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『珈琲いかがでしょう』第2話で描かれた“夢” 中村倫也が教えてくれる人生の“甘さ”と“苦味”

  • 2021.4.13
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『珈琲いかがでしょう』(c)「珈琲いかがでしょう」製作委員会

「面白いくらい全部パクリだね」

「でも、パクリでもこうやって形にできてることがすごいと思うんだけど」

中村倫也主演のドラマ『珈琲いかがでしょう』(テレビ東京系)第2話では、2杯の夢見る珈琲が描かれた。「キラキラ珈琲」と「だめになった珈琲」。「なにかしらになりたい」と突っ走る甘さも、「選ばれし者が持っているアレが自分にはなかった」と痛感する挫折という名の苦味も……実はおいしい人生を構成する必要なエッセンスなのだと、青山(中村倫也)は珈琲を通じて教えてくれる。

■「なにかしらになる」には「なにか」をしっかりしないと

青山の移動式珈琲店『タコ珈琲』は神出鬼没だ。追っ手から逃れるために、同じ場所には長居しないことにしているのだろうが、結果として青山の珈琲を求めている人のところに現れることになる。

「キラキラ珈琲」を求めていたのは、東京に憧れる女子高生・大門雅(山田杏奈)。トレードマークのピンクの髪が、のどかな田舎でひときわ目立つ存在だ。“きっと東京に行けば、テレビとかに出られる何者かになれるはず”。そんな夢を見ていたころ、青山が東京へ向かうことを知り、『タコ珈琲』トラックの中に潜り込むのだった。

無謀で、無知で、無計画な雅の行動。でも、そこには絶対にこの現状を変えたいという無垢な情熱がある。そんな雅の想いに応えるべく、青山はピンク色が入ったアレンジ珈琲“ロサ・メヒカーノ”を出す。可愛くて、ふわふわで、キラキラで……まさに雅が憧れる東京のイメージそのものな珈琲。

だが、雅は東京で大きな挫折を経験する。SNSで知り合った礼(臼田あさ美)を頼ったものの、徐々に礼の口からは若者の夢を摘むような発言が。「そんなに甘いところじゃないよ、東京は」と、雅を陥れる罠まで仕組まれていた。雅の父に頼まれた青山の機転によって、大きな危機を回避することができた雅。青山が作った“ロサ・メヒカーノ”が美味しかったのは、基本となる珈琲が美味しかったから。見た目のかわいさだけではなく、根本がしっかりしているからなのだと実感するのだった。

雅のいいところは、その挫折を礼のせいにするわけでもなく、東京を恨むのでもなく、自分の根っこがちゃんとしていなかったのだと思えたところ。そのまっすぐさこそ、雅の「なにか」となるに違いない。東京リベンジに燃える雅を見つめて、青山はそっと微笑むのだった。

■「苦味を知ったからこそ、描けるものもあるのでは?」

一方、2杯目の「だめになった珈琲」は、ほかでもない礼の物語だった。雅のように夢に向かって突き進んでいた時期があったこと。その時期に、精一杯背伸びをしてエスプレッソマシンを購入したこと。しかし、いつしか夢に向かう自分自身もエスプレッソマシンも動けなくなってしまったこと。

雅の忘れ物を取りに行っただけの青山に、礼は心の中のドロドロを吐き出すように語りかける。誰かに聞いてもらいたかった声を、抽出していく力が青山にはあるのかもしれない。夢見る若者たちの作品を見て「全部パクリだ」と言い放った礼の言葉は、そのままブーメランのように自分自身に突き刺さり、やがて絵筆を手にすることができなくなってしまった。

「学ぶ」と「真似る」は同じ語源だという説がある。私たちが言葉を話すことができるのも、真似するところから始まる。絵を描くのも、模写することから始まる。きっと、青山の珈琲も、最初は誰かの真似から始まったに違いない。そのリスペクトの先に、自分らしさを見つけていくことができるもの。

しかし、雅が実感したように、根っこの部分がしっかりしていないと、その上にリスペクトが積み上がっていかない。自分のものにならないというのは、その根っこがぐらついている証拠。

大事なのは、根っことなる自分自身をメンテナンスし続けることなのだろう。誰かに嫉妬心を抱いたり、自分に劣等感を持ったりするのは、避けられないものだ。まるで水道水に含まれるカルキが結晶化して、ボイラーに溜まってしまうのと同じように。

特に、夢を抱いたたくさんの人が集まる東京では、カルキとなる情報の濃度も高くなりがちだ。だから、エスプレッソマシンを清掃するように、自分の心の中に溜まっていくドロドロをうまく排出する方法も知らなくてはならない。青山に言われた通り、見様見真似でエスプレッソマシンを清掃していく礼。挫折し、傷ついた礼の心をケアする方法を学ぶように。きっとそれを知った礼ならば、再び夢を見ることができるはずだ。

雅と礼。夢を追いかける2人の女性を温めた物語が描かれるのと同時に「人殺し」というギョッとするような言葉が飛び出すのも、本作の魅力。三平(磯村勇斗)が、青山を執拗に追いかけてくる理由が、これから徐々に紐解かれていくのも大きな見どころ。物腰柔らかく人々を癒やしていく青山の姿も、そして“人を殺したことがある目”をした影のある青山の姿も楽しめる『珈琲いかがでしょう』。次回の珈琲も、じっくりと味わいたい。

(佐藤結衣)

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