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【「ゾッキ」潜入記:第3回】竹中直人×山田孝之×齊藤工は「大橋裕之の世界」をどのように実写化したのか

  • 2021.3.29
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【「ゾッキ」潜入記:第3回】竹中直人×山田孝之×齊藤工は「大橋裕之の世界」をどのように実写化したのか

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撮影の合間に、監督陣へインタビュー! / (C)2020「ゾッキ」製作委員会

漫画家・大橋裕之氏の初期傑作集を映画化する「ゾッキ」。第33回東京国際映画祭「TOKYOプレミア2020」部門でのワールドプレミア上映という華々しい披露を経て、今春、遂に劇場公開を迎える。さかのぼること2020年2月。映画.comは、その撮影現場に密着取材を敢行。竹中直人、山田孝之、齊藤工による“監督3人体制”の日々を、全3回にわたってレポートする。

取材を行ったのは、2020年2月19、20日の2日間。19日に行われた撮影の合間には、監督陣へのインタビューを試みている。今回は、3監督が現場で発した“言葉”を紹介させていただこう。

本作は、18年、「ゾッキ」を熟読した竹中が「絶対、実写映画化したい!」と強く熱望したことからスタートしている。その後、山田と齊藤に映画監督としてのオファーをしたことから、企画が立ち上がった。主なキャストを列挙すると、吉岡里帆、鈴木福、満島真之介、柳ゆり菜、南沙良、安藤政信、ピエール瀧、森優作、九条ジョー(コウテイ)、木竜麻生、倖田來未、竹原ピストル、潤浩、松井玲奈、渡辺佑太朗、石坂浩二、松田龍平、國村隼……そうそうたるメンバーだ。

竹中組のキャスト起用理由は、至って明快。それは「直観」というもの。「毎回、映画のキャスティングは全部直観なんですよ。竹原ピストルさんを倖田來未さんと並ばせてみたい。松井玲奈さんがマネキン風になったらスゴイ……等々。“顔”のイメージが先行しているんです」(竹中監督)という。

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(C)2020「ゾッキ」製作委員会
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(C)2020「ゾッキ」製作委員会

齊藤監督は「ゾッキA」の最初に収録されている「伴くん」に衝撃を受け、実写化に着手している。

齊藤監督「嘘が真(まこと)になっていく、虚像と虚構みたいなものが、自分の物語でもあると思ったんです。人前に出る仕事をしている方は『こういう人間になろう』というイメージが先行し、それが基でトラブルを招くことがありますよね。例えば、戦時中、戦地にいった夫、家で待つ妻がいるとします。2人は、互いの写真を1枚だけ持っている。そういう会えないという状況の中では、想像と妄想が膨らみ、実際とは異なる人物像を作り上げることがあると思うんです。これは恋愛だけに限りません。僕自身もそういう経験がありますし、『伴くん』はその点がリアル。だからこそ、多くの人が共感してくれる物語だと思ったんです」

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(C)2020「ゾッキ」製作委員会

伴くんを演じた九条は芝居初挑戦となったが、齊藤監督は「圧倒的な“伴くん像”を作り上げている」と自信をにじませていた。

齊藤監督「(九条に)半分冗談、半分本気で『伴くんはジョーカーだから』と言ったんです。『ジョーカー』は、環境が作り上げた怪物。その点がすごく近しいなと思っていました。初日はその境地には至っていなかったですが、終盤は達したはず。そして、九条さんの芝居を受ける森さん。彼は(原作者の)大橋さんのイメージ。そっくりなんですよ。見た目というより……背負っているものでしょうか。森さんは、どの現場でも、スタッフさんに間違えられることがあるんです(笑)。森さんがキャッチャー、九条さんがピッチャー。良いキャスティングになったと思います」

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(C)2020「ゾッキ」製作委員会

山田監督が惚れこんだのは「Winter Love」。作品を読んだ瞬間、物語をけん引する藤村役は「松田龍平しかいない」と感じたそうだ。「とにかく“素敵な話”だなと感じたんです。ロードムービーというスタイルに惹かれたという点もありますね。『伴くん』は、結構エモい話ですよね。それは『僕が監督をするパートではない』という感覚があったんです。ほんの少しの変化……“人が変わる瞬間”をとらえたいと思ったんです」と説明する山田監督。ふと、手にしている台本に視線を落とす。そこには無数の書き込みが記載されていた。

山田監督「俳優として作品に参加する時、台本はまっさらなんです。芝居をする時は、内容を全て頭に入れておくので。でも、監督としての立場だと、こうやって書いておかないと忘れるレべルです。事前に準備しておかなければならないものもありますし、演じてもらう方々にだって準備してもらわなければならないことがありますから」

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(C)2020「ゾッキ」製作委員会

大橋氏の漫画の特徴といえば、最少の線で構成されている点。実写化の際は、大橋作品の雰囲気を損なわず、登場人物の感情を的確に抽出していく必要があった。

山田監督「基本的には“無”、感情が発露する時は“爆発”――中火がないようなイメージなんですよ。台本上には『嬉しい』と書かれていますが、基本的には“無”を意識しています。『この人は、一体何を考えているんだろう』と。その答えを、行動と言動によって、少し変化が見えるという形にしています。例えば、藤村のセリフ。前半は『すいません』というセリフをあえて切ったんです。これは、謝るべき時に謝れないという設定を強調したもの。旅に出て、人々と触れ合ううちに、最後は『すいません』と言えるようになっているんです」

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(C)2020「ゾッキ」製作委員会

また、大橋氏の故郷でもある蒲郡市について「僕も鹿児島の田舎育ち。原風景ではないですが、そういうものを感じさせる場所が残っている点がいいですよね。海も、山も、真っ直ぐに続く道路もある。大橋さんは、こういう景色を見ながら『ゾッキ』を作っていったんですよね」と思いを述べた山田監督。竹中監督にも、改めて同市の魅力について語ってもらった。

竹中監督「蒲郡市オールロケと聞いた時、最初は全体像が全くつかめなかった。やがてロケハンをしているうちにたまたま見つけたところが“画になる”ということが多かった。全ての場所が、原作と合致するというわけにはいかないので、その場所にあった形でアングルを決めていきました。この作業が本当に楽しかった。そういう意味では、蒲郡市は、今回の撮影にとても合っていたんです。映画としてとらえた『ゾッキ』としては、僕が抱いていたイメージと完璧に近いほどの場所。町の人たちが歓迎して下さる事はとても嬉しいんですが……めちゃくちゃ恥ずかしい。僕、無視されるのが好きなんです(笑)。とてもありがたいことなんですけどね」

映画.comでは、「ゾッキ」完成後にも、竹中監督、山田監督、齊藤監督へのインタビューを実施。完成した作品を、監督陣はどうとらえたのか。全国公開日となる4月2日直前の掲載を予定している。

「ゾッキ」は、3月20日から蒲郡市、3月26日から愛知県(一部劇場を除く)で先行公開中。4月2日より全国で公開。同作の制作から公開までの“裏側”に迫ったドキュメンタリー「裏ゾッキ」は、今春封切られる。

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