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ベルリンの壁の跡地が桜色に!

  • 2021.4.8
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写真・文/河内秀子(在ベルリンライター)

3月末にはサマータイムも始まり、春めいてきたベルリン。ドイツの春といえば、とろけるような白アスパラガスなどの食べ物も思いつくけれど、「ベルリンの春の風物詩」というなら、桜だろう。ベルリンの壁の跡地に沿って立つ桜の並木。実はこの桜、日本から贈られた平和の象徴なのである。

1961年から1989年まで、東ドイツの中の飛び地であった西ベルリンを囲むように、155kmもの長さに続いていたベルリンの壁。国境にそびえ立つ壁は東ドイツ国民の前に立ちはだかって西側への往来を阻む、「死のライン」とも呼ばれる分断と冷戦のシンボルだった。1989年11月9日に国境が開いたことでベルリンの壁が崩壊し、1990年10月3日に東西ドイツが再度統一を果たすと、歓喜に湧くドイツに世界中からお祝いのメッセージが寄せられた。その際、日本のテレビ朝日が素敵なアイデアを思いつく。ベルリンに桜を寄贈し、壁の跡地に植えてもらおうというキャンペーンだ。

あっというまに日本から募金が集まり、1990年11月10日には植樹が始まった。いちばん最初に植樹が始まったのは、グリーニッケ橋。スティーヴン・スピルバーグ監督の映画『ブリッジ・オブ・スパイ』の舞台となった橋、といえばピンとくる方もいるかもしれない。冷戦時代は西ベルリン(アメリカ)と東ドイツ(ソ連)の国境であった橋は、米ソのスパイを交換する場所として使われていた。そのたもとに、見事に枝を広げる美しい大山桜の木が植えられたのだ。その後もテレビ朝日の活動により20年にわたって約20,000人の日本人からの募金で寄贈された9000本以上もの桜がベルリンの壁跡地に植樹されていった。

桜の種類もさまざまで、まるでピンク色の雲のように、悲しい歴史を刻む場所の上を包み込む八重桜の並木や、ベルリンの壁が崩壊した11月頃に咲く桜が欲しいというベルリン側からの難題を叶えるために、秋から冬にかけて咲く十月桜が植えられた場所もある。数は少ないが、ソメイヨシノや八重紅枝垂れ桜が見られるところも。木の管理はベルリン市や区の緑地課が担当して、末長く花を咲かせるように維持しようと尽力しているという。

そうやって、日本とドイツの交流から花を咲かせた美しい桜。約4kmも続く桜並木の下では、2002年からHANAMIフェスティバルが開催され、大変な賑わいを見せる。ベルリン観光局は「春のベルリン地図」として、桜の名所をまとめたマップを提供しているほど。いまや日本の桜は、春の訪れを告げる存在としてベルリンの街に欠かせない存在となっているのだ。

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