1. トップ
  2. 恋愛
  3. 「そのミス4回目だぞ」攻撃的な上司を落ち着かせる"棒読み話法"とは

「そのミス4回目だぞ」攻撃的な上司を落ち着かせる"棒読み話法"とは

  • 2021.4.2
  • 919 views

ミスを執拗に責めてくる上司をうまくかわす方法はあるでしょうか。対応を誤ればさらにエスカレートする危険性もあります。産業医の井上智介先生が勧める“棒読み話法”とは——。

※本稿は、井上智介『どうしようもなく仕事が「しんどい」あなたへ ストレス社会で「考えなくていいこと」リスト』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

「残念な人」が自分の上司に

残念な人が身近にいると、誰だってそんな人とは関わりたくないと思いますよね。でも、その相手が上司だとすると、関係を断ち切るわけにもいかず、心を悩ませている人が多いのではないでしょうか。

私が考える「残念な人」というのは、ひと言でいうと、「相手の気持ちがわからない人」です。攻撃的な言い方をしたり、ミスを執拗に責めたり。中には、「このミス、4回目だぞ」というように、回数まで数えている人もいますからね。

※井上智介『ストレス社会で「考えなくていいこと」リスト』(KADOKAWA)より
※井上智介『どうしようもなく仕事が「しんどい」あなたへ ストレス社会で「考えなくていいこと」リスト』(KADOKAWA)より

こういうタイプは、本当に面倒くさいです。

過去のミスを持ち出されても、もはやそれに対するお互いの熱量が違います。相手側は、雪だるま式に攻撃材料をふくらませているけれども、こちら側はそうではありません。だから、その熱量の差によって、余計にしんどくなってしまうのです。

「自分が悪いのかな…」と考えなくていい

また、恐ろしいことに、最初は「相手がおかしい」と思っていても、ネチネチ言われ続けたり、攻撃され続けたりしていると、「自分が悪いのかな」と思い始めることがあります。

こういう残念な上司というのは、悪目立ちしているので、最初は周りの人がかばってくれることが多いです。「あの人はそういう人だからさ」「そんなの気にしなくていいよ」など、いろいろ言ってくれるのですが、時間が経つと、「でも、言われていない人もいるしな」「やっぱり自分がダメだから言われるのかな」など、自分の能力を否定し始めてしまうことがあります。

そうやって苦しんで、心を病んで、産業医である私のところへやってくる人が、悲しいけれどたくさんいます。

だから、そういう残念な人が身近にいる場合は、「物理的距離」と「心理的距離」をとることがとても大切です。

「すみませんでした」(棒読み)で攻撃をかわす

物理的距離というのは、相手の近くに行くことを極力減らすということです。距離をとれば、相手のパンチは届きません。

心理的距離というのは、無関心を決め込むということです。一番の心理的な距離は無視をすることなのですが、やっぱり仕事で無視をするというのは難しいので、その一歩手前の無関心。それに徹しましょう。

具体的には、相手があれこれ言ってきても反応をしないということです。

私のところに相談に来る人は、残念な人に対しても愛想を良くしようとしたり、怒られているからこそ頑張ろうとしたりすることが多いのですが、それは実は逆効果なんです。

残念な人というのは、こちらが反応すると、それに輪をかけてくるというか、つけこんでくるんですね。だから、すごく冷めたリアクションをとることがとても大事です。心の距離をとって、守りを固めるんです。

例えば、こんな感じです。

【残念な上司】何度同じミスをすれば気が済むんだよ。本当頼むよ~。
【自分】すみませんでした(棒読み)。(立ち去る)

怒られているからといって、落ち込んでいるように装う必要はありませんし、次は頑張るというような意欲を語る必要もありません。そういう態度をとると、相手がさらに話を進めて、攻撃をしかけてくるのは目に見えています。

だから、聞いているのか聞いていないのかわからないくらいの感じがベストです。会話のキャッチボールなどもしようとせず、YES、NOで終わるならそれだけでいいです。

とはいえ、最低限の態度というものがあると思うので、ひと言謝って、それで終わりにしてしまえば十分です。

「凛とした自衛官」になろう

私は産業医としてこの話をするとき、「凛とした自衛官になりましょう」と伝えています。

穏やかで凛としているんだけども、何を考えているのかわからないようなイメージです。そして、自分を守るという意味で自衛官。そういうキャラクターに自分を寄せていくと、無関心に徹することができるようになっていきます。

あと、これは余談になりますが、ネチネチしたタイプというのは、相手を下げることで自分を上げたい人であることが多いです。ミスを執拗に責めることで、自分の正しさを証明したいのです。

そして、さらに厄介なことに「4回もミスをするというのは、自分を困らせるために、わざとやっているんじゃないか」というような、歪んだ意味付けをしていることもあります。

そういう人は、何をしても変わらないので、相手を良くしようとか、良い関係性を築こうとかするのは、エネルギーの無駄遣いに他なりません。真剣にとりあうのは、エネルギーと時間が本当にもったいないです。それに、実際に何度かミスをしてしまったとしても、人間なんですからそういうこともあります。

だから、残念な人が身近にいる場合は、「自分が悪いのかな……」とは考えずに、凛とした自衛官になったつもりで振る舞ってみてくださいね。

嫌いな人が職場にいて「会社に行きたくない」ときは

嫌いな人が職場にいて、明日も明後日も顔を合わせなくてはいけない。会話をしなくてはいけない。そう思うと「いつまでこれが続くんだろう」「もう会社に行きたくない」と考えるのは、ある意味自然なことです。

井上智介『どうしようもなく仕事が「しんどい」あなたへ ストレス社会で「考えなくていいこと」リスト』(KADOKAWA)
井上智介『どうしようもなく仕事が「しんどい」あなたへ ストレス社会で「考えなくていいこと」リスト』(KADOKAWA)

でも、それってとてもしんどいですよね。なぜなら、人間は、いつまで続くかわからないものに対して大きなストレスを感じるからです。

それは、ゴールが見えないまま過酷なマラソンをしているようなもの。いつか体調を崩すのは目に見えています。

産業医として、人間関係に悩んでいる方と面談をすることは非常によくあります。その中には、

「同僚と本当にウマが合わないんですけど、今一緒に進めているプロジェクトが来月には終わるので、それまでならなんとか頑張れそうです」

という人がいる一方、

「苦手な上司のアシスタントに指名されてしまって、いつまでこれが続くのかと思うと、夜も眠れなくなります……」

と話す方もいます。

このように、どんなに辛い状況でも、終わりが見えているかどうかによって、心の負担は大きく変わってきます。

つまり、終わりが見えているということがとても大切なのです。

「期間限定思考」で乗り越える

そこで、私がおすすめしているのが「期間限定思考」です。

いつまでなら耐えられるかという期限を算定して、「いつまで続くかわからない」という恐怖を取り去ってしまうのです。

※井上智介『ストレス社会で「考えなくていいこと」リスト』(KADOKAWA)より
※井上智介『どうしようもなく仕事が「しんどい」あなたへ ストレス社会で「考えなくていいこと」リスト』(KADOKAWA)より

相談者Aさんとのやりとりを紹介しながら、もう少し詳しく説明しましょう。

【Aさん】すごく嫌いな人がいて、毎日顔を合わせるのが苦痛で仕方ありません。

【私】配置転換できるならそれが一番ですが、言っても叶わない可能性はあります。だから、Aさんがどこまで我慢できるのかということになると思うんです。期間限定で頑張るとしたら、いつまで耐えられそうですか?

【Aさん】期間限定ですか……。今は声を聞くだけでもゾッとするくらい嫌なんですけど、来月、新入社員が入ってきたら、自分がお世話係をするかもしれないので、そうしたらだいぶあの人とは離れられそうです。だから、1カ月くらいなら耐えられるかもしれません。

【私】なるほど。それなら、その1カ月くらいは頑張ってもらったらいいのかなと思います。でも、もし、1カ月たっても同じ状況が続くようだったら、逃げられる体力、気力があるうちに逃げることも大切ですよ。

【Aさん】そうですよね。とりあえず1カ月間、期間限定で頑張ってみて、状況が変わらないようだったら転職も検討します。

【私】そのような考えでいいですね。

【Aさん】ありがとうございます。なんだかスッキリしました。期限があれば頑張れそうです!

期間終了後、自らの意思で会社に残る人がほとんど

私のところに相談に来る方は、「今どうすればいいか」ということで頭がいっぱいで、「あとどれだけ頑張れるか」とは考えたことがない方が多いです。

でも、改めて「いつまでなら頑張れるか」を考えてみることがとても大事です。ゴールが見えると、人は前へ進みやすくなるからです。

また、実際にこのような期間限定思考を実践した方は、いざ限定期間が終了して、たとえ現状が変わっていないとしても、会社を辞めないことが多いです。

もちろん、転職活動がうまくいかずに、会社に残る方もいるでしょうが、私が知る限りは、自らの意思で会社に残っている方がほとんどです。

期間限定思考を実践したことで心に余裕が生まれて、ストレスの対象と、距離をほどよくとれるようになるからかもしれません。

心がズタボロになりそうなら、すぐにでも逃げていただきたいですが、今すぐには動けない場合、この期間限定思考がきっと役に立ちます。

クレーマーには真正面から向き合わなくていい

とはいえ、期間限定思考をするのが難しい職種の方もいらっしゃると思います。

例えば、接客業の方は、いつどんなお客さんがやってくるかわかりません。残念ながら、良いお客さんばかりではないですからね。ときにはクレーマーのような人もいると思います。

しかも、苦手な人が社内の人間の場合は、警戒してスルーをしたり、ある程度心のガードを固めておくこともできますが、初対面のお客さんから思いがけず発せられる攻撃的な言葉は、もろにくらってしまいます。だから、破壊力が抜群です。

それが一回や二回ならまだしも、何回も同じクレーマーがやってくる場合は、本当に困ってしまいますよね。

相手がいつ来店するかわからないので、期間限定思考でゴールを見出して、踏ん張ることもできません。

そういう場合は、会社側がスタッフを守るために、やらなければいけないことがあるので、「自分がしっかり対応しなくては」と、頑張らなくてもいいのです。

いくらお客さんだからといって、クレーマーに真正面から向き合っていると、こちらの心が削られてしまいます。

ですから、まずは会社に相談して、自分の逃げ道を確保しておくこと。

その人が来る時間帯がある程度わかっているなら、時間をずらしたり、バックヤードのほうに移動したりして、物理的距離をとりましょう。

そして、会社を巻き込まなくても、今すぐできることは、そのお客さんの悪口を言うこと!

クレーマーをはじめとする嫌なお客さんに関しては、ぜひ職場のみんなで愚痴を言い合ってください。そうやって発散するのはとても大事です。

嫌な気持ちは、自分一人で抱え込まないようにしてくださいね。

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医
島根大学医学部を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急科・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び、2年間の臨床研修を修了。その後は、産業医・精神科医・健診医の3つの役割を中心に活動している。産業医として毎月約30社を訪問。精神科医・健診医としての経験も活かし、健康障害や労災を未然に防ぐべく活動している。また、精神科医として大阪府内のクリニックにも勤務

元記事で読む
の記事をもっとみる