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成田凌、多数の出演作で見せる“生っぽさ” 『おちょやん』座長としての重圧を体現

  • 2021.4.5
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『おちょやん』写真提供=NHK

『おちょやん』(NHK総合)出演で、改めてその演技力に注目を集めており、“人気俳優”の座を確かなものにした成田凌。主人公・千代(杉咲花)の夫であり「鶴亀家庭劇」の座長を務める天海一平役を好演している。朝ドラ出演は『わろてんか』(NHK総合)ぶり、2作品目となる。

成田と言えば、顔立ち自体が垢抜けておりお洒落ながら、“正統派”の役どころに収まることなく、実に幅広い役どころを演じ分けてきた。彼が持つ大きな魅力の1つが「愛らしさ」とそれゆえの凄まじい「吸引力」と言えるだろう。“彼ゆえに許され、だからこそ成立する”そんな役どころが多かった。“ヘラヘラした男”という、いわゆるイケメンが演じるにはかなり難しい役どころを事もなげに演じてのける。一見したところどうしようもないキャラクターにも「憎めなさ」や「人たらし」要素をそっと添えるのが何とも上手い。

映画『愛がなんだ』で演じたマモちゃん役では、主人公のテルコ(岸井ゆきの)と“友達以上恋人未満”の関係を悪気なく続ける掴みどころのない青年を演じたが、彼も彼でまた全く自分に振り向いてはくれない年上の女(江口のりこ)に恋心を抱き続ける側でもあった。2人の女それぞれに見せる顔が全く異質にもかかわらず同時に違和感なくそれが共存している、そんな男の都合の良さをつぶさに描く。ここまで「男性側の恋心」を見せつけてくれた作品も俳優も過去いなかったのではないだろうか。1つの作品内で様々な表情どころか全くの両極端な顔の“共存”を自然な形で見せてくれるのも成田ならではのことだろう。

『おちょやん』でも、飄々としていながらも実際には幼少期から家族関係に問題を抱え、母親の愛情に飢えており、喜劇を通して自分で自分を癒していくような側面もある役どころを長期間に渡って見せてくれている。

“両極端な顔”と言えば、映画『スマホを落としただけなのに』で、物語前半と後半でセキュリティ専門家・浦野という男の全く異なる顔をさらけ出し、オーディエンスに強烈な存在感を植え付けた。公開間もない映画『ホムンクルス』でも、闇を抱えた研修医・伊藤の怪演を見せてくれているが、臆病ゆえの威嚇、そのための派手な鎧を身に纏い、不安定でままならない自分を抱えながらも狂い切ってはしまえない苦しみや一抹の人間臭さを見事体現している。

かと思いきや、現在上映中の映画『まともじゃないのは君も一緒』で見せる大野役では、コミュニケーション能力ゼロであまりに冴えない予備校数学講師を演じる。独特すぎる笑い方や話の間合い、猫背な様子も含め、まるで実在するモデルがいてその完コピかのような人物像をありありと描き出している。そこで印象的だったのは、「真っ直ぐな視線」である。大野が何の曇りもない瞳で香住(清原果耶)に疑問を投げかけるシーンは必見である。

また、一点の陰りもない瞳で一心にこちらを覗き込んでくるあの視線は、映画『窮鼠はチーズの夢を見る』で熱演した、一途に大伴(大倉忠義)を想い続ける大学の後輩・今ヶ瀬役でも遺憾無く発揮されていた。本作がBL作品の域を超えて支持されているのには、やはり成田の“やりすぎない、作り込みすぎない”役づくり、演技があってこそのことだろう。

前半に大伴の気まぐれや寂しさに自分も付け入りながらも、仲を深めてもなおなかなか自分1人には絞ってくれない大伴に対するもどかしさと、それもわかった上でこの関係を始めながら不満を抱いてしまう自分自身への苛立ちを、もはやミリ単位の繊細さで、丁寧に表現し、性別にかかわらず“普遍性”にまで見事昇華させ、多くの観客から共感を引き出していた。成田の見せてくれる大袈裟ではない感情の“生っぽさ”にはどうしたって引き込まれてしまう。

『おちょやん』では、松島寛治(前田旺志郎)含め座員や家族が増え責任感が増していく座長として、夫としての成長ぶりを、また歳を重ねていく様を引き続きどんな風に見せてくれるのかが楽しみだ。

また、今月末に公開予定の成田主演映画『くれなずめ』では、映画『街の上で』に続き『おちょやん』出演者の若葉竜也との共演が見られるのも待ち遠しい限りだ。

■佳香(かこ)

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