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トモ コイズミが語る、アートとファッション

  • 2021.4.9
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〈エミリオ・プッチ〉がトモ コイズミとコラボレーションしたカプセルコレクションの特別展示会が3月27日(土)~29日(月)「BA-TSU ART GALLERY」で開催された。コレクションと共に、3人の日本人アーティストによる作品も展示。トモ コイズミに開催の経緯、アートとファッションの関係性、自身の今後について会場で話を聞いた。

―カプセルコレクションはエミリオ・プッチのアーカイブである「ヴェトラーテ」というプリントが着想源になっているのですよね。

「ヴェトラーテ」を3Dにした、という感じです。白いピースでは、裏地にこのプリントを用いています。60年代のアーカイブなのですが、ソフトな印象がして自分が作る服にマッチすると思ったんです。70年代になると黒が入ってきたりしてサイケっぽい感じになるんですよね。

―製品はエミリオ・プッチが生産したのですか?

サンプルは日本で自分のチームで作ったのですが、製品の生産はプッチのチームが進めてくれました。作り方のノウハウをシェアしてサンプルを配送し、オンラインでやりとりする、という感じです。イタリアは手仕事が得意なお国柄だからか、すんなり理解してもらえました。日本では自分がアシスタントに直接教えてやってもらっていたのでちょっと不安があったのですが、全然問題なかったです。

―生地はどうされたのですか?

僕がいつも使っている日本製の生地を買ってもらいました。サテンや裏地用の生地を試してみたりしたのですが、愛用しているオーガンジーが一番ボリュームが出しやすく、弾力もあるし、軽くて強い。それに、つねに190色前後もストックがあるんです。今回大量購入したので生地屋さんに感謝されました(笑)。

―なぜアートと共にコレクションを展示することになったのでしょうか。

昨年9月にミラノでカプセルコレクションを発表した時は、台座にトルソーを置いて彫刻のように見せました。その流れを汲んでアートとコラボレーションをしようということになったんです。コロナ禍で海外に行けないこともあり、ローカルなものにもっと目を向けるチャンスかなと思い、親和性を感じる日本人のアーティストにお声かけしました。コレクションの展示がメインではあるのですが、アートに助けてもらっている感じがします。より力強いものにしていただいています。

―大和美緒さんの作品は単純な動作の繰り返しから成り立っていますが、フリルを縫い合わせていくトモさんの服づくりの手法とも通じるものがありますね。

僕も単純作業は好きなので、Netflixとかを見ながら一日中延々フリルを作っているのが癒しになるんですよね(笑)。楽しくて。美緒さんには阪急百貨店うめだ本店のエミリオ・プッチのショップにも作品を展示していただき、トークショーでもご一緒しました。作品を一目見た時から僕と同じように自然崇拝的な感覚を持っているのでは、と思ったんです。作品は山の稜線のようでも、おばあちゃんのしわをすごくクローズアップしたもののようでもある。引き込まれてしまいますよね。

大和美緒
1990 年に滋賀県生まれ、2015 年に京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)大学院修士課程を修了し、現在は京都を拠点に活動。点を何度も描いたり、ペンで一本一本引いた線から構成される”repetition”シリーズ、自身の血液細胞の営みを画面や空間に再構成する under my skin シリーズなどを主軸に、ペインティングやインスタレーション作品を制作する美術家。木が自然の摂理に従って徐々に年輪を築いていくように、崇高な自然の摂理やシステムを、身体を介して可視化する事を試みている。

―大井戸猩猩さんの絵画作品も、細かい作業の積み重ねですね。

切り絵とか、ちぎり絵みたいな懐かしい感じがしますよね。どのタイミングで終わり、と決断するんだろう、と思います。僕ももうちょっといけるかな、と進めていって、結果かなり大きくなっちゃった、ということはありますけど(笑)。

大井戸猩猩
1984 年に大阪で生まれ、現在は奈良在住。2014 年に京都の FOIL Gallery、2015 年に大阪のエッセンシャルストアにて個展を開催。2018 年に東京「小石川の住宅」にて作品を展示。2020 年には、東京の Blum&Poe にて濱名一憲氏と 2 人展を開催した。

―彫刻家・矢崎良祐さんの木彫は他のお2人とは違って規則性にとらわれず、抽象的な造形です。

木彫りは木目や元々の形を無視してはできないものだと思います。僕も、世間一般にありふれている素材を使ってどうやって面白いものを作るか、ということに挑戦してきたタイプなので、素材との対話という点で共感したんです。

矢崎良祐
1965 年に東京で生まれ、彫刻の名手として国内外で活躍。彼の祖父はブランクーシとジャコメッティと同時代の著名な彫刻家、矢崎虎夫氏である。日本大学で芸術を学んだ後、英国に渡りでさらに教育を受ける。彼の作品は粘土、テラコッタ、木の素材を使い分け、マリーゴールドやコバルトなどの大胆な色彩で表現。ミッドセンチュリーのデザインを彷彿とさせる神秘的な要素のある造形や、キュビズム的な抽象的な造形が特徴。

―アーティストの方たちとのやりとりで刺激を受けたことはありますか?

ファッションの世界では服を言葉で説明できなくてはならず、意味を求められるところがありますが、アーティストの方たちの話を聞くと、「ただ手が動くから」とか、「日々やっていないと気が休まらないから」とか、自分のための活動だということがわかります。そうしてできた作品に具体的な使用用途がなくても、美しいから必要とされる。自分にとっては憧れの域ですが、そこがファッションとアートの境界でもあるのかもしれません。

―ご自身のブランドの服は量産をしていない一点物なのでアートに近い存在ではありますよね。

アート的な見え方もしてほしいとは思っています。一方で学生時代からずっと衣装の仕事をしているので、エンターテインメントとして人を楽しませたい、という気持ちが根底にある。10代の頃にファッションショーを見て受けた衝撃とわくわく感を追い求めているところも。だから、ファッションとアートとエンターテインメントの要素をちょっとずつ汲んだものを作っているのかな、と思います。皆、服を着るし、インテリアなどもそうかもしれませんが、ファッションはより身近なアートになりうるのでは。僕自身がオルタネイティブな活動の見本になれたらとは思っていますが、アートとファッションの境界が薄まるようなものを作っていく人がもっと増えたらいいな、とも期待していて。最近若手デザイナーの支援も始めたんです。

―それはどのような活動なのですか?

昨年10月に合同展示会イベント「ルームス」で「SPOT LIGHTS by TOMO KOIZUMI」というプロジェクトをスタートしました。合格者は「ルームス」で作品を展示し、僕がサポートを続けています。僕は国内外のスタイリストやメディアの人とつながっているから、その人脈を生かして日本の面白い人を紹介して、自分が得られたパワーやチャンスをお返ししたいんです。ただ「自分にショーをさせてくれてありがとう」、「有名になるチャンスを得られた、ラッキー」だけじゃなくて、循環するしくみや流れができたらいいかなと。服の写真をメールで送ったりSNSで紹介したり、そういうことからでもいい。教育方面にもゆくゆくはちょっと入っていきたいなと考えています。5年後10年後に「日本のファッションってつまらないよね」って言っていたくないんです。だから今種まきをしておきたい。現役を退いてからではなく、今実際に感じていること、経験したこと、サバイブのスキルみたいなものをシェアできたらすごく意味があるな、と。かと言ってあまり気負うことなく、気楽に、身軽にやるつもりですが(笑)。

―成功に奢ることなく、次につなげていこうとされているとはすばらしいです!最後に、次のコレクションの発表について、何かお考えのことがあれば教えてください。

愛用しているオーガンジーの生地屋さんは「サンコロナ小田」というところなのですが、今、100%ペットボトルリサイクルのポリエステルの糸でオーガンジーを作っていて、それを使うことを考えています。ファッションウィーク以外で、東京ではない場所で6月にショーを開催する予定です。トレンドはあまり意識せず、1年に1回、自分のタイミングで発表しているのですが、シーズン関係なくリース依頼が来ることは自信になっていますね。こうしたシーズンレスの感覚がもっと広がったらいいなと思います。

―今後もフリルのテクニックは貫いていかれるのでしょうか?

何でもかんでも作れるデザイナーじゃない、というのは自分でもわかっているので、得意なところをこつこつとやって見てくれる人を楽しませられたらいいな、と思っています。シグネチャーを大切に育てていきたいですね。

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