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弘中綾香の「純度100%」~第49回~

  • 2021.4.23
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ひろなかあやか…勤務地、六本木。職業、アナウンサー。テレビという華やかな世界に身を置き、日々働きながら感じる喜怒哀楽の数々を、自分自身の言葉で書き綴る本連載。前回から続いて人生で必要な時間という「読書」について。いまおすすめの作品とは?

「どこにも完全な人なんていないんだよ」

前回、読書はインプットのためじゃなく、この世界から束の間飛び出して息抜きするための“必要な選択”であるという話をした。そういった理由から選ぶ物語は、ドロドロとした愛憎劇というよりも、どこか美しいものや優しい気持ちになれるものが多い。いつもやさぐれて何事も斜に構えているように見えて、本はもちろん映画やそのほか何でも、基本的にはハッピーエンドのストーリーが好きだ。

もうずっと前から好きな作家さんに、瀬尾まいこさんがいる。瀬尾さんの本はどの作品も読み終わったときの後味が最高なのだ。おいしいお味噌汁を飲んだときみたいに、じわ~っと五臓六腑に沁みわたるような温かい気持ちになれる。もしくは、凍えるくらい寒い外から帰ってきて、入るお風呂。ふわ~っとリラックスしていくあの感じ。人生捨てたもんじゃないな、という気にさせてくれる。
ほぼ全作読んでいるが、とにかくどの物語の登場人物もみんな気の置けない良いヤツなのだ。どの人もちょっと不器用だったり、鈍くさかったり、繊細だったりして、誰一人として完全無欠ではないんだけれど、憎めない愛らしい人間らしさを持っている。こんな人になりたいなあ、と思ったり、こんな人が周りにいたらいいのになあ、と思ったり、とにかくみんなちょっと変わっているけど素敵な人ばかりだ。
そんなキャラクターたちは一人だと頼りないけれど、周りの人たちと交わることによって強くなる。タッグ戦やチーム戦になると“確変”するのだ。それを見て、人が動物としては特異な社会性を持って生まれてきたということは、結局こうやって人を助け助けられ生活していくことこそ人生の醍醐味なのかなぁと考えたり、人生ってこういうことが楽しいんだよというのを気づかせてくれるような一面もある。
加えて、瀬尾さんの作品は価値観に広がりがあって、多様性に富んでいるところも好きだ。例えば、家族。一般的に言うと血縁関係のある人のことを指すけれど、瀬尾さんの作品は血の繋がりではないところで固く結ばれている家族が沢山出てくる。家族って血縁が普通だよね、家族ってこうだよね、という価値観から軽やかに一歩踏み出しているのだ。〇〇はこうでなきゃいけない、という固定観念的な考え方へのアンチテーゼのような側面も私は感じ取っていて、勇気をもらえる作品が多い。

直近に読んだ『夜明けのすべて』もとても良かった。内容はあえてここでは触れないが、今の世の中に生きていると「私、ビョーキなんじゃないか?」と思うことが一度や二度はあると思う。ここで言うのは病名のあるような「病気」ではなくて、なぜか夜中に涙が止まらないとか、用事をドタキャンしてしまう癖があるとか、気分の上下が激しいとか。ずっと元気でハッピーな人間はいないわけで、しかも世界がこんな状況で身も心も不安定になるのも仕方ないわけで。でも、本人からすると自分ってダメだなぁ、もっと強くなりたい、と思ったりして悩みの種だったりもする。より落ち込んでしまうこともあるんだけど、『夜明けのすべて』では、そんな自分のウィークポイントと思えることをありのまま受け入れることがまず第一歩、どこにも完全な人なんていないんだよ、完全じゃない同士がお互いに支え合えば生きていける、ということを伝えてくれているような気がする。読んでみてほしい。

次回:2021年5月13日更新予定

photo:moron_non
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【弘中のひとりごと】
皆さん!この時期から紫外線対策しないとですよっ!

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