1. トップ
  2. インディー映画の女王、3度目のオスカーなるか?

インディー映画の女王、3度目のオスカーなるか?

  • 2021.4.24
  • 2814 views

30年近く、アメリカで最も尊敬される女優のひとりといわれてきたフランシス・マクドーマンド。受賞歴もトップクラスの彼女は、スターシステムから距離を取る、控えめな女優だ。そして毎作、彼女の言葉によると「3次元」的という、複雑な役柄に挑戦することでも知られる。

最新主演作のロードムービー『ノマドランド』でもそのことを裏付けたフランシス。アカデミー賞に6部門でノミネートされたこの映画は、彼女に3つ目のオスカー像をもたらすことになるかもしれない。

フランシス・マクドーマンド。2014年、ベネチア。photo:Kurt Krieger / Getty Images

インディー映画の女王

フランシス・マクドーマンドは、イエール大学演劇科出身。デビュー作は1984年公開の映画『ブラッド・シンプル』だ。当初出演することになっていたルームメイトのホリー・ハンターが降板し、その後に抜てきされたのが彼女だった。この作品を監督したジョエル・コーエンは彼女に一目惚れ。ふたりは結婚し、養子をひとり迎えている(彼女自身も養子だ)。

ジョエルと弟のイーサンはコーエン兄弟の名で知られるデュオ。フランシスは彼らの映画の常連女優となる。代表作は『赤ちゃん泥棒』(1986年)、『ミラーズ・クロッシング』(1990年)、『ファーゴ』(オスカー初受賞作)、『バーン・アフター・リーディング』(2008年)など。心の闇を描いた作品も不条理劇もどちらも得意とする彼女に魅了された監督は、他にも、ニキ・カーロ、ガス・ヴァン・サント、ウェス・アンダーソン(『ザ・フレンチ・ディスパッチ』の公開が待たれる)などがいる。マーティン・マクドナー監督作『スリー・ビルボード』(2017年)で、彼女は2つ目のオスカーを受賞した。

ハリウッドの謎

雑誌の表紙、テレビインタビュー、セレモニー...。有名俳優たちが追われるこうした活動に、彼女はあまり関心がない。まれにマスコミに出演する際も、派手な装いはせず、インタビューでも映画の話しかしない。美容整形は俳優としての仕事道具を損なうとして反対する。「私の顔は伸縮自在。これまで充分、役立ってくれたし、年を取ってからますますいい働きをしてくれる。この顔には私の人生の軌跡が反映されている。だから私はそれをしかるべく活用しているわけです。私は女優であり、映画スターではありません」

現在63歳。次回作となるシェークスピアの戯曲『マクベス』を映画化した『The Tragedy of Macbeth』ではデンゼル・ワシントンと共演する。呪われた高齢夫婦を主人公にしたこの映画は、今回、夫のジョエルが単独でメガホンを取る。

役作りに全身全霊を傾けるアーティスト

出演作を選ぶ目も厳しい。そして役作りには全身全霊を傾ける。現代のノマドを演じた『ノマドランド』では、4ヶ月間、さまざまなアルバイトをしながら、バンで車上生活を送った。その彼女が4月25日、アカデミー賞レースに参戦する。この映画ですでにゴールデン・グローブ賞、金獅子賞を受賞している監督のクロエ・ジャオは、アカデミー賞最優秀監督賞にノミネートされた初のアジア系女性となった。2018年のアカデミー賞授賞式で、撮影現場での多様な人材の雇用を要求する「インクリュージョン・ライダー」を俳優が契約条項に盛り込むことを呼びかけた彼女にとって、これほど喜ばしいことはない。

複数性と平等を擁護する彼女にとって、盲目的にイデオロギーを信奉する活動のあり方は論外。「女性監督の映画の大半も、退屈で型に嵌っている点では、男性監督の映画と同じ。カーチェイスの代わりに、主人公の女性の鬱に滑稽なまでに焦点を当てる映画が作られていくのでしょう」

元記事で読む
の記事をもっとみる