みは見えるようにしたほうがいいよね、ということでアワードを作り可視化したんです。そのことで、同じ取り組みをしている企業とNGOを結びつけることができたり、入賞した取り組みをみて“その活動なら私たちもやっている”と声をあげてくれるきっかけになったり。いい連鎖がいくつも生まれました」(吉橋さん)

「また、つながりを生むことができたのは、企業や団体だけではありません。一般消費者である私たちにとっても、どんな受賞者がいるのかと関心を持ってもらうことでSDGsを知り、行動するきっかけになるのではないかと思います。例えば、2020年12月に行われた第4回ジャパンSDGsアワードでSDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞を受賞した『みんな電力株式会社』は「顔の見える電力」をコンセプトに、国内の再生可能エネルギーを供給する小売事業を展開しています。電力を使う私たちが、信頼できるクリーンな電力を供給している発電事業者を自分で選べる仕組みで、一消費者としても興味が持てる取り組みだと思います」(照屋さん)

SDGsにおける日本の立ち位置とこれからの取り組み。

もちろん海外の支援活動など外務省の本来の役割としてSDGsに貢献できる活動も広げている。先進国を含めたすべての国が目指す、世界的な取り組みであるSDGs。日本の今の取り組みは世界と比べてどの程度、進んでいるのでしょう?

「おかげさまでSDGsという言葉の認知度は急速に進み、今国民の4人に1人はSDGsを知っているという段階まできています。とは言いつつも、例えばドイツのベルテルスマン財団という団体が発表している、世界のSDGs達成度ランキングでは、2020年の調査において日本は17位という位置づけです。目標別の取り組みをみると教育や経済成長、産業・技術改革などは高評価を受けていますが、ジェンダー平等などは低評価です。国会議員や管理職の女性比率や、男女の賃金格差などに課題があるとみなされました。この問題は、数年で劇的に改善できるものではないかもしれませんが、2020年にはコロナの問題もあり、働き方や暮らしが新しく変わってきています。そんな中で、SDGsの意識が浸透することで、多様なライフスタイル、多様な働き方ができる社会が整っていけばと願っています。少しずつ、世界に誇れる状況になっていけばいいなと思います」(吉橋さん)

「感度の高いHanako読者のみなさんは、私らしく生きていくことをとても大事にされていると思います。それぞれの個々人が、自分らしいスタイルを確立しながら、日々の生活に満足できる社会が広がっていくことは、SDGsの達成に向けても大切なポイントです。また、私たちが日々の生活の中で選ぶもの一つひとつで世界は変わっていきます。自分たちの身近な行動が世界とつながっているという想像力をしっかりと働かせられたら、自分が選ぶすべてのもの、先ほどの電力もそうですし、食べるもの、身につけるもの、着るものなどにおいて、そこに環境への負担はないか、貧困国への圧迫はないか、などといったことにも関心を向けられると思います。自分と世界がしあわせになれる社会を築くために、日々の生活の中から一つひとつの行動を見直して、考えてみることからはじめてほしいですね」(照屋さん)

「コロナ以前はSDGsも、やれるならやったらいいよね、という感覚だったと思いますが、恐ろしい感染症が目の前に差し迫る今、持続可能な社会の実現は必須だという認識に変わりつつあると思います。企業でも、個人でも既にやっていることはあると思いますし、一歩踏み出せばできることがたくさんあります。あまり難しく考えずに自分ができそうなことからはじめることが大事なのではないでしょうか」(吉橋さん)

外務省 国際協力局 地球規模課題総括課 経済協力専門員
吉橋明日香さん(左)
よしはし・あすか/コロンビア大学建築大学院修士課程を修了後、UNESCOニューデリー事務所にてインド国内の貧困削減と文化遺産保全事業に従事。2014年より現職。ジェンダー分野・教育における開発協力とSDGsの広報を担当。

外務省 国際協力局 地球規模課題総括課 経済協力専門員
照屋友紀さん(右)
てるや・ゆき/青山学院大学 国際政治経済学部を卒業後、民間企業にて勤務の後、2019年より現職。SDGs広報・アウトリーチ業務を担当。

photo:Hiromi Kurokawa text:Kana Umehara

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