1. トップ
  2. 生駒里奈が鬼才・KERA戯曲に挑む理由「ここで受けて立たないと!と思って」<カメレオンズ・リップ>

生駒里奈が鬼才・KERA戯曲に挑む理由「ここで受けて立たないと!と思って」<カメレオンズ・リップ>

  • 2021.4.2
  • 352 views
【写真を見る】雨降る中でのセンチメンタルな雰囲気のカット 撮影=玉井美世子/取材・文=本嶋るりこ/スタイリスト=津野真吾(impiger)/衣装協力=Y's、Histoire、BRAND SELECT
【写真を見る】雨降る中でのセンチメンタルな雰囲気のカット 撮影=玉井美世子/取材・文=本嶋るりこ/スタイリスト=津野真吾(impiger)/衣装協力=Y's、Histoire、BRAND SELECT

【写真を見る】雨降る中でのセンチメンタルな雰囲気のカット

ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)の名作戯曲を、才気溢れる演出家たちが新たに創り上げる連作シリーズ「KERA CROSS」。その第三弾となる「カメレオンズ・リップ」は、初演時には堤真一と深津絵里が出演したクライム・コメディだ。今回は、河原雅彦の演出により、松下洸平×生駒里奈という新鮮な顔合わせで上演される。近年は多くの舞台に出演してキャリアを重ねている生駒だが、実はその初舞台もKERA戯曲作品(2015年の「すべての犬は天国へ行く」リメイク版)。今再び、鬼才の傑作に挑むことになったその心境を聞いた。

――KERAさん作の舞台は、初舞台以来2度目となりますが、まずはその感想はいかがでしたか?

自分としては、とても2度目なんて言えないですね。前回と今とではお芝居の経験値がまったく違いますから。当時は今のように一つのことを集中して考えることができない環境だったというところもまったく違いますしね。当時は自分にもノウハウがなくて。それに伴う環境もまだ全然できていない時期だったので。今とは比べ物にならないというか。

――では、心境としては、初めてのKERA戯曲のような感覚なんですね。

そうですね。きっと難しい挑戦になるだろうなと感じました。でも、今後につなげるためには、ここで受けて立たないと!と思って、出演することを決めました。

――河原雅彦さんの演出はいかがですか?

河原さんの演出は、今まで経験してきた舞台とは全然違うやり方なんです。劇団「少年社中」の作品に出演させていただいた際はその劇団のやり方に自分がピースとしてハマれたような感覚があったのですが、今は、「そのやり方じゃないところもあるんだ!」という発見をさせてもらっています。厳しいことも言われますが、初めてのやり方なんだからできなくても仕方ないと腹をくくっていますね。本当に、自分にとっては挑戦がたくさんある舞台になっています。

舞台に挑戦し続ける理由とは? 撮影=玉井美世子/取材・文=本嶋るりこ/スタイリスト=津野真吾(impiger)/衣装協力=Y's、Histoire、BRAND SELECT
舞台に挑戦し続ける理由とは? 撮影=玉井美世子/取材・文=本嶋るりこ/スタイリスト=津野真吾(impiger)/衣装協力=Y's、Histoire、BRAND SELECT

まさに今、一つずつ学んでおります

――いざ稽古に入って、ドナ/エレンデイラ役についてどんな風に感じていますか?

台本を読んだだけじゃ、全然読み解けなかったです。バックボーンが複雑で、しかも二役なので…。私自身は、自分で言うのもなんですが、とっても素直なので(笑)。そういう人間からすると、想像つかないようなメンタリティーだから、すごく難しいです。

いろんなことを準備して、計算式に当てはめていく演技というか。私自身は普段は、計算式なんて無視。答えさえ合っていればいいというタイプなので。緻密な計算を苦手とする人間がまさに今、一つずつ学んでおります。実際に演じてみないと、すぐにはできないものなんだなと実感する毎日ですね。稽古を重ねるうちに、だんだん見えるようにはなってきてますが…。

――せりふの応酬で物語が進んでいく作品ですが、ルーファス役の松下洸平さんとの掛け合いはいかがですか?

相手を動かすのも自分だし、自分が動かされるのも相手なんだと、改めて気付かされています。そこをお芝居では考えなきゃダメだよなと。松下さんも『探り探りだ』っておっしゃっていましたね。私もだんだん分かるようになってきて、今までずっと松下さんから投げてもらっていたってことに気付き始めました。待たせてしまってごめんなさい!って思いつつ、一緒に頑張っています。

松下さんご自身は、とっても頭が良くて、経験値もあって年齢も上なので、すごくフォローをしてくださるんですが、爽やかなだけの人じゃないというか(笑)。いろいろなことを経て、この落ち着きなんだろうなと思います。お互い人見知りなんですけど、最近やっとお芝居じゃない時にも松下さんの目を見て話せるようになりました(笑)。私はもともと人見知りなんですけど、どんどん人見知りになっちゃって。

――そうなんですか。普通は、逆になっていきそうなものなのに。

だからこそ、劇団「少年社中」の稽古場は、ホントに甘えられるというか。そういう場所ができたから、すごく充実はしていますね。私の周りに河原さんから演出を付けてもらったことのある人もいるので、「どんな感じでやればいいの?」など質問することもありました。自分自身も、お芝居でそういう話ができるようになったんだなって感慨深いです。ちょっとずつ経験を積み上げてこられたんだなと。

――今回の役柄は、ラストへ向けて人間としての爆発力も必要とされそうですよね。そういう部分については、どんな風に挑もうと思っていますか?

稽古の最初のころは、どうやればいいんだろう?と嵐の中に放り出された感覚でした。稽古を重ねるうちに、なんとか生き残れるかもってところまではたどり着けたかな。毎日、「うーん」って頭を抱えてる状態ですが、それはこの作品が決してハッピーなストーリーじゃないからだ!とも感じていて。

というのは、以前、ハッピーな作品をやった時、かなりそこに引っ張られちゃったんですよ。体は疲れてても走り出したり、食欲も増して朝からご飯を3杯くらい食べたり。で、終わった途端に食べなくなるんです。だから、テンションがそのお芝居になっちゃうんですね。そういう性格なので、今回もちゃんと戯曲が分かってからじゃないと、役が体の中に入ってこないのかなって。

――だとすると、今回の役が入ったら大変なことになりそうですね(笑)。

はい、どうなるんだろう(笑)。でも、そういう自分の未知数を広げていきたいという思いもあります。私が周りから持たれるイメージって『素直で明るい子』というのが多いんですが、一方でとんでもなく変な人と思われがちな面もあるんです。『生駒ちゃんって天然だね』ってよく言われたりして。『この人は何を考えて、こんな行動をしてるんだろう』って人に思わせてしまうような、“謎”がある一面を役に生かせたら、面白くなるんじゃないかなと思います。単なる嘘つきのお姉さんにしか見えない、ということだけは避けたいと思っています。

雨の中での撮影も、笑顔でこなしてくれた生駒さん 撮影=玉井美世子/取材・文=本嶋るりこ/スタイリスト=津野真吾(impiger)/衣装協力=Y's、Histoire、BRAND SELECT
雨の中での撮影も、笑顔でこなしてくれた生駒さん 撮影=玉井美世子/取材・文=本嶋るりこ/スタイリスト=津野真吾(impiger)/衣装協力=Y's、Histoire、BRAND SELECT

やり方は一つじゃないなってことが分かった

――この舞台を経て、女優として脱皮できそうなところは?

台本の読み方からして変わるんだろうなって思います。これまでみたいに読み込まなくても成立するというか…読み込まないほうが成立する時もあるんだなって。やり方は一つじゃないなってことが分かったので。「ああ、これはこういう作品だから、こう見せたほうがいいだろう」みたいなことが、少しずつ分かるようになった気がしますね。まだ理解の途中はありますけど。

――昨今では舞台での活躍ぶりが目覚ましいですが、ご自身が舞台に感じている魅力ってどういうところですか?

舞台をやると『自分にもこれができるんだ!』という発見が、毎回必ずあるところが好きです。煮え切らないまま終わるんじゃなくて。もちろん、舞台に出始めたころは悔しい思いで千秋楽を迎えることも多かったですが、今では『楽しい』で終われるようになりましたし。この経験をどう自分の武器にしていくか、というのを考えられるようになったので。一つ、自分が整理整頓できて、なおかつ成長できる場所が増えたのは、いいことかなって思います。だから、この経験をどこに持っていっても…例えば、映像だったら、どんな撮り方でやるとしても怖じけずにいられるような、そんな余裕のようなものは舞台で培われましたね。

――自分を成長させる、自分を豊かにさせる経験がやり甲斐に繋がっている?

そうですね。私の思考の傾向って、すごくセンチメンタルなんですね。コロナ禍もあって「なんのために生きてるんだろう」ってすごく考えた時期もあったりして。その時に、「どうせお仕事をするんだったら、必ず毎回得るものがあることをしたいな」って思ったんです。ささいなことでもプラスになるような人生にしていけば、おばあちゃんになった時にきっと豊かだなって。

――それを大きく実感できるのが舞台のお仕事だと。

そうですね。まだ経験は少ないですけど。でも、例えば、しゃべり方や発声の仕方だけでも、大きな声を出すことは訓練になるし。そのおかげでテレビに出た時に前よりは滑舌が良くなってますし。最低でも1カ月は練習できる期間があって、そのあとに本番も複数回やるものなので、必ずそういうプラスがあるんです。いきなり本番じゃなくて、ちゃんと練習・本番が必ずあるのがうれしいです。

――ちゃんと準備して、コツコツと積み上げて、その結果として成果を出していくことが向いている?

向いていると思います。過去はしっかりと練習できていないのに表に出て、「できてない」って言われちゃうことが多かったなって、ハッと気づいたんですよ。「できない」じゃなくて、やったことがないことをやらなきゃならなかったからだって。「ちゃんと自分でもできるんだ」って思わせてくれたのが、舞台だったんです。すごく自分を救ってくれたんですよね。

――自分の自信にもなったんですね。

なりましたね。「できなくないんだ」って。「訓練すればちゃんとできるんだ」って事実は、すごく救われました。だから、これからもライフワークにしていきたいです。最低でも年に1作品は出て、自分を高められる場を持ちたいです。自分を訓練する場だと思っているので。

――訓練の先に持っている目標ってあるんですか?

本当にエンターテイメントができる人材になれれば(笑)。自分を育てていきたいですね!芝居だけやります!ではなく、テレビ出ません!でもなく。いろいろなことにチャレンジし続けたいんです。もともと、自分はそういうエンターテイナーの方々をカッコいいなって思っていたので。いろいろなところで楽しいものを提供できる人になりたいです!

元記事で読む