1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. 女子高生2人組の正体は「万引き商人」! ホストクラブで遊ぶカネ欲しさに……何食わぬ顔で盗みまくる!!

女子高生2人組の正体は「万引き商人」! ホストクラブで遊ぶカネ欲しさに……何食わぬ顔で盗みまくる!!

  • 2021.4.11
  • 1199 views
女子高生2人組の正体は「万引き商人」! ホストクラブで遊ぶカネ欲しさに……何食わぬ顔で盗みまくる!!の画像1
写真ACより

こんにちは、保安員の澄江です。

ここのところ、窃盗団による大量万引きが全国で頻発しています。ベトナム人の犯行ばかりがクローズアップされていますが、日本人の組織的窃盗団も多数潜在していて、悪質極まりないやり口で大量の高額商品が盗まれている状況です。正規買い取り店やネットオークションで盗品を処分するには、本人確認が必要となるため、一定の犯罪抑止力を有していると思われます。しかし近頃は、盗品を買い取る専門業者等の出現もあって、その処分は安易になってきたようです。

商品の買い取り相場は、業者の需要に合わせて変動するようで、オーダーを受けて犯行に及ぶ人まで存在します。こうした人たちは、この道のプロのようなもので、その捕捉は至難です。大量の高額商品を持ち出した3人組の男が、制止を振り切って車に乗り込み急発進させ、駐車場のゲートを吹き飛ばして逃走したこともありました。組織的な犯行は大胆になりがちで、声かけ時に身の危険を感じることが多く、逃走される可能性が高いのです。捕まらなければ、何をしてもいい。そんな理屈を押し通すような犯行を目の当たりにして、怒りに震えたことも数知れません。今回は、換金目的の万引き商人について、お話ししたいと思います。

当日の現場は、大型ショッピングモールE。まだ開店したばかりのショッピングモールですが、若い子に人気のあるアパレルショップやデザートショップなどが多数入っていることから、すでに地域の人気スポットになっています。今回は、アパレルショップにおける万引きが後を絶たないということで摘発の依頼をいただき、現場に入ることになりました。総合事務所まで挨拶に行くと保安関係の話がわかる方は誰もおらず、受付の女子社員から面倒くさそうに対応されたので、見返してやりたい気持ちで現場に入ります。

モール内の面積が広すぎるため、被害が多そうな店舗に目星をつけて、そこを中心に巡回することにしました。夕方になり、若い人たちの出入りが目立つようになると、ようやくに強い不審者が目に止まります。2階にある人気セレクトショップで、ある程度重量感のある大きなボストンバッグを肩にかけた10代後半くらいの女性2人組が、お揃いで色違いのショルダーバッグを一つずつ手にして、周囲の様子を窺っていたのです。2人の見た目は、タレントのみちょぱさんを意識したギャル系といった感じで、そこそこの不良感が漂っています。まもなくして、よくあるやり方でタグを除去した2人は、各々のボストンバッグにショルダーバッグを隠しました。

(この子たち、かなりの常習ね。ここは、慎重にいかないと)

ほほ笑みを交わし合い、少女たちは化粧品を隠した!

大胆な手口で高額品を狙っているので、相当な常習犯だと察した私は、絶対に姿を見られないところから2人の行動を監視します。すると、次にアクセサリーのコーナーに向かった2人は、あれやこれやと商品を手にとっては戻すという行為を繰り返して、そのどさくさに紛れて商品をボストンバッグに落とし入れました。周囲に店員の姿はあるものの、接客に追われていて、警戒している様子はありません。その後、またしても色違いでお揃いの靴を手に取ると、前回よりも手際よく防犯タグを除去して、それをそれぞれのボストンバッグに隠しました。続いて、お揃いのワンピースも同じようにしてボストンバッグに隠すと、何食わぬ顔でセレクトショップを出ていきます。

そのまま1階に降りた2人は、化粧品売場に入って、スマホを見ながら商品を探し始めました。それなりに経験のあるコンビなのでしょう。お目当ての化粧品を見つけるたび、目を見合わせてほほ笑みを交わし合い、それを合図に商品を隠匿しています。結局、乳液や化粧水、つけまつげなど、複数の商品をボストンバッグに隠して売場をあとにした2人は、なに一つ買うことなく売場を出ました。目的を果たせてうれしいのか、楽しそうにじゃれ合いながら、出口に向かって歩いていきます。その様が、どこか大袈裟にみえて、自分のやましい気持ちをごまかしているように見えました。

「あなたたち、ちょっと待って。バッグの中に隠した商品のお金、ちゃんと払わないと」

店の外に出たところで呼び止めると、逃げることなく立ち尽くした2人は、呆然と顔を見合わせています。

「そのバッグに、たくさん入れていたよね? 悪いことだって、わかるでしょ?」
「はい、わかります。ごめんなさい。全部返します」

項垂れる2人を事務所まで連行して、ボストンバッグに隠した商品を出させると、計24点、合計で9万円相当の商品が出てきました。現認の取れていないコミックやスマホケースなども出てきて、どうやら同じモール内の店舗をハシゴして回っていたようです。

「これは、全部自分たちで使うつもりで?」
「…………(泣)」

身分確認などを求めても、泣きじゃくるばかりで話になりません。立場上、深く問い詰めることはできないので、モールの施設長を呼び出して判断を仰ぎます。すると、相手をするだけ時間の無駄だと吐き捨てた細身の施設長は、すぐに警察を呼んで出て行きました。どうやら、万引き犯に嫌悪感を持たれている方のようで、全てが事務的に進められる雰囲気です。

彼女たちは高校2年生、ボストンバッグの中から「注文書」が……

「こんなにたくさん、初めてじゃできないよね。あんたたち、いつもやっているでしょう」

現場に到着した女性刑事が、2人の前に並ぶ盗品群を見て、開口一番に言いました。その問いかけにも答えることなく、ただひたすらに泣き続ける2人でしたが、警察官による所持品検査の結果、同じ高校に通う高校2年生と判明。ボストンバッグの中からは、盗んだ商品と同一の商品名が記されたメモの切れ端も、複数枚出てきました。商品名のほかに、あだ名のような名前も書かれており、その1枚1枚が、まるで違う字体で書かれています。その意味を女性刑事が問い詰めると、ようやくに観念したのか、一人の女の子が言いました。

「友達に欲しいものを聞いてから盗って、安く売っていました」

どうやら発見されたメモは、注文書の役割を果たしていたようで、商品のパッケージをスマホで確認しながら盗っていたとのことでした。注文書のないものは、自分たちのために盗ったそうで、テーブルに広げられたワンピースのほか、お揃いの靴やショルダーバッグが、それにあたるようです。

「被害者は施設でなく店舗なので、各店の店長に被害申告の意思を確認したい」

女性刑事の依頼を受けて、出勤時に顔を合わせた女性社員に連絡を頼むと、返事もしないまま店内放送を始めました。どうやら、こういう人のようです。

「買い取れないなら被害届は出しますけど、忙しいので警察署に行くことはできません。全部お任せしているので、保安員さんとやってもらえますか?」

被害者は会社。そんな意識が強いのでしょう。自分の店の被害であるのに、まるで感情を見せない店長たちは、全ての処理を私に押し付けて売場に戻ってしまいました。苦労して捕まえたのに、誰にも喜んでもらえないことが空しく、一人で踊るような気持ちになったことは言うまでもないでしょう。

商品の買い取りが叶えば、警察署に行く必要はありませんが、2人の所持金はわずかで保護者との連絡も取れません。やむなく警察署に行き、事件処理を進めていると、私を担当する初老の男性刑事が言いました。

「あの子たち、『あそこは楽勝だから、行くたびに万引きしていた』って話しているよ。これで稼いだお金で、クラブやホストクラブに行って、遊んでいたんだって」
「あんなに若い子が、ホストクラブに? 私なんか、行ったこともないですけど」
「インスタとかもそうだろうけど、最近の子は、みんなチヤホヤされたいみたいだよね。自分さえよければ、罪を犯すことも厭わないような子が増えている感じがするよ」
「そういえば、あの子たち、すごく楽しそうに盗んでいました。万引きなんて、やろうと思えば簡単にできちゃうから、お店側もさせないように気をつけないと減らないですよね」

万引きは、回数を重ねるごとに罪悪感は希薄となり、より高額で大量の商品を頻繁に盗むようになります。商店の大型化が進み、犯行も容易くなった結果、そこに巣食う常習者の不当利得は増すばかり。商店の防犯意識を変えなければ、その被害が減ることはないでしょう。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)

澄江(すみえ)
万引きGメン(保安員)歴40年以上。スーパーで品出しのパートをしている時に、万引き犯を捕まえたことがきっかけで、この世界に。現在も週5日は現場に立っている。

元記事で読む
の記事をもっとみる