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田口トモロヲ&松重豊&光石研&遠藤憲一が語る、大杉漣がくれた“楽しむ力”「生涯かけて目指す」

  • 2021.4.13
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日本の映画、ドラマに欠かせない名バイプレイヤーたちが実名で出演して話題を呼んだテレビドラマ「バイプレイヤーズ」が、映画『バイプレイヤーズ〜もしも100人の名脇役が映画を作ったら〜』となってスクリーンで公開中だ。シーズン1から出演する田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一が、本シリーズのリーダーと慕い続けるのが、2018年に急逝した大杉漣だ。大杉から受け取ったものは、「楽しむ力」だと声を揃える4人。劇中の“わちゃわちゃ感”そのまま!笑顔いっぱいに、大杉への想いや“バイプレ愛”を語った。

【写真を見る】スーツでキメた田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一がクールな撮り下ろし!

「漣さんを抜きにした『バイプレイヤーズ』は考えられなかった」

おじさまたちの“わちゃわちゃ”ぶりも更にパワーアップ [c]2021「映画 バイプレイヤーズ」製作委員会
おじさまたちの“わちゃわちゃ”ぶりも更にパワーアップ [c]2021「映画 バイプレイヤーズ」製作委員会

2017年に、テレビ東京系にてテレビドラマシーズン1「バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~」がスタート。映画やドラマで渋い存在感を発揮する名脇役たちが本人役を演じ、おじさんたちの賑やかなやり取りが大人気を博した。翌2018年にはシーズン2「バイプレイヤーズ~もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら~」も実現。2021年1月からは、100人を超える名脇役が共演する新シリーズ「バイプレイヤーズ〜名脇役の森の100日間~」が放送され、このほど満を持して劇場版がお披露目となった。

――大杉さんは「『バイプレイヤーズ』を映画にしたい」とお話されていたそうです。皆さんのやり取りが楽しいのはもちろん、撮影現場への愛、そこに集う人への愛が込められた作品として完成しましたが、映画化が叶った感想を教えてください。

田口「やはり我々としては、漣さんを抜きにした『バイプレイヤーズ』は考えられなかったので、なかなか腰が上がりませんでした。我々にとっての『バイプレイヤーズ』は、終了したと思っていましたから。それを『バイプレイヤーズ』を立ち上げてくれたプロデューサーや松居(大悟)監督、スタッフなど、これまで関わってくれた人たちが時間をかけてこじ開けたというか(笑)。試行錯誤しながら、我々が参加できるようなアイデアをたくさん出してくれて、今回『これならできるのではないか』と感じさせてくれました。漣さんとは、撮影後によく『このメンバーで映画を撮れたらいいね』と話していたので、それが実現できたのは喜ばしいことだと思っています」

若手の役者たちが自主映画の撮影を始める [c]2021「映画 バイプレイヤーズ」製作委員会
若手の役者たちが自主映画の撮影を始める [c]2021「映画 バイプレイヤーズ」製作委員会

松重「発端は、下北沢で『6人の男たちフィルムズ オールナイト』という特集上映会(2002年開催)をやっていただいたことで、それが今日につながっているんです。小さな映画館から始まった集いで、その中心にいたのが大杉漣さん。その集いもテレビシリーズもすべて、大杉さんが育ててくれたと思っています。そのころから考えると、東宝さんのような大手で僕らの映画が作られるということは、クランクインするまでにわかに信じられないものがあって。映画が完成しても、大杉さんが作った土壌をいろいろな人が支えて、そのうえで作り上げられたものなんだなと思っています。僕はそこの一部に引っ付いているような感覚でおります」

光石「出来上がったものを観ると、やっぱりそこに大杉さんを感じることができます。本当に『バイプレイヤーズ』というのは、大杉さんあってこそできたもの。だからこうして映画が完成したことも、信じられない想いでおります。今日だって、こんなホテルでインタビューを受けているなんてね…。狐につままれているようで、ずっと疑心暗鬼になっています。これ、本当のこと?大丈夫かな、誰かが騙そうとしているんじゃないかな…なんて(笑)」

遠藤「あはは!俺もね、大杉さんなしで『バイプレイヤーズ』をやるなんて、絶対に無理だと思っていた。『嫌だ、そんなの参加したくない!』っていう気持ちだった。だけど4人で集まって、テレビドラマをやってみたら『行ける!』と思えた。このメンバーは、どんな場面でも、どんな状況でも“あうん”の呼吸で、やり取りができる。シーズン1から培ってきたものというのは、大きなものだったんだなと感じています。自画自賛するわけじゃないけれど、肩の力の抜けた4人が好き放題やるって、そうそうできることじゃない。作り上げる過程もすごく楽しかったし、完成した作品を観て改めて、感動しました」

「みんな、50歳を過ぎてからやり始めたことがよかった」

【写真を見る】スーツでキメた田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一がクールな撮り下ろし! 撮影/興梠真穂
【写真を見る】スーツでキメた田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一がクールな撮り下ろし! 撮影/興梠真穂

ーー『バイプレイヤーズ』の現場ならではの楽しさというものを、どのように感じていらっしゃいますか?

田口「今作はたくさんの俳優の方々が出演していますから、撮影現場で僕ら4人は“元祖バイプレイヤーズ”と呼ばれていたんです。元祖にとっては、漣さんがリーダー。だからこれまでと同じような形にはできないけれど、やっぱり4人で会うと、はしゃいじゃうんです。どれだけ時間が開いたとしても、これまで積み上げた安心感、ムードがある。メンバーが揃った瞬間、培ってきたものが再生するようで、ものすごく楽しかったですね」

松重「この作品の特殊性というのは、やはり実名でやっているということ。俳優でもなんでもない“個人”と“役”というものを、どういう塩梅で見せるかということが大事になります。お客さんもその境目を楽しみたいんだと思うし、僕らも“演技している”というものを見せるよりも、“これは芝居なの?本物なの?”というギリギリのところをやることが、僕らの究極の目的。その虚実を、お客さんにおもしろく見せたいと思っています。みんな普段から劇中で見せる関係性が出来上がっているし、その辺りの“虚実ないまぜ感”というのが、僕らもやっていてすごく楽しいんです」

光石「『バイプレイヤーズ』のメンバーはもともと6人なんですが、その6人がもっと若い時に、こうやって揃って作品をつくっていたら、いろいろなことがあったかもしれません。でもみんなが50歳を過ぎてから、やり始めたことがすごくよかったんじゃないかなと思っています。それぞれ邪魔をせず、節度を持って、品よく芝居ができているんじゃないかと、僕は勝手に思っています」

松重「トモロヲさんの下ネタも品がいいですか(笑)?」

田口「使えないけれど、品位を持った下ネタ!」

光石「そういったところも含めて、『バイプレイヤーズ』ならではなんじゃないかと思っています(笑)」

遠藤「バカ騒ぎをしているうちに、撮影が終わってしまったような気がしています。今回、僕はフィリピンに行っているという場面が多かったので、もっとみんなと同じシーンに出してもらえばよかったなと(笑)。4人のそのままの関係性で撮影に向かえるので、“なにかしよう”と気負うこともありません。日常会話のように、その場で思いついたやり取りをしているので、それができる、いい感じの仲間になれたなと思っています」

「俺たち、嵐と間違われているんじゃないかって(笑)」

映画作りに奮闘する役者たち [c]2021「映画 バイプレイヤーズ」製作委員会
映画作りに奮闘する役者たち [c]2021「映画 バイプレイヤーズ」製作委員会

ーー「おじさんたちがかわいい」と女性人気も獲得しました。その反応については、どのように感じていますか?

遠藤「シーズン2から衣装にこだわるようになったかも!みんなオシャレになっている(笑)。でもそんなに意識はしていなかったよね?」

光石「シーズン2は千葉の別荘にこもって撮影していましたからね。そんなふうに言われているなんて、全然知りませんでした」

松重「千葉の海に入ってタイトルバッグを撮影している時に、僕らがスーツ姿で海から上がってきたら、地元の方たちがキャーキャー言ってくださって。漣さん含めて、5人でしょ。だから『俺たち、嵐と間違えられているんじゃないかな』って光石さんに言ったら、光石さんは『俺はニノかな』って。その時、『ああ、意識するってこういうことなんだな』って思った(笑)」

光石「冗談で言ったんでしょう!」

松重「“かわいい”を、自分のなかに落とし込んでいるんですよ」

遠藤「劇場版に(有村)架純ちゃんが出ているでしょう?僕は父親のような感覚で、『架純ちゃん、かわいいよね』と言ったら、光石さんは『うん、まあタイプかな』って!気分はアイドルなんです」

光石「だから冗談だって!」

松重「“かわいい”は、光石さんが一番意識されています」

光石「してないよ!」

ーー“かわいい担当”が光石さんだとすると、それぞれ皆さんのご担当はなにになりますか?

松重「僕は世話係です。大杉さんの腹心です」

遠藤「俺は幼稚だからね。はしゃぎ担当!」

田口「“かわいい”と言われているなんて、まったく耳に入ってこなかった。意外ですね。街で女性から『バイブレーターズ観ています!』と声をかけていただいたことはあります。初対面だし、訂正するのもなんだし、『そうか、俺らはバイブレータなんだ!』と思ったことがあります(笑)」

「僕の原点は、漣さんがいた現場」

大杉漣から受け継ぎたいものとは? [c]2021「映画 バイプレイヤーズ」製作委員会
大杉漣から受け継ぎたいものとは? [c]2021「映画 バイプレイヤーズ」製作委員会

ーーとなると、田口さんは下ネタ担当ということで…(笑)。映画もそうですし、こうして皆さんのお話を伺っていると、やはりいまでも「バイプレイヤーズ」にとって大杉さんが欠かせない存在であることがひしひしと伝わります。大杉さんから受け継いだものとは、どのようなものだと感じていらっしゃいますでしょうか。

田口「漣さんには、それぞれでいいんだということを教えていただきました。漣さんは、僕にとってアングラ演劇の先輩でもあります。僕も転形劇場のころから漣さんを見ていますし、そのころから“100人いれば、100人の個性があっていい”という考えをする方だと思うんです。お互いに照れくさくてなかなか話すことはありませんでしたが、いまになってみると漣さんが示していたのは、そういうことなのかなと感じています。今回の映画を観ても、俳優の皆さんそれぞれ、ものすごく多様ですよね。“その人にしかない道”が見える気がしています」

にぎやかなバイプレウッド [c]2021「映画 バイプレイヤーズ」製作委員会
にぎやかなバイプレウッド [c]2021「映画 バイプレイヤーズ」製作委員会

松重「奇しくも今年、僕が映画デビューした黒沢清監督の作品(『地獄の警備員』)がリバイバル上映されまして。僕はそこで漣さんに出会ったんですが、現場で漣さんは本当に楽しそうにしていらっしゃいました。“映画って楽しいんだな”ということを伝えてくれて、僕はその答え合わせをずっとしているような気がしています。“楽しい”って、いろいろありますよね。辛い内容の作品でも、楽しいと思える現場はいくらでもあるわけですから。『バイプレイヤーズ』では常に漣さんのその空気に触れていましたが、“楽しいということはどういうことなんだろう”、“まだちょっとわからないぞ”とも思っていて。“漣さん、ちょっとまだわからないけれど、現場に行ってみますわ”という気分でいます。僕の原点は、漣さんがいた現場。そこから始まっています」

光石「大杉さんのようにキャプテンシーを持ってみんなを引っ張っていくということは、僕には到底できません。でも大杉さんって、隅のほうで一生懸命に作業をしているスタッフの方を見かけると、寄って行って『なにを作っているの?』と話しかけたりする方なんです。そういうところは僕もどんどん真似をしたい。大杉さんの“とにかく現場を楽しもう”という姿勢は、受け継いでいきたいですね。今回の映画も、その想いがすごく込められたものになったのかなと思っています」

遠藤「やっぱり僕も、漣さんの“楽しむ力”は受け継いでいきたいですね。『こうしよう、ああしよう』と話し合う時にも、漣さんがいる場は決して重くならないんです。“重くならず、真剣に”が、できる人。なかなかそれって、できそうでできないことだと思います。僕は落ち込んだり、前を向けなかったりと、いろいろと振り回されてしまうこともいまだにあるので、漣さんの“楽しんでものを作る”という姿勢は、ご一緒していちばん勉強になったことだし、生涯かけて目指したいところだと思っています」

取材・文/成田おり枝

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