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建築家・長坂 常のマイパートナーは“折り畳み自転車”|長く一緒に過ごすもの vol.2

  • 2021.4.7
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センスのいい6人に長年愛用しているアイテムについて尋ねると、それぞれの思いがこもった話が返ってきた。料理、創作活動、お出かけ…。日常に欠かせない大切な相棒について聞きました。今回は建築家の長坂 常さんのストーリーを紹介。

折り畳み自転車

長坂 常(建築家)

ニューバランスの新ストア「ティーハウス ニューバランス」や 京都木屋町の「ブルーボトルコーヒー」、はたまた老舗銭湯をリノベーションした錦糸町の「黄金湯」まで話題の空間を次々手がける建築家の長坂常さんが東京だけでなく京都や松本の旅にも持っていく相棒とは?

「車や電車より自由に動けるし、歩くより身軽にもなれるんです」

東京・北参道にある事務所「スキーマ建築計画」と自宅の往復で約24キロ。建築家の長坂さんはその道のりを、今春買った折り畳み自転車で通っている。以前はカスタマイズしたハイスペックなタイプにも乗っていたけれど、コロナ禍を機に「地方に持っていけるし便利かも」と折り畳みバイク専門店を覗いてみた。

いろいろ試乗して選んだのは〈700 BIKE〉という北京のメーカーの〈GALAXY Lite 209〉。軽量アルミフレーム&フォークでタイヤは20インチ。折り畳みにしては少しばかり大きめだ。

「タイヤが大きくなればなるほど乗りやすくて速く走れる反面、かわいらしさがなくなってしまう。コンパクトだと持ち運びもラクだしかわいいんだけど、スピードが出ないし長距離には無理がある。その点、コイツは大きいけれどかわいくて、しかも安かった。なんとなく選んだ感じですが、意外と気に入ってます」

事務所との往復や都内の現場へ行くのも便利なうえ、電車や新幹線に持ち込めるので、郊外や遠方での現地移動にも重宝する。

「楽しいのは京都や松本。道がゆるやかで、行きたい場所が散らばっているから、自転車に向いてる。タクシーや電車だと出発点と目的地をつなぐだけになってしまって、その間に色気がないんです」

自転車のいちばんの魅力は、点から点への移動に終わらず、途中途中に発見が待っていること。

「知らなかった店があったり面白い建物を見つけたり、楽しみながら移動できる。〝さっき通り過ぎた店が気になるから、ちょっと戻ってみよう〟みたいな、歩きだと面倒な行ったり来たりもラク。折り畳みだとさらにフットワークよくなれて、遠くのごはん屋やバーに寄ってお酒を飲んじゃっても、畳んで電車に乗ったりタクシーに積んで帰宅することもできる。行動が広がるというのかな」

行動が広がる。それは長坂さんの設計の根幹をなすものでもある。

「ショップの設計でも家具のデザインでも、そこに行く/それを使うことで行動が変わるように考えています。空間や家具そのものの形というより、そこでどんなアクティビティが生まれ、行動がどう変化するかに興味がある。自転車も、所有することが大事なのではなくて、コイツによって自分の行動が変わることや、こんなにも軽快な気分になれることに価値がある気がするんですよね」

唯一の難点は、畳んだ状態での持ち運びが大変なこと。

「折り畳んだままトランクみたいに押して運べたらいいのに、と思わないこともないけど、まあ運動になるからよしとしましょう」

GINZA2021年1月号掲載

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