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『イチケイのカラス』ヒット確定? フジテレビ的なアプローチ光る“リーガルドラマ”の系譜

  • 2021.4.5
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『イチケイのカラス』(c)フジテレビ

4月5日から始まる、春クールの月9(フジテレビ系、月曜9時枠)のリーガル(法廷)ドラマ『イチケイのカラス』に注目が集まっている。

本作は『週刊モーニング』(講談社)で連載されている浅見理都の同名漫画をドラマ化したものだ。タイトルの“イチケイ”とは舞台となる武蔵野地方裁判所第一刑事部の略称。イチケイに赴任してきた特例判事補の坂間真平が、元弁護士の判事・入間みちお、イチケイの部総括判事の駒沢義男と仕事をする中で判事として変わっていく物語となっている。

対して、ドラマ版は(原作者の了承のもと)、漫画では主人公だった坂間真平を黒木華が演じる女性(坂間千鶴)に変え、漫画では脇役だった入間みちおを主役としており、漫画ではメガネをかけた小太りの中年男性だった入間を、竹野内豊のイメージを反映させたオシャレなイケメン裁判官に変更されるという。

賛否はあるだろうが、こういった大胆なアプローチは、フジテレビならではだと感じる。

例えば、2001年に放送された『カバチタレ!』(フジテレビ系)は行政書士事務所を舞台にした法律を題材にした傑作だったが、ドラマ化にあたって大胆な変更が施されていた。
原作漫画は『ナニワ金融道』(講談社)の青木雄二が監修(原作、原案:田島隆、作画:東風孝広)を務めていたこともあって、男ばかりが登場する泥臭い物語だったが、ドラマ版では、深津絵里と常盤貴子が主人公のガールズバディモノとなっていた。

不当解雇やハラスメントといったトラブルに苦しんでいる人たちを行政書士が法律の力で助ける物語の本筋を残したまま、パッケージだけ変えてしまう手腕は実に見事で、当時はまだ駆け出しだった大森美香の楽しい会話劇によって転がしていく脚本も絶妙だった。

『イチケイのカラス』の話を聞いた時、真っ先に思い浮かんだのは『カバチタレ!』だが、原作漫画をそのまま映像化するのではなく、ドラマならではのアプローチを追求している姿を見ると、まだまだフジテレビドラマの遺伝子は健在だと感じた。

法律を題材にした弁護士や法廷の登場するドラマ、いわゆるリーガル・ドラマが国内で多く作られるようになったのは90年代。『都会の森』(TBS系)や『家栽の人』(TBS系)、フジテレビ系では織田裕二が主演を務めた『正義は勝つ』などが作られていたが、まだまだとっつきにくく、刑事ドラマと比べると万人向けとは言えない、大人向けの渋い題材だった。

その認識を大きく変えて一気にポップになったのが、2001年に放送された木村拓哉主演の月9ドラマ『HERO』(フジテレビ系)だろう。

そもそも、リーガルドラマは、ミステリードラマの一種だ。ある事件が起こり、被害者を救うために真実を立証する過程で謎解きや人間ドラマを見せていくというのが、基本的な物語構造だが、そこにフジテレビが得意とする『踊る大捜査線』等で培った組織モノの要素を、本作は巧みに取り入れていた。

弁護士ではなく検事が主人公ということも斬新だった。『赤かぶ検事奮闘記』(テレビ朝日系)という先行例はあったものの、木村が演じた久利生公平は検事でありながら、ラフなジーンズにダウンジャケット姿で、喋り方もフランク。こういったオシャレなキャラクター造形や、『ショムニ』(フジテレビ系)などを手掛けたチーフ演出・鈴木雅之のポップな映像によって『HERO』はヒット作となった。

本作の成功以降、検事や弁護士は、刑事や探偵と同じ現代のヒーローとして定着し、リーガルドラマはテレビドラマのヒットジャンルとして定番化していくのだが、一つの達成と言えるのが、2012年に古沢良太が脚本を書いた『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)だろう。

本作が作られた2010年代になると法廷の仕組みや、弁護士、裁判官、検事の役割も、視聴者にも広く認知されるようになっていたため、敷居もだいぶ下がっていた。

主人公は古美門研介(堺雅人)という勝つためなら手段を選ばない辣腕弁護士。法廷を舞台にした弁護士たちが討論バトルの面白さに加えて、古沢が得意とする、人を食ったような笑いと鋭い社会風刺が込められていた。被害者と加害者が平気で反転する物語など、単純な勧善懲悪で終わらないため、コメディテイストの社会派ドラマとして楽しめた。

人気海外ドラマを国内向けにリメイクした織田裕二主演のドラマ『SUITS/スーツ』(フジテレビ系)など、今もリーガル・ドラマは作られ続けているのだが、テレビ朝日やTBSで作られる作品と比べると、フジテレビのドラマは全体的にポップで明るい仕上がりになっている。かといって、社会的な事件をまったく扱っていないというわけではなく、むしろ積極的に取り込んでいる。

とっつきにくい話題を噛み砕いてわかりやすくオシャレでポップな物語に仕上げるというのは、トレンディドラマ以降、培ってきたフジテレビ的なアプローチだ。

『イチケイのカラス』もポップな社会派ドラマに仕上がるのではないかと期待している。

(成馬零一)

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