1. トップ
  2. グルメ
  3. 新トレンド「飲まない」カルチャー浸透中。令和のノンアル最前線

新トレンド「飲まない」カルチャー浸透中。令和のノンアル最前線

  • 2021.4.14
  • 1007 views

飲み会などで「すみません、今日はソフトドリンクで」と謝った経験がある人もいるだろう。ウーロン茶を頼んだら「えー、ノリ悪い!」と言われた人もいるかもしれない。それくらい、長らく「飲まない」ということは「場を白けさせるもの」「カッコ悪いもの」として認識されてきた。お酒を飲まない人はだいぶ肩身の狭い思いをしてきているのではないだろうか。だが、それは昭和・平成の話。令和に入って「ノンアル派」が急激に台頭している。

もう「ノンアル=飲めない」という時代じゃない

令和元年の厚生労働省の調査によると、飲酒習慣について「週3日以上」と答えた30歳代の男性は29.9%。女性は15.8%となっている。20歳代に至っては、男性は14.1%、女性は5.2%だ。そう、「結構飲みます」という人の方が圧倒的に少ないのだ。若い人ほど飲まないといわれているものの、全世代の統計としても「ほとんど飲まない/飲まない/やめた」と答える人の割合も増え、令和元年の調査ではなんと半数を超えた。

(出典)
https://www.mhlw. go.jp/content/10900000/000687163.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/000711008.pdfHarumari Inc.

背景には接待や職場の飲み会などの減少がある。そもそも“飲む場”が減っていることに加え、“場にあわせて”飲むより、自分の体にあった飲み物を選ぼうという気運が高まっているのだ。コロナ禍を経て、さらにその傾向は強まっていることだろう。

日本のビジネスシーンでは、飲み会は「飲みニケーション」として古くから有効なコミュニケーションツールとして知られてきた。「朝まで飲んだ」「先輩に飲まされた」こんなこともザラだっただろう。しかし、働き方改革や多様化、ハラスメントの撲滅が叫ばれている昨今においては、誰もがストレスフリーなライフスタイルを目指している。職場の飲み会は圧倒的に減り、上司と飲みに行くということも減った人が多いのではないだろうか。

この「飲まない」文化は、何も飲み会をスルーするというネガティブな目的のためだけのものではない。
たとえば健康事情・妊娠・体質改善といった個々が抱える問題を“場に合わせる”ことより優先するものでもあり、ドライブ・アウトドア・サウナ・スポーツなどシーンによって求められるものでもある。どんなライフスタイルやどんなシーンの人でも置き去りにしない選択肢は、今の時代にあっているといえるだろう。

欧米では、ミレニアム世代を中心に、「Sober Curious(ソーバーキュリアス)」という文化が急激に拡がっている。ソーバーキュリアスとは「お酒を飲めるけれど、あえて飲まない」人のこと。「Sober」は訳すと「しらふ」。そして「Curious」は「好奇心旺盛な、興味深い」。つまり飲“め”ないということでなく、積極的にその選択をしている、スタイルという意味あいだ。

過剰な飲酒は生活習慣病につながるといわれており、その有害摂取の防止に取り組むことはSDGsの目標のひとつに掲げられている。イギリスやオーストラリアでは、すでに政策の一環として禁酒推進月間などがある。その源はやはり「健康」。根っこには世界中の健康志向があるといえる。健康は、自分のため。「自分らしさを大切にする」という世界的な風潮からこの文化が生まれた。
日本だけでなく世界中で「飲み過ぎは健康を害す。誰かにあわせて飲むくらいなら、飲まない方がカッコいい」というムーブメントが起こっているといえよう。

美味しいノンアルドリンクの発明

さて、お酒を飲むシーンの代表的なものといえば、食事どきがまず挙げられる。

食事の際には「お茶」「ミネラルウォーター」を選択する人が多いだろう。

清涼飲料水やジュースなど、市場に出回っているソフトドリンクのほとんどは、それ単体で楽しむことを目的として作られており、味が濃い。料理にあわせるのは難しいのだ。

料理とあわせるのに適していて、さらに美味しい。そんなノンアルは今までなかったといえるだろう。そして誕生したのが、新時代の「ノンアル」のブームだ。

最大の特徴は、料理とのマリアージュを追求して作られていること。ローンチした昨年より、フーディの間で話題沸騰中の「NON」はそんな新時代のドリンクのひとつ。

デンマーク・コペンハーゲンの伝説のレストラン「noma」の元シェフであり、ドリンクペアリングにも関わっていたWilliam Wadeがクリエイティブディレクターを務めるチームが手がけている。彼らは発信する新しいノンアルコールドリンクのことを「オルタナティブ・アルコール」と呼んでいる。オルタナティブは「主流のものに代わる、代替の」。つまり、アルコールに代わるまったく違うドリンクのことを意味する。

ワインからアルコールを抜く製法や、ハーブやスパイスを使って味わい深さや香りをつける方法など、今までの「ノンアルコールドリンク」に対するイメージを覆す、まったく新しいものなのだ。

アルコール界ではクラフトビールやクラフトジンなど深い味わいや背景にあるストーリーごと楽しむお酒がブーム。お酒は酔うためだけに飲むものではもはやなくなってきている。同じように、ノンアル界でも、ストーリー性が高い「NON」のような商品が人気を博している。
また、フーディが通う都内の有名な美食レストランでも「ノンアルコールペアリング」コースが増えてきている。普段ついつい「ワインペアリング」を選んでしまう人や、好きなお酒を頼む人も、これからは「ノンアル」のラインナップにも注目してみよう。

新しい飲食カルチャー「ノンアル専門店」

2020年に「ノンアル」が注目されはじめてから、東京では「ノンアル」という新しいカルチャーに特化したスポットが続々と登場している。

2020年3月には東京駅八重洲口に「Low-Non-Bar」(ノンアルコール・ローアルコールドリンク専門店)がオープンした。

ここはノンアルコールカクテルを意味する「モクテル」を、BARという空間で楽しむ場所。バーテンダーが創作するクリエイティブなドリンクを楽しめる。手がけているのは都内や軽井沢で6店舗の“オーセンティックな”バーを運営する株式会社カクテルワークス。

素材や作る工程は、普段のBARで提供する商品の延長線上だと彼らはいう。バーテンダーだからこその技術や知識が土台にあることから、提供されるのは目にも麗しいカクテルだ。

店舗の名前を冠したこのモクテル「Low-Non-Bar」は、鳥を模した形のグラスにイチゴ、ラズベリー、ブルーベリーといったミックスベリーやパプリカを使用。ベースには先述した“ノンアルドリンク”のひとつである「shrb」のオレンジ&ジンジャー味が使われている。なんとも美しく、洒落た一杯だ。アルコール分は0.00%なのに、カクテルさながらの楽しみ方ができる。
健康を気遣ってお酒をやめた人や、お酒を飲まない人でもBARの空間でドリンクを楽しむことができる。

そしてもうひとつ、昨年オープンして以来大きく話題を集めているのが六本木の「0%」だ。こちらは完全に「ノンアル」であることにこだわったバーだ。

内装とアートディレクションは、音楽やファッションシーンで、国内外を問わず数多くのグラフィックやアートディレクションを手がける注目のアーティストYOSHIROTTEN率いるクリエイティブスタジオYAR、設計は住居、店舗、オフィス空間などを手がけるTATO DESIGN。本格的でリッチなアートのような空間で、本物のノンアルドリンクを楽しめる。

フルーツにバジルをあわせた爽やかな「A Real Pleasure」、コールドブリューコーヒーにフレッシュグレープフルーツをあわせた「Goldentree」、ナチュールワインのような味わいのコンブチャなど、新感覚のドリンクメニューが20種類以上。一部メニューは、世界のトップ50を決めるThe World’s 50 Best Barsに複数店舗がランクインする「SG Group」の後閑信吾氏が監修しているというからこれはもう、本格派だ。

飲まない人、時期的に控えたい人のみならず、普段お酒を飲んでいる人でも新しいジャンルとして楽しめる奥深い味わい。ハーブやスパイス、発酵などは体に嬉しい効能もあるのでおすすめだ。

家の食事でのお供に、外食時の選択肢のひとつに、専門店で堪能……。もう“飲めない”ときのエクスキューズではおさまらない、新しいカルチャーの誕生だ。

元記事で読む
の記事をもっとみる