1. トップ
  2. 見たら死ぬ傑作Netflix「バード・ボックス」目隠しをしたサンドラ・ブロックのサバイバルサスペンス

見たら死ぬ傑作Netflix「バード・ボックス」目隠しをしたサンドラ・ブロックのサバイバルサスペンス

  • 2021.4.15
  • 1625 views

●熱烈鑑賞Netflix 63

サンドラ・ブロックの説得力

Netflixのサバイバルサスペンス映画ベスト3を選ぶときには必ずランクインするだろう傑作『バード・ボックス』を紹介する。ひと目見てしまうと発狂してしまう! そんな「何か」が突如出現してしまった世界。もはや人類は滅亡の危機に瀕している。そんな世界でサバイバルする人たちを描いたサバイバルサスペンス映画だ。

主演はサンドラ・ブロック。『しあわせの隠れ場所』でアカデミー主演女優賞を受賞。『スピード』『オーシャンズ8』『ゼロ・グラビティ』等、代表作をあげていけばキリがない。パニックに陥りながらギリギリのラインで保っている女性をサンドラ・ブロックが演じて、とんでもない状況設定の『バード・ボックス』を説得力のある映画にしている。

本作は、2018年にNetflixオリジナル作品として公開され大人気を博した。
配信後1週間でのべ4500万人以上が視聴。目隠しをして何かにチャレンジするバード・ボックス・チャレンジがYouTubeなどで流行り、Netflixが「危険なのでやめてほしい」と声明を発表したほど。
監督は、『真夜中のゆりかご 』『しあわせな孤独』『未来を生きる君たちへ』のスサンネ・ビア。脚本は『遊星からの物体X ファーストコンタクト』『メッセージ』『ブラッドショット』のエリック・ハイセラー

「何か」がわからない恐怖!

「目隠しは絶対に外さないで。外したらぶつわよ。見たら死ぬわ。わかった?」
マロリー(サンドラ・ブロック)と幼い少年と少女。3人は目隠しをして、家を出る。ロープを手掛かりに、歩数を数え、川のボートに乗り込む。何も見えない状態で進む。なぜ、こんな状態になっているのだろうと疑問が沸き上がったところで、5年前の場面に。

それは、妊娠しているマロリーが、姉と一緒に産婦人科から帰る途中に出現する。目の前で救急車が激突。慌てて車を発進させるが、町はすでに大混乱。背後で爆炎が巻き起こり、多くの車が暴走している。姉の携帯が鳴り、マロリーがそれを取るために後ろを向いた瞬間に、姉だけが「何か」を見てしまう。

目にいっぱい涙を浮かべた姉は、マロリーが止めるのも聞かず車を暴走させる。止まっている車に激突し、ふっとぶ。ひっくり返った車の中から、マロリーと姉がはい出るが、姉は茫然とした顔で立ちすくみ……。
5年前の「何か」出現直後の混乱した世界を描くパートと、生き残りをかけた目隠し状態の川下りのパートが交互に描かれる。

川下りのパートで示されるいくつもの謎が、5年前のパートでじょじょに解明して、最後に結び付く構成が見事。
しかも、どちらのパートも絶体絶命状況の連続で、緊張と緩和の法則など関係なし。緊迫緊張絶体絶命、トーンの違う2種類のサスペンスシーンの連続で、息つくヒマもない。

生き残りを賭けて銃を構えるマロリー(サンドラ・ブロック)/Netflix映画『バード・ボックス』独占配信中

単純なハッピーエンドもしくはバッドエンドなどではない

非常事態宣言が出る。電話もつながらない。テレビも映らなくなる。
大混乱を起こした世界から逃れ、籠もった家にはさまざまな人が集まっている。
女性警官。もうひとりの妊婦。おばあちゃん。オタク青年。妻を失った男(ジョン・マルコヴィッチ)。
当然、意見は対立する。しかもジョン・マルコヴィッチ演じる男が愛した妻は、マロニーを助けるために外へ出て「何か」を見て死んでいるのだ。心穏やかではいられない。さらに、何が起こってるのか分からない危機的な状況に全員がピリピリイライラしている。食料がなくなる。

「何か」を見ないために目隠しをしたまま旅は続く/Netflix映画『バード・ボックス』独占配信中

「何か」が何なのか、どうしてそれが出現したのか。そういった原因はほとんど説明されない。
人間の認識能力を遥かに超える異形のモノであり、神がごときモノとして描かれる。
「何か」を見たものは、最終的には死に突き進むのだが、その様子はうっとりと幸せそうでもある。
タイトルの真の意味がわかるラストは、単純なハッピーエンドもしくはバッドエンドなどではない。ゆえに深く心に突き刺さる。

『バード・ボックス』のスペイン版スピンオフが企画中の噂もある。
2時間4分、観終わるとぐったり疲れてよく眠れるほど、緊迫場面の連続だ。サバイバルサスペンス映画の傑作。ぜひ。

■米光一成のプロフィール
ゲーム作家。代表作「ぷよぷよ」「BAROQUE」「はぁって言うゲーム」「記憶交換ノ儀式」等。デジタルハリウッド大学教授。池袋コミュニティ・カレッジ「表現道場」の道場主。

元記事で読む
の記事をもっとみる