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【Beautyインタビュー】BiSHはバラバラな6人がいい具合にまとまれた【モモコグミカンパニー】

  • 2021.4.3
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モモコグミカンパニーさん

小さなことを深く考えすぎる。でも感情の奥の奥まで見つめたら、きちんと理由がある

──自分自身の弱さ、あるいは汚さなどをさらけ出し、日常に根付いたエピソードを通じてモモコグミカンパニーさんらしい言葉で綴る。このエッセイ集には、誰しも何か一つ共感できる話があると思います。日々の生活のなかで自分なりに見つけた光をエピソードに落とし込んでいくとお話されていましたが、どのようなものが“光”となるのでしょうか?

モモコグミカンパニーさん※以下、モモコ:
エッセイ集『きみが夢にでてきたよ』のエピソードは、出版の話が出る前から書き溜めていたものをまとめました。わたしは、ひとりで過ごす時間が好きなので、その世界で考えたことや人と関わったときに自分がどう思うかなど、BiSHに入る前から日常的な気づきをノートに書くことを習慣にしていて。悪いことでも明るいことでも、それはその時にしかない感情だから残しておきたいと思う。普段、わたしは気持ちが落ちやすいけど、そんな中でも光を探すことを意識していると目の前が開けるんですよね。書くことによってなにか悪いことがあったとしても、絶対に悪いことばかりじゃないと思えますね

──ノートとは別に去年から日記も書いているそうですね。書き分けはどのようにされていますか?

モモコ:
エッセイは読んでくれる人に向けて書いている部分があり、日記は頭の新陳代謝を高める感じです。去年はとくに、なんとなく過ごしていると空白の1年で終わりそうだなという雰囲気でした。誰かに見せるためではなく、何の予定もない日でも、今日はこんなことがあったと毎日の出来事を書き残しておこうかなと思い始めました。

──書き溜めていたものの中から抜粋したとのことですが、今回のエッセイ集はどういった基準でエピソードを選んだのですか?

モモコ:
コロナ禍の今、自分で残しておきたいと思うかどうかが一つの基準ですね。昨年(2020年)の4月から本のプロジェクトが始まったのですが、コロナ禍で気持ちがしんどいときもあったけど、それ以上に、当たり前すぎて見えていなかった大切なものに気づけた時期でもありました。そして人が読んで勇気をもらえるなど、ありきたりですけどそういったことを大事にしました。自分と同じように悩んでいる人も少しだけ心が軽くなるような、人のためになるトピックを選んでいるかもしれないですね。

──エッセイには日常的に起こることが多く書かれていますが、そのなかにモモコさんならではの気づきがあり、ハッとさせられるエピソードがいくつもありました。

モモコ:
そう言っていただけると嬉しいです。でもそれは、もしかするとわたしの悪いところでもある。小さなことを深く考えすぎるところがあるんですよね。「ガスコンロとIHヒーター」の話もうっかり火を点けっぱなしにして食べ物が焦げちゃったんだよね、で済む話だと思いますけど、そこからいろいろと考えてしまうんです。でも、今回感情の奥の奥まで見つめ直してみたら、すべてにきちんと理由があることに気づけました。

モモコグミカンパニーさん

BiSHを知らない人ほど読んでほしいエピソード「要る・要らない問題」

──軽やかに書けたエピソード、悩んだエピソードはありますか?

モモコ:
悩んだのは「死ぬ死ぬ詐欺」という話ですね。これを書いたらファンの皆さんが悲しむかな、と色々と考えたけど、結果、書くことによって読んでくださる方が生まれ、それで救われる人はいる。そう思い書きました。わたしは表に出ている立場だからこそ、みんなにも同じ人間だと思ってもらいたい。自分のエッセイ本を出すなら、前作(『目を合わせるということ』2018年)よりもっともっと自分をさらけ出そうと思い、正直、誰にも言いたくないようなダークなことも書きました。わたしのエッセイはすべてに行動が伴っていて、「死ぬ死ぬ詐欺」も、本当に自分が辛い夜を経験したうえで書けた話。すべてに行動が伴っているからそういう意味では言葉はすらすらと書けたのかなと思います。きちんと内面と向き合ったからこそ、新しい視点にも気づけたし、自分のなかで世界が変わるほどの発見もあった。辛いことも逆に楽しかったこともありますね。

──働く女性におすすめのエピソードは?

モモコ:
「話、合わないんじゃない?」の回はBiSHのメンバーとの距離感を書いた話で、これは自分でも書けて良かったなと思います。この話は多くの人にとって、職場の人間関係に通じるところがあるかなと。だってBiSHの6人なんて、個性が強すぎて気が合わない!の極みなので(笑)。もちろん喧嘩もするし、顔も見たくないみたいな時期もそれぞれあったと思いますけど、仲が悪いわけではなくて、バラバラな6人でも頑張ればいい具合にまとまれたのでそういったこともあるよと。色々な人の参考にといったらおこがましいですけど、職場の人間関係に悩んでいる人に読んでもらいたいと思います。

──この本に対してメンバーからの反応はどうでしたか?

モモコ:
本はみんなに渡しましたね。リンリンが直接感想を言ってくれて「要る・要らない問題」はわたしもそう思うと。BiSHでテレビ出演させていただくようになってきた頃、目立つ、目立たないメンバーがいるなかで、“この人いらないんじゃない”という空気が出てきたんですよ。わたし自身も言われたことがある。でもそれは外からぱっと見て言っている言葉だと思いますね。BiSHのことを知らない人ほど、このエピソードは読んで欲しいなと思いました。目立つ、目立たない、歌割が多い少ないに関わらず、みんな頑張っているのでそういうところを見て欲しい、この本を読んでもらえれば少しだけ見方が変わってくれるんじゃないかなと思います。

モモコグミカンパニーさん

ファンの皆さんと対話することで人生や人間の面白さに気づけた!

──今回のエッセイ集はCAMPFIREで行われたクラウドファンディングプロジェクトを通して制作されていますね。モモコさんによる書き下ろしエッセイを毎週メルマガで配信し、最終的に印刷、製本して支援者の手元に届けるというプロジェクト。最終的に4401名の支援者が集まっています。

モモコ:
わたし、昔から“モモコグミカンパニー”とファンの皆さんとの関係は面白いなと思っていたんです。今回はリアルタイムで毎回エッセイを配信して、皆さんからエッセイに対するコメントを送ってもらいました。この仕事をやっていなかったら、目を合わせることもなくすれ違っていた人たちと、こんなに向き合い応援してもらい、心の声を聞かせてもらえた。“モモコグミカンパニー”とファンとの関係は、ものすごく素敵で、はかなく、綺麗だなと思います。このエッセイ集はファンの方々との対話で生まれたものでもあると思うので、今回は、いただいたメッセージの一部を本に掲載しました。わたしのファンではない方がこれを読むのも面白いかな、と。ステージに立つ側とファンの皆さんとの関係は興味を持たないと知らない世界だと思いますし、こういう人と人との関係もあるということを皆さんにも少し知ってもらえるといいですね。

──クラウドファンディングの特典に本をモモコさんから手渡し、その場で読了したあと一緒に鍋焼きうどんを食べるという「耳スマコース」がありましたね

モモコ:
すでに実現していて、スタッフの方も一緒に支援してく出さった方と鍋焼きうどんを作り、たくさん話しましたね。じつは、普段はファンの方々と話す機会ってまったくといっていいほど無いんです。その人がどういう人生を歩んで、BiSHそしてモモコグミカンパニーに出会い、どうして応援してくれているのか。本を読んだ感想まで、根掘り葉掘り1時間たっぷりと話しました。

──まさに“ファンとの対話”ですね。

モモコ:
“わたしみたいな人間がなんで選んでもらえたの?”と自分自身が不思議だと思うタイプ。みんなから見えている景色が気になるんです。モモコグミカンパニーはどう見えているんだろう? そして、わたしからあなたはこう見えていますよという話をしたい。しっかりと話す機会がなくても、同じことを考えていたんだ! とわかる場面があったりすると、嬉しくなりますね。

──メルマガ配信でコメントを送ってもらうクラウドファンディングでの制作だからこそ生まれてきたエピソードはありますか?

モモコ:
いくつかつけ足したエピソードはあります。「応援と期待」の話はファンからの1つのコメントにわたしが感銘を受けて書いたエピソードで、「もしきみが消えたいと言ったら」はファンの存在を考えた話。わたしと違う意見があるはずだし、そのコメントをいかしたエピソードは、私の見ている景色だけではたどり着けなかったもの。今回“きみ”という言葉をタイトルにも使いましたが、誰でも大切な“きみ”が心にいるだけで何もかもが変わると思っていて。例えば、もしこの世界からいなくなりたいという人がいても、モモコグミカンパニーがいるから次のライブまで生きよう、と思う人もいるかもしれない。それはわたしも一緒で、過去に辞めたいと思ったことは何度もあったけどその度に、応援してくださっているわたしの中の“きみ”がいたからもう少し頑張ろうと思えた。それはテレビの画面上でもいいし、身近な誰かでもいい。こんな時期なので会っても会えなくても、“きみ”は貴重な存在なのかなと思います。

──今の時期だったからこそ、ファンの人たちもエッセイを自分事として深く読み込んで、メッセージをダイレクトに返されたのかもしれないですね。

モモコ:
そうですね。色々なメッセージの送り方があって面白いんです。絵文字が満載の人もいるし、わたしのエッセイより長いじゃん! という人もいて。ひとりひとりの色が出ている。人生や人間の面白さに改めて気づけました。ファンの皆さんの声を形にできたことも嬉しかったですね。

わたしは特別な人間じゃない。だからこそ書けた

──こういう形での出版はとても貴重だと思います。今後もこの形での出版を考えていますか? 小説を書いて欲しいとの声も多そうですが。

モモコ:
楽しかったですけど、3冊目を出すならまた違うものを書きたいですね。もうこれ以上書くことがあるのかというぐらいさらけ出し切ったので。小説を書いたら面白いんじゃない? とクラウドファンディングの対談でも言われましたけど、自分的にはまだまだ難しいかな……。もしも小説を書くなら、ものすごく頑張らないといけないなといった感じですね。でも次に書くとしたら自分でもワクワクするような形の本が出せたらいいなと思います。小説かもしれないし、そうじゃないかもしれない。その時の自分にしか書けないものを出したいですね。

──まさにこの本はモモコさんの“今”が詰まっていて、BiSHのファンでなくても楽しめる本だと思います。“モモコグミカンパニー”の哲学が詰まっていると感じました。

モモコ:
“モモコグミカンパニー”の中身をさらけ出す、自分と向き合うのがテーマだったので、BiSHを知らない、もちろん、わたしのことを知らない人が読んでも面白いものができたと思います。ファンの皆さんからのコメントを活かしたエピソードもあるし、わたしが特別な人間じゃないからこそ書けたものもたくさんある。コロナ禍でお休みもあったので、とことん自分と向き合ったら、自分の知らない一面も見えてきて、わたし自身がこのエッセイを書く過程で救われたしラクになれたんですよね。わたしのことを書いているようだけど、少し自分に重ね合わせて読んでみて、みなさんが自分と向き合うきっかけになってもらえたら。一番嬉しいなと思います

モモコグミカンパニーさん

モモコグミカンパニー
profile
楽器を持たないパンクバンド、BiSHのメンバー。結成時からもっとも多くの楽曲で歌詞を手がける。読書や言葉を愛する彼女が書く作詞は圧倒的な支持を集め、作詞家としての評価も高い。2018年3月に初の著書『目を合わせるということ』を上梓し、2021年3月現在第16刷と異例のベストセラー。2020年12月には2作目となるエッセイ本『きみが夢にでてきたよ』を上梓。BiSHとしては、2020年12月24日に332日ぶりとなる有観客ワンマン”REBOOT BiSH”を代々木第一体育館にて開催。2021年5月より12組のゲストを迎えるBiSH初となる対バンツアー「BiSH’S 5G are MAKiNG LOVE TOUR」を開催し、5月26日には映像作品「REBOOT BiSH」を発売する。

フーディー ¥27000(ネーム)/ネーム 03・6416・4860、シャツ ¥126000(モンス)、スニーカー ¥90000(ボース × モンス)/アイデア バイ ソスウ 03・3478・3480、スカート ¥35000(フミエタナカ)/ドール 03・4361・8240

撮影/池満弘大(TRON) スタイリング/服部昌孝 ヘアメイク/KEN(RIM) 取材・文/池城仁来

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