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イギリスで話題! 女の子のエンパワー雑誌「クーキー」。

  • 2021.4.12
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文/坂本みゆき(在イギリスライター)

「クーキー」はイギリスとオーストラリアで年4回発行されている、プレティーン(日本では小学校中〜高学年)からの女の子のためのエンパワーマガジン。2018年には英国雑誌協会のエディターズアワードを受賞している。

現在発売中の最新号の目次を覗いてみれば「自分のビジネスを始めるにあたって知っておきたいこと」、「絵物語で綴る天才数学者の生涯」、「体験から語る難読症の暮らし」などの記事が並ぶ。さらにはお料理、クラフト、クイズやパズルまで。女の子たちを既存の型にはめずに可能性を信じた内容は、男の子だって、さらには大人だって楽しく読めそうな内容に仕上がっている。そんな画期的な雑誌を立ち上げ、イギリス版の編集長を務めているのはヴィヴ・ジョーンズだ。

「長年の海外生活を経て6歳と10歳の娘たちとともに2020年にイギリスに戻った時、娘世代にむけた多くの雑誌にがっかりしました。主にピンクで彩られていて、内容もビューティかショッピング、セレブリティばかり。彼女たちにふさわしいとは思えなかったのです」とヴィヴ。

またヴィヴはその頃、教室内でうまく発言できず、スポーツもあまり得意ではないと感じながら少女期を過ごした女性は、自分自身を否定しがちになり、自信を失ってしまうという人が多いという統計があることを知る。

「女の子たちはきっともっとできるはず。世の中にはたくさんの可能性と機会に満ちていて、アドベンチャーにあふれている。そして実際にそれらを経て生き生きと生きる女性たちがたくさんいる。そのことをもっと彼女たちに知ってもらいたいと思ったのです」

そんな想いを幼馴染で現在はオーストラリアに住むニッキー・ショートリッジと話しているうちに、ふたりとも編集者というキャリアを活かして2017年に『クーキー』を立ち上げたることに。ヴィヴがイギリス版を率いているのに対し、ニッキーがオーストラリア版の編集長を務める。

イギリス版とオーストラリア版の誌面は、一部を共有しながらも別々の記事で構成されている。どこか遠い異国の出来事ではなく読者たちが自分たちの将来の姿を投影できるようにと、インタビューページにはそれぞれの国で活躍する女性科学者や作家、芸術家らを毎回迎える。

そして手紙やメールを通しての読者たちの参加も誌面作りの大きな鍵となっている。「意見を言い合い、それを価値あるものとしてお互いを尊重するためのプラットフォームとしての位置付けも、「クーキー」の大切な役割です。彼女たちが自信を持つことに繋がっていきますから。私たちは読者たちにむかって常に、あなたたちの貢献はこの雑誌には欠かせないと伝え、何を考え感じているを発信して欲しいと語りかけています」。そんなヴィヴの言葉を受けて、ブックレビューやディベートのページには読者たちの生き生きとした感想や考えが並ぶ。彼女たちにとって、自分の考えが名前とともに印刷されて雑誌に載ることはきっととてもうれしいに違いない。

デジタルが幅を効かせる時代にあえて印刷メディアを選んだ理由は「私とニッキーが紙の書物が好きというのもありますが、プレティーンの雑誌のマーケットは紙媒体が強いというのもあります。彼女たちは誌面のパズルや塗り絵、ポスターなどが大好きなのです。そして電源がなくても、どこにでも手にとって読めるのも大きな利点ですね」。

「私もニッキーも、読者である少女たちには自分たちの望みを叶えて欲しい。そして、強くて、自信をもっていて、誰かに頼らなくてもいい独立した存在でありながらも、他人への思いやりにあふれた優しい人になってくれたらいいなと考えています」

読者からのリアクションはもちろんどれも心に残るものだけれども、特にうれしかったのは「クーキーが好きなのは、女の子はこうするべきではなく、女の子はこれができるということを教えてくれたから」という声だったという。

これまでの仕事のうちで「クーキー」は最もやりがいに満ちているとヴィヴ。「少女たちに力をあたえ、励まし、彼女たちの才能と大志を支える雑誌として、これからも必要とする子たちに届くことを願っています。そして将来はもっと広く、世界のあちこちの少女たちにも読んでもらえたら本当に素晴らしいと考えています」。

坂本みゆきMIYUKI SAKAMOTO東京生まれ。95年に渡英後、ブライトン大学院にてファッション史を学びながらファッション業界紙やファッション誌への寄稿を始める。現在は男性誌、女性誌、専門誌など多方面に渡ってイギリスに関する記事を執筆。好きな分野は英国文化と生活、アート、音楽、食べ物&飲み物。サセックス州在住。ティーンエイジャーの母。madame FIGARO.jpで「England's Dreaming」を連載中。

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