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竹中直人、山田孝之、齊藤工が語り合う、3人で監督して叶えた夢「人生捨てたもんじゃないぜ!」

  • 2021.4.6
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竹中直人監督、山田孝之監督、齊藤工監督が、カルトな人気を誇る漫画家、大橋裕之の初期作集「ゾッキA」「ゾッキB」を、3人で共同制作した映画『ゾッキ』(公開中)。オムニバスではなく、1本の映画をパートごとに分けて監督するというユニークなスタイルを取った本作について、3人の監督に制作秘話を聞いた。

【写真を見る】『ゾッキ』監督を務めた竹中直人&山田孝之&齊藤工、渋すぎる撮り下ろしショット

竹中監督は、ある少年と父親(竹原ピストル)との奇妙な思い出を振り返るという奇想天外なパートを、山田監督は、ママチャリでただ南を目指していく青年(松田龍平)と旅先での出会いを、齊藤監督はある高校生(森優作)が「自分に姉がいる」という嘘を友人(九条ジョー)についたことから始まる友情の物語を紡ぎ上げた。脚本を手掛けたのは劇作家の倉持裕で、これら3つのエピソードをそれぞれ伏線にして、非常に重層的なドラマにまとめあげた。

豪華キャストが共演した『ゾッキ』 [c]2020「ゾッキ」製作委員会
豪華キャストが共演した『ゾッキ』 [c]2020「ゾッキ」製作委員会

3人の監督の下、吉岡里帆、鈴木福、満島真之介、石坂浩二、國村隼ら多彩なキャストが集結し、Charaが音楽監督を務めた本作。ロケは大橋の生まれ故郷である愛知県蒲郡市で敢行された。

「孝之と工がOKしてくれないかぎり、映画化は絶対に無理だった」(竹中)

大橋裕之の原作を読み、本プロジェクトを始動させた竹中直人監督 撮影/興梠真穂
大橋裕之の原作を読み、本プロジェクトを始動させた竹中直人監督 撮影/興梠真穂

――まずは竹中さんに、山田さんと齊藤さんと共作されることになった経緯についてお聞きしたいです。

竹中「大橋さんの『ゾッキ』に出会い、とても感動したんです。ショートストーリーなので、初めはオムニバス映画として企画を考えました。2人には『役者3人が監督するオムニバス映画に参加してくれないかとお願いしました。すでに脚本は倉持さん、音楽はCharaにお願いしていて、大橋さんの世界をみんなで作ろうという思いでしたね」

山田「僕も原作を読んで、めちゃくちゃすてきな話だと思い、これは絶対に映像化したほうがいいと思ったのですが、僕自身は長編映画の監督経験がなく、自分は監督に向いていないと思ったので、監督ではなくプロデューサーとして皆さんを支える立場で参加したいとお伝えしました。でも、竹中さんが熱い感じで『いや、監督で』とおっしゃられたので、せっかくだから挑戦してみることにしました」

齊藤「僕は、竹中さんからお声掛けいただいた時の場所が印象的でした。Charaさん、安藤政信さん、倉持さん、山田さんたちがいた場所がまるで秘密基地のようで、僕はいま、すごい船の切符をもらったんだなと、非常に好奇心をそそられました。また、大橋さんとは共演経験があり、僕自身が大橋作品のファンでもあったので、理屈抜きで参加したいと思いました」

――監督筆頭である船長の竹中さんの存在も大きかったのでは?

山田「もちろんそうです。声をかけてくださったこと自体がうれしくて」

竹中「今回は孝之と工がOKしてくれないかぎり、映画化は考えられなかった。引き受けてくれた2人には心から感謝しています」

「監督でプロデューサーというより、プロデューサーで一部監督、という割合で参加しました」(山田)

プロデューサーも兼任した山田孝之監督 撮影/興梠真穂
プロデューサーも兼任した山田孝之監督 撮影/興梠真穂

――山田さんは、本作のプロデューサーも兼任されていますね。

山田「はい。自分が撮るパート以外の撮影日もプロデューサーとして入り、現場でお手伝いをさせてもらいました。僕は長編初監督だったので、勉強もさせてもらいたかったし、途中で伊藤(主税)プロデューサーと営業に行ったりもしました」

竹中「孝之は撮影後の機材撤収も最後まで手伝ってくれました。プロデューサーとして、静かに現場を見守ってくれている感じでしたね」

齊藤「確かにそうでした」

それぞれの立場から作品を支えた3監督 [c]2020「ゾッキ」製作委員会
それぞれの立場から作品を支えた3監督 [c]2020「ゾッキ」製作委員会

――齊藤さんはいかがでしたか?

齊藤「3人とも生業が俳優の監督で、それぞれがいかにしてクリエイティブの持ち味を発揮していくかというプロジェクトだったから、そのバランスでの心地良さを感じつつも、自分は作品に対してどう貢献できるんだろうとも考えました。それで僕はドローンを持ち出して、撮影したりもしましたが、なによりもお2人の本作への関わり方が、一監督のあり方を遥かに凌駕していたので、準備段階からすごく心強かったです」

山田「僕はどちらかというと、監督でプロデューサー兼任というよりは、プロデューサーで監督も一部します、という割合での参加でした。伊藤プロデューサーと一緒に地域と連携してやっていくなかで、齊藤監督から『託児所を用意できないでしょうか?』という提案をいただきました。確かに小さいお子さんがいるスタッフやキャストもいらっしゃるし、日本はそういう点で遅れを取っていると思っていたのですが、齊藤監督のおかげで、実際に行動に移せたんです」

「2人のパートは本当にすばらしい」(竹中)

――ご自身が撮った以外のパートで、特に印象に残った点をそれぞれ教えてください。

竹中「2人のパートは本当にすばらしいなと思いました。山田組は、(松田)龍平のたたずまいが最高でした。龍平がなにもせずに立っている。ただ、そこにいる…。それが出来るのは監督との信頼関係です。素晴らしいことです。齊藤組は、壮大な大河ドラマみたいなストーリーをよくぞ撮った!!という思いです」

ママチャリでただ南を目指していく青年(松田龍平) [c]2020「ゾッキ」製作委員会
ママチャリでただ南を目指していく青年(松田龍平) [c]2020「ゾッキ」製作委員会

山田「確かに壮大ですよね」

――齊藤さんのパートでは、現実にいない親友のお姉さんを妄想し、恋焦がれていく伴くん(九条)の暴走ぶりがすさまじかったのですが、その後の展開に感動しました。

竹中「あのねじ曲がった純愛物語を選んだこと、それがすごいです。時代もまたぐ、スケールが大きすぎて予算もかかりそうだし無理なんじゃないか…とも思ったんです。ぼくは気が小さいから(笑)」

――確かに『ゾッキ』は、潤沢な予算がある拡大公開系の映画とは違いますね。

竹中「映画作りは常にその予算に応じて、諦めなければいけない事もたくさんある。でも伴くんを監督するのは工だし、『ゾッキ』のプロデューサーは孝之だし、そんな心配は孝之に任せれば大丈夫だって思いました」

山田「いやいや、僕は単なるサポートで。プロデューサーとしては、なるべく監督が思ったものを作れるように、頑張ってお金を集めるだけの話なので。でも、原作からどのエピソードを入れるかと考えた時、やはり伴くんのエピソードは絶対にあったほうがいいと思いました」

――伴くん役に、お笑いコンビ「コウテイ」の九条ジョーさんを起用されたのは、まさにキャスティングの妙だったかと。しかも九条さんは演技初挑戦でした。

高校2年生の牧田(森優作)は、初めてできた友だちの伴くん(九条ジョー)に、自分に姉がいるという小さな嘘をつく [c]2020「ゾッキ」製作委員会
高校2年生の牧田(森優作)は、初めてできた友だちの伴くん(九条ジョー)に、自分に姉がいるという小さな嘘をつく [c]2020「ゾッキ」製作委員会

齊藤「伴くんのキャスティングは難航し、いろんな方が候補に上がりました。ただしっかりした台本と実力派キャストの全体像が見えてきたので、伴くん役は自由度が高いとも思ったんです。それでたまたま番宣の番組で、コントをしている九条さんを見た時、そのたたずまいがすごく気になり、伴くん役をオファーすることにしました」

竹中「伴くんにとてもよく似ていたものね。あの壮大なエピソードを見事に完成させた齋藤監督の手腕に圧倒されました」

山田「伴くんのパートは僕には絶対に撮れなかったけど、齊藤監督はすごく人の心と向き合う人だから撮れた気がします。実にエモーショナルでした」

「竹中さんは、監督というポジションがなにをすべきかをよくわかってらっしゃる」(齊藤)

竹中監督、山田監督への信頼感を語った齊藤工監督 撮影/興梠真穂
竹中監督、山田監督への信頼感を語った齊藤工監督 撮影/興梠真穂

――齊藤さんから見た竹中組と山田組の印象はいかがでしたか?

齊藤「いっぱいいいシーンがありますが、竹中組だと、アドリブやその場で起きたハプニングを、臨機応変に取り入れていく点がさすがだなと思いました。現場で迷っている竹中さんなんて見たことがないし、指示がすごく明確で、撮るのも早い。きっとご自身の経験から、監督というポジションがなにをすべきかをよくわかってらっしゃるんだなと感心しました。

また、山田組はピエール瀧さんのシーンでの哀愁です。ファーストシーンで一瞬出て、去っていくんですが、1つの画角に存在感のある人が出ているのに、彼がセンターにいないことで出る味わい深さが、忘れられないです」

齊藤監督も絶賛するピエール瀧の演技 [c]2020「ゾッキ」製作委員会
齊藤監督も絶賛するピエール瀧の演技 [c]2020「ゾッキ」製作委員会

山田「僕はだいたい1テイクでOKを出しますが、あのシーンはもう1回撮りました。段取りで瀧さんにこんな感じだと説明したのに、本番で瀧さんが欲張りすぎて。『大きな動きはやめてください』と言ったことを覚えています」

「本気で夢を追っていれば、いつか必ず叶うんだなと思いました」(竹中)

――まさに、『ゾッキ』は3人のコラボレーションが実現したからこそ、とても味わい深い作品になった気がします。

竹中「とても良い感じに大橋さんに対する3人の思いが融合したと思います。孝之と工が大橋さんの世界を気に入ってくれたからこそ完成出来た映画です。大切な友達にだけ、そっと自慢したいですね。俺たち『ゾッキ』を映画にしたんだぜ!って」

山田「僕はお2人の現場でも、編集が終わったあとの映画を観ても、本当にいろいろと勉強になりました。船でいうと、竹中監督がしっかりと船首に立ち、僕はあちこちでごちゃごちゃやっているけど、齊藤監督は船尾にいて、一番広い視野で見てくれていた感じでした」

齊藤「僕はお2人がいてくれたことで、最初からとりあえずこの船は沈まないという安心感がありました。また、思いの外、多種多様な方々が乗り込んだ豪華客船になったという印象です」

竹中「『ゾッキ』を映画化するためにたくさんの方々が賛同して集結してくれました。本当に感謝です!僕は2018年の5月に大橋さんの『ゾッキ』と出会い、なんとしてもこのすばらしい作品を映画にしたいと思いました。でもその夢は決して1人では実現できない。そこに集まってくれた仲間がいたからこそ『ゾッキ』は完成しました。『人生まだまだ捨てたもんじゃないぜベェベ!』と思いました」

【写真を見る】『ゾッキ』監督を務めた竹中直人&山田孝之&齊藤工、渋すぎる撮り下ろしショット 撮影/興梠真穂
【写真を見る】『ゾッキ』監督を務めた竹中直人&山田孝之&齊藤工、渋すぎる撮り下ろしショット 撮影/興梠真穂

取材・文/山崎伸子

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