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3月末 緊急事態宣言解除後の銀座を歩いて、私は「外出 = 希望探し」だと気づいた

  • 2021.4.16
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東京は4月12日から5月11日まで「まん延防止等重点措置」が適用されているため、思うように外出できない状況が続いています。フリーライターの山本肇さんが発令前の3月末の銀座を歩いて感じたことをつづりました。

コロナ以前は外国人観光客であふれていた銀座

新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、東京都内の23区と六つの市(武蔵野市、府中市、調布市、町田市、八王子市、立川市)では4月12日(月)から、「まん延防止等重点措置」が適用されています。期限は大型連休後の5月11日(火)まで。

とは言っても、この1年間自宅から出なかった人たちにとって、外出は今もっともしたいことでしょう。そのようなわけで、まん延防止等重点措置後の健全な外出を期待しつつ、筆者が緊急事態宣言解除後の3月末に行った銀ブラ(東京の銀座通りをぶらぶら散歩すること)について書いてみようと思います。

※ ※ ※

昨年来、筆者のような街歩きライターは悩みを抱えてきました。外出自粛が叫ばれるなかで、外出を促すような記事は書きにくい。かといって、利用客の減少でお店が苦しんでは困るわけです。最初の緊急事態宣言からもすでに1年が経過しています。

というわけで3月末、有楽町駅を降りて銀座を目指しました。今回の目的は銀ブラです。銀座は東京のなかでもコロナ禍で風景ががらりと変わったエリアの代表格です。

1年と少し前まで、中国人を中心に銀座には観光客があふれていました。中央通りには大型バスが停車し、外国人観光客向けガイドブックに掲載されているようなお店にはいつも行列ができていました(といっても、大半の中国人は「大衆点評」という口コミサイトを利用しているのですが……)。

あまりに人が多くて道がふさがっているような光景も、もはや当たり前でした。

靴磨きをして準備万端

そんな外国人観光客が減ったことで、銀座の街はどんよりと沈んでいるかのようなうわさをよく聞いていましたが、当日はそんなこともありませんでした。むしろ観光客全般が少ないので、どんなお店でも並ばずに入ることができるチャンスでした。

今回は有楽町駅から銀座に向かったわけですが、革靴を履いていたこともあり、久しぶりに有楽町駅前の東京交通会館(千代田区有楽町)にある靴磨きの名店「千葉スペシャル」に寄りました。

3月末の銀座の様子(画像:山本肇)

同店のスタッフは、いつもハンチングに丸メガネ、ちょうネクタイで装いをそろえていることで知られています。大抵行列ができているので30分くらいは待つつもりで出掛けるのが常識でしたが、2020年の緊急事態宣言時には行列が消滅。筆者もそんな状況を見て「どれだけの会社がテレワークになったんだ……」と危機感を覚えましたが、3月の解除後はお昼の時間帯にまた行列ができています。

ただ、夕方近くには行列が途切れていることも。靴を磨いてもらいながらスタッフに聞いてみると、早めに帰宅する人が増えたために、会社帰りに立ち寄る人が減っているのだとか。

とはいえ、このときの靴磨きは満席。お店を出るときには待ちのお客さんもいました。やはり、ここぞという商談の験担ぎで磨いてもらう人も多いという信頼の技術は、コロナにも負けないということでしょうか。

「GINZA SIX」に寄ってみた

さてピカピカになった靴で足取りも軽く、三笠会館(中央区銀座5)の前を通って、高級クラブが軒を連ねるエリアを歩いてみることに。

訪れたのは16時頃でしたが、目立つのは酒屋などのさまざまな出入り業者です。大きな札のついた花かごを抱えて歩いている花屋らしき人もいます。緊急事態宣言も一息ついて、経済が回り始めていたということでしょうか。

3月末の銀座の様子(画像:山本肇)

周辺をぶらぶらと歩いてから向かったのは、4月12日からは開業4周年に合わせて新しいアート作品が展示されているGINZA SIX(銀座6)です。

言うまでもなく銀座エリア最大級の複合商業施設ですが、この1月にはとんでもない風評に巻き込まれました。テナントの入れ替えをアナウンスしたところ、なぜか「大量閉店」という部分だけがクローズアップされ、メディアに取り上げられてしまったのです。

やはり、コロナ禍で銀座全体で人が減っていることへの不安が、そんなネガティブな見方を呼び込んでしまったのでしょうか。現在はオープン以来初となる大規模リニューアルを進めている最中で、報道はまったくの早合点でした。

実のところ、これまでGINZA SIXにあまり立ち寄っていませんでした。というのも、筆者の複合商業施設の楽しみ方が、エレベーターでまず最上階に行き、エスカレーターで下に降りつつ……というのがセオリーだったからです。ところがGINZA SIXはあまりににぎわっていてエレベーターが行列になっておりできなかったのです。しかし3月末は行列せずに楽しめました。

デパートは「日常を忘れさせてくれる場所」

そんなGINZA SIXですが、訪れた際に絶対にいったほうがいいのが、屋上です。約4000平方メートルの敷地を持つ屋上庭園はセンターに芝生を配置して、周囲にベンチが配置されています。銀座の中心にありながら、ここほど空が広く見える場所はありません。

これまで銀座で一息つける屋上といえば、銀座三越(銀座4)でした。まず地下で木村屋のあんぱんを買ってから、エレベーターで屋上へ……というのが、筆者の普段の楽しみ方でした。しかし最近は「GINZA SIX」の屋上に浮気しがちです。広く、「密」が避けられることもあってか、ベビーカーを押している家族連れもよく見かけます。

さて、一息ついてから各階を見物します。コロナ禍でもGINZA SIXや銀座三越はにぎわっていました。ウインドーショッピングをしている人たちの顔を見ると、どこかホッとして楽しげな感じがします。

コロナ禍でも変わらず洗練された品物が集まったデパートは、「厳しい日常を忘れさせてくれる場所」として機能しているように見えます。

3月末の銀座の様子(画像:山本肇)

確かにブランド物の洋服は目から火が出そうな価格ですが、家族や友人と「高いな~」など言い合うのもまた一興。「いつか買おう」と決めて日々の仕事に励む機会を与えてくれる気もします。

インターネットで何でも買える時代になり、

・どの街で買ったのか・どのお店で買ったのか

という価値は、以前より失われているかも知れません。しかし希望が失われがちなコロナ禍にあって、街を訪れて何か新たな夢を見つけようとしている人は増えているのかも知れません。

街中で大騒ぎをして感染拡大に加担するのはもってのほかですが、きちんと対策をして「希望を探しに出掛ける」ことは、まん延防止等重点措置後もぜひやるべきです。とりわけ銀座はそれに適した街だといえます。

今回の銀ブラの最後に竹葉亭(銀座5)でうな丼を楽しみましたが、それでも数千円程度。陰鬱(いんうつ)としている暇があったら、まん延防止等重点措置後は銀ブラをして、おいしいものを食べませんか。もちろん、帰りにあんぱんを買うのも忘れないでください。

山本肇(フリーライター)

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