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人間の体にまつわる、パリの2つの展覧会。

  • 2015.6.17
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南仏ロックブリューヌの海で心臓発作をおこして溺れたのか、それとも自殺したのかが謎のままの建築家ル・コルビュジエ。今年は彼の没後50年目にあたり、回顧展がポンピドゥー・センターで開催中である。そのタイトルは「ル・コルビュジエ、人間の寸法」。彼が提唱したModulor(モデュロール)を軸にして構成された展覧会なのだ。モデュロールというのは、標準尺を意味するフランス語moduleと黄金分割を意味するsection d'orを組みあわせた彼の造語で、それは人間(身長183センチ)が片手をあげ、その指先までの高さを黄金比で割りこみ、それに合わせて建築物を設計するという尺度体系のこと。この展覧会場は、建築の基準を人間の身体に置くというル・コルビュジエの革新的アプローチを通じて、彼の建築物を見ることになる。

(左)作家や芸術家のポートレート写真を多く撮影したジゼル・フロイントによるル ・コルビュジエ。 Gisèle Freund, Le Corbusier, Paris, 1961 © Centre Pompidou, Guy Carrad (右)モデュロールについての良い説明となる写真。ナント市の集合住宅 Rezé J.Ach Empreinte du Modulor dans le béton, Unité d'habitation, Nantes, Rezé Photographie © FLC, ADAGP, Paris 2015


本名はシャルル=エドゥアール・ジャンヌレといい、彼は1887年(明治20年)にスイスに生まれている(ちなみにマルク・シャガール、ジャン・アルプ、マルセル・デュシャンが同じ年生まれだ)。装飾のないシンプルなラインの鉄筋コンクリートの建物を設計し、モダン建築の提唱者とされている。この回顧展は建築物にとどまらず、彼による絵画、彫刻、写真なども含む約300点の作品を展示する総合的なもの。画家のアメデ・オザンファンと共に彼が1920年に創刊した雑誌「エスプリ・ヌーヴォー(新しい精神)」のためにも一部屋、人間の体、とりわけ女性の体を描いていた時代にも一部屋......というように。ちなみに展覧会の締めくくりは、巨匠のお茶目なヌード写真!? 日本では東京・上野の国立西洋美術館しかないが、パリ市内と近郊には彼が設計した建物が10近くある。展覧会の後、実物見学の散歩をしてみるのはどうだろうか。

展示会場より。ル・コルビュジエに詳しい建築ファンでなくても、興味が持てる展覧会だ。


彫刻家ブールデルのアトリエと住居があった場所に生まれたブールデル美術館。最近8カ月続いた改修工事を終え、その再開にあわせてスタートした『芸術家のマネキン、フェティッシュなマネキン』展が、ユニークな内容で話題を呼んでいる。共同企画者であるロンドンのフィッツウィリアム美術館でまず開催されているのだが、ルネッサンス期から20世紀に至るマネキンの歴史が、マネキンはもちろん絵画、写真なども含め合計160点の作品で構成された展覧会だ。

(左)作者不詳。1810年ごろに制作された木製マネキンで関節部分は金属だ。Accademia Carrara, Bergame © Comune di Bergamo - Accademia Carrara (右)アトリエで人物を描くのに、いかにマネキンが役立っているか。この作品からも明らかだ。Thomas Gainsborough 1727-1788, Heneage LIoyd et sa sœur Lucy, vers 1750 © Fitzwilliam Museum, Cambridge


マネキンはアトリエで画家たちが人体をよりよく描くための道具として15世紀頃に登場した。それが時代の経過とともに、画家の道具というだけでなく画家たちにインスピレーションを与える存在へと変化。また、ハンス・ベルメールのモノクロ写真にあるように、いささかフェティッシュな対象にも......。クラシックな絵画展より、ちょっとひねりのある展覧会を楽しみたいという人に、これは最高の企画展だ。

改装後の美術館中をあまねく使ってマネキンを展示している。


ショーウィンドーを飾ったファッション・マネキンの写真(写真左)や、クチュールメゾンのスキャパレリのウインドー内で活躍した、パスカルとパスカリーヌと名付けられた木製マネキンのカップル(写真右)、マドレーヌ・ヴィオネがアトリエで使っていた身長80センチのマネキンなども展示。


「Le Corbusier. Mesures de l'homme.」展
会期:開催中~2015年8月3日
会場:Centre Pompidou
Place Georges-Pompidou
75004 Paris
開館:11:00~21:00
休)火
料金:11~13ユーロ(時期による)
www.centrepompidou.fr

「Mannequin d'artiste, Mannequin fétiche」
会期:開催中~2015年7月12日
会場:Musée Bourdelle
18, rue Antoine-Bourdelle
75015 Paris
Tel.01 49 54 73 73
開館:10:00~18:00
休)月・祝
料金:9ユーロ
www.bourdelle.paris.fr

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