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小説家・松田青子のマイパートナーは“キングジムのデジタルメモ”|長く一緒に過ごすもの vol.3

  • 2021.4.9
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センスのいい6人に長年愛用しているアイテムについて尋ねると、それぞれの思いがこもった話が返ってきた。料理、創作活動、お出かけ…。日常に欠かせない大切な相棒について聞きました。今回は小説家の松田青子さんのストーリーを紹介。

キングジムのデジタルメモ

松田青子(小説家)

三島由紀夫賞や野間文芸新人賞の候補にもなったデビュー作の 『スタッキング可能』から、最新作『持続可能な魂の利用』まで 松田青子さんの小説には、現代社会の理不尽や違和感と同時にそこから抜け出そうとする人々を支え励ます言葉が描かれている。多くのファンを持つその作品は、どんなツールで紡がれるのだろう?

「信頼する人の記事やレビューをくまなく読み、これは試してみたいと思い、実際に買って、本気で使える!と思いました」

と松田さんが語るのは、〈キングジム〉のデジタルメモ〈ポメラ〉の話。パソコンではなく、文字入力機能に特化したテキスト専用ガジェットで、愛用しているのは2016年発売の〈DM200〉。カフェや喫茶店で執筆することが多く、もっぱらコレをバッグに入れて外出する。購入した理由のひとつはその軽さ。ノートブックでもそこそこ重いパソコンを持ち歩くしんどさに比べ、580gと各段に軽量でコンパクトなのだ。

「もうひとつは文字変換機能ですね。実はだいぶ前にもポメラの初期ヴァージョンを使ってみたのですが変換がいまひとつで。それがDM200は機能が著しく向上したという噂を聞いて調べたところ、確かにめちゃくちゃ良さそうだった。作家さんに使っている人が多かったのも決め手でした」

使い始めてから、小説もエッセイも書くのが明らかに早くなった。

「とにかく集中できるんです。パソコンのデスクトップのように余計なものが視界に入らず、気が散らないし目も疲れない。ネット機能がないから、メールチェックしたり動画を見ちゃったりということもなく、バッテリーも長く持つ。いつの間にかこんなに書いていた……という感じです。普段使っているいろんな機能が常に必要なわけではないとわかりました」

シンプルで使いやすいものが好き。松田さんの考える使いやすさとは、ストレスがなく気が散らないこと。よく考えられていて最適化された状態のものが好ましい。

「たとえばポメラの、電源を入れると一瞬で起動する機能や、アプリやツールがポップアップしたりしない仕様。小さなことですけど、ノイズがないって大切だなと思ったし、気軽に使えることがこんなに快適なんだとも気づきました。もしかしたら私は、パソコンの画面や文字に向かう時、仰々しい気持ちになってしまっていたのかもしれない。頭の中で考えていた時は物語がシンプルに進んでたのに、画面を前にすると急に気づまりになる、みたいなことが前に比べて少なくなった気がします」

人とモノの関係は面白い。人に会わなくてもモノは使う。時には人よりも人に近いのがモノだという意識もある、と松田さん。

「林檎ひとつ買うだけで気が晴れる日があるように、世の中、モノに救われている人や買う行為に癒やされている人は多いと思うんです。モノはそこにあるだけじゃなく、人によって物語化されたり意味をもったりする。私もポメラがここまで大きな存在になるとは思っていなかった。不思議です」

GINZA2021年1月号掲載

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