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デリカシー皆無男は、産後の私に「ベイマックスみたい」と言った

  • 2021.4.9
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産後の腹直筋離開でぽっこりお腹になった私を「ベイマックスみたいだな」と笑った兄は、叫び声を上げて悔し涙を流す私を見て激しく動揺していた。

兄にとって私は、可愛くて大切な妹らしい。私が産まれる前から、妊娠中の母に抱きついては「僕の可愛い妹ちゃん早く会いたいよ」とお腹に向かって声をかけ、保育園の先生には「もうすぐ僕はお兄ちゃんになるから、妹を世界中の敵から守るんだ」と毎日何度も言っていた。

勇気を振り絞って「お兄ちゃんはデリカシーがないと思う」と伝えた

そのエピソードを母から聞く限りは実に優しくて素晴らしい兄のようだけど、私の印象は全く違う。

幼い頃からスカートを履くと必ず「ゾウの足」と言い、思春期にニキビで悩んでいた頃には「汚い肌だな」と笑い、生理痛で寝込んでいると「女はずるいな。俺も休みたいわ」と悪態をついていた。ずっと兄は私を嫌っているから悪口を言っているのだと思い、毎度深く傷ついていた。

しかし、年齢を重ねて昔のエピソードや家以外での兄の私に対する言動を知るうちに、「兄は私が嫌いなのではなく、致命的にデリカシーがないだけ」だと気づいた。

同時に、それは私に対してだけでなく、会社の同僚や友人や彼女など周りの人達に対しても同様であることにも気づいた。そのことで兄の周囲は傷つき、そして兄はだいぶ損をしていた。

デリカシーの無さから悪気なく周りを傷つけ、周りから人が去ってしまう。寂しさから残りの人に深く関わろうとして余計に傷つけて、さらに人が去ってしまう。なんという不幸。

一度だけ、勇気を振り絞って「お兄ちゃんはデリカシーがないと思う」と伝えたことがある。

返事は「俺は思ったことを正直に言っているだけだから、悪くない」だった。
何も言い返せなかった。

「すごい腹。ベイマックスみたいだな。完全に女捨てたって感じ。旦那が可哀想」

兄が結婚を決め実家から出ると知った時、真っ先に思ったのは「結婚相手はこのデリカシー皆無男に耐えられるだろうか」だった。兄の幼なじみが結婚相手だと分かり、それなら今までもずっと耐えてきただろうから大丈夫かと胸を撫で下ろした。

兄が実家を出てから私と兄の関わりは減り、私も結婚して実家を出たらほとんど関わることがなくなった。だから、完全に油断していた。

昨今の流行病を考慮して里帰り出産を中止した私は、産後に実家へテレビ電話を繋いで両親に孫をお披露目することにした。

主役である娘に真っ白なベビードレスを着せて、自分はすっぴんでボロボロの部屋着のままテレビ電話を繋いだら、両親だけでなく兄まで画面にあらわれた。

孫にデレデレの両親の横で兄は、
「すごい腹。ベイマックスみたいだな。完全に女捨てたって感じ。旦那が可哀想」
と言ってへらへら笑っていた。

あまりの衝撃に呆然として、気づけば叫び声を上げて泣き出していた。スマホ画面に夢中だった娘もつられて泣き出してしまった。

焦る両親の横で、驚くべきことに兄が一番動揺して困った顔をしていた。
なぜ加害者が被害者面してるのか。

「思ったことを正直に言っているだけだから悪くない」という理屈は、間違っている

どうしたらいいか分からず、焦って「娘の離乳食の時間だから」とテレビ電話を切った。夜に両親から「今日はごめんね。お兄ちゃんに悪気はなかったのよ。だから許してね」とLINEがきた。

知ってる。
知ってるけど、それはないだろう。
悪気がなければ何をしてもいいなんてわけはない。
デリカシーがないなら、その自覚を持って最大限努力をして改めなければならない。

どんなに心の中で相手を愛していても、口から刃物を投げているようではいつか兄の周りには誰も居なくなる。それは兄が一番可哀想だ。思ったことを正直に言っているだけだから悪くないという理屈は、間違っている。

心の中で何を思おうが自由だけど、その思いは口なり行動なり一度心の外へ出した瞬間から責任が伴う。心の中の自由と、心の外の責任が、ごちゃ混ぜになっている人には、きちんと分けて考えるよう教えるべきである。

私の両親は、兄の悪気のなさにフォーカスして周囲に頭を下げて許しを乞うてきた。兄もその両親に甘えてきた。その結果が、ベイマックスだ。

この世の全てを改めることは出来ないから、まずは我が家から変わっていこう

兄には2歳の息子がいる。好奇心旺盛でとても可愛い甥だ。私の娘にとっては、たった一人の大切な従兄弟だ。兄の考えのままにその子が育ってしまったら、不幸な人間が増えてしまう。

未来への希望が詰まった子ども達には、誰も傷つけない、誰も傷つかない、平和な世界でのびのびと自由に羽ばたいてほしい。
その為にも、私達家族は変わるべきだろう。

兄の問題は、兄だけの問題ではない。
両親は、甘やかさずに兄へ自由と責任を教える。
私は、ただ泣いてばかりではなくきちんと自分の思いを言葉に出す。
そして兄は、デリカシー皆無男から脱却する。

デリカシー皆無男が、周りが伝えないことで暴走する例は、我が家に限ったことではないだろう。この世の全てを改めることは出来ないから、まずは我が家から変わっていこう。
未来の子ども達の為に
いま、変わろう。

■柚はちみつのプロフィール
エッセイを読むのも書くのも大好きでエッセイに溺れたい会社員。一児の母。

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