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三石琴乃が表現した“大人の女性”の葛城ミサトと月野うさぎ ドラマ『リコカツ』にも出演

  • 2021.3.31
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3月8日より公開され、29日に累計興行収入が60億円を突破したことが発表された『シン・エヴァンゲリオン劇場版』。その前日3月28日に、1997年以来、約24年ぶりに開催された舞台挨拶では、碇シンジ役の緒方恵美、アヤナミレイ(仮称)役の林原めぐみ、式波・アスカ・ラングレー役の宮村優子、渚カヲル役の石田彰といった豪華声優陣14名が集結し、大きな話題となった。

1995年から放送され、社会現象を巻き起こしたアニメ『エヴァンゲリオン』シリーズの最新作にして完結編となる本作。約26年という長い歴史と共に歩んできた声優たちは今なお一線で活躍し、アニメ界をリードしている。その中でも2021年、改めて注目されているのが本作で葛城ミサトを演じた三石琴乃だ。

三石は『エヴァンゲリオン』同様に、90年代から続くアニメ『美少女戦士セーラームーン』シリーズの実に25年ぶりとなる劇場版『美少女戦士セーラームーンEternal』で主人公・月野うさぎ(セーラームーン)の声を担当。さらに、3月26日に最終回を迎えたTVアニメ『呪術廻戦』では冥冥役を演じ、4月期のTBS金曜ドラマ『リコカツ』では女優として主演・北川景子の母親役で連ドラ初レギュラーを務めることが決定している。

そんな三石の魅力といえば、一度聴いたら誰もが虜になる可愛らしい声とその中にも意志の強さを感じさせる演技力だろう。その代表格であり、声優・三石琴乃の名を世に知らしめた『美少女戦士セーラームーン』の月野うさぎ役だ。

うさぎはドジで泣き虫で、遅刻・赤点は日常茶飯事。だけど、とにかく明るくて愛嬌があり、誰とでも仲良くなれるという王道な少女漫画のヒロインの要素をいくつも持っている女の子だ。また作品の中でもうさぎは敵との戦いの中で成長していき、まさに“愛と正義”の美少女戦士として、自分を犠牲にしてでも仲間や愛する人たちを守っていく。

そんな女の子なら誰もが憧れる存在を、テレビアニメシリーズ初主演作で演じることになった三石はインタビューで「プレッシャーは相当なものだった」と振り返っている(参照:三石琴乃「昔の自分のモノマネはしたくない」 常にピュアな気持ちで臨むセーラームーン/月野うさぎ役|クランクイン!)。しかし、結果的に三石が声を当てることで、うさぎの成長に伴う内面の動きや思春期ならではの悩みがより鮮やかとなり、親しみやすさもある魅力的なキャラクターとなった。

そして、10年以上の時を経て2014年にスタートしたアニメ『美少女戦士セーラームーンCrystal』。その劇場版でうさぎはちびうさが憧れる“大人の女性”として描かれていたように、当時から変わらぬ純粋さがありながらも、少しの落ち着きと頼もしさを感じさせる。その微妙な変化を、三石は声だけでたしかに表現していた。

それは『エヴァンゲリオン』でも同じである。親からの愛情に飢え、人と関わることで傷つくことを極端に恐れている少年・碇シンジが人型決戦兵器「エヴァンゲリオン」に乗り、世界の運命を背負うことで成長していく姿を描いた本作。三石が演じた葛城ミサトはそんなシンジを見守り、時に叱咤し、背中を押す“大人”としての役割を果たしている。しかし、実はミサトもシンジと同じようにトラウマを抱えており、その傷を笑顔の裏に隠し、シンジとはまた違った形で他者と深く接することを避けているのだ。

戦闘指揮官として現場で的確な指示を出すキャリアウーマンだが、私生活はだらしがなくシンジが暮らすことになる家は散らかり、ミサトはお酒を呑んで豪快な姿で眠りにつく。一見するとオンとオフの切り替えができている、憧れのお姉さん的存在だ。けれども余裕のある振る舞いを見せながらも、物語が進むにつれ時に攻撃的な一面をあらわにし、新劇場版では彼女の本質を知る元恋人の加持リョウジがシンジに「あいつを守ってくれ」とミサトのことを託した。

特にシンジと築いてきた母と子、姉と弟、上司と部下といった複雑な関係性は、ミサトの大人になりきれない未熟さを表している。だからこそ、旧劇場版『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH(TRUE)2/Air/まごころを、君に』でゼーレが派遣した戦略自衛隊の攻撃からシンジを守り、絶命する直前にミサトは「結局シンジくんの母親にはなれなかった」という後悔の言葉を呟いたのだろう。

そんなミサトが『シン・エヴァンゲリオン劇場版』でシンジと共に大きな変化を見せる。ストーリーへの言及は避けるが、今回三石が演じたのはこれまでのミサトとは違う、大人としての責任感と母親としての愛情を持った人間だ。

エヴァのコミカライズ第1巻のインタビューで庵野監督が「私はこの物語が終局を迎えた時、世界も、彼ら(シンジとミサト)も、変わって欲しい、という願いを込めて、この作品を始めました」と語ったように、本作はシンジ、そして同時にミサトの成長物語でもあった。本作では、それほど重要なキャラクターであるミサトがたしかに成長したと思わせる変化を、三石がこれまでに以上に力強い声と説得力のある演技で見せている。まだ映画を観ていない人も、すでに観終わった人も今一度シンジだけではなくミサトの成長ぶりをその目に焼き付けてほしい。(苫とり子)

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