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なぜ、ドイツの女性は「結婚相手の年収」を気にしないのか

  • 2021.3.29
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ドイツ人の父と日本人の母を持ち、両国で人生の半分ずつを暮らしてきたコラムニストのサンドラ・へフェリンさん。新刊の『なぜ外国人女性は前髪を作らないのか』の中で、日本人女性は離婚調停中でもないのに夫の悪口を頻繁に言うことが不思議だと明かしています。そこには、仕事選びと結婚相手選びにまつわるドイツと日本の価値観の違いがありました――。

ドイツでは、CAや女子アナは憧れの職業ではない

——日本では、女性は若くきれいに見えるようにしていないといけない、「化粧はマスト」といったプレッシャーや「家事育児をこなさなきゃ」といった見えない圧が強いことを指摘されています。ドイツではいかがですか。

サンドラ・ヘフェリンさん(写真=本人提供)
サンドラ・ヘフェリンさん(写真=本人提供)

【サンドラ・ヘフェリンさん(以下、サンドラ)】ドイツではそういった圧は少ないですね。「女性は子どもを産むべきだ」「家事をすべきだ」などと言う人はほとんどいませんし、若さにはそもそもそんなに価値を置いていない。日本では、若く美しい女性が多いCAや女子アナ、受付嬢といった職業が憧れの的になったりしますが、ドイツではそうした風潮もありません。

これには、主に二つの理由があるのかなと思います。一つは、採用の際には外見や若さではなく、学校や大学で何を学んだかが重視されるから。もう一つは、ドイツ人はお金にシビアだから(笑)。仕事を選ぶ際は男女とも、定年まで自力で食べていける収入を得られることが第一条件なんです。

若さに価値がないからパパ活は成立しない

日本には、生活費は夫が稼いで妻は家で趣味の教室を開いている、といった夫婦もいて、一部の女性にとってはそれが「憧れのスタイル」だったりもします。でも、ドイツでは女性はあまりそういうスタイルを目指さないほうが良いとされています。ドイツでは夫婦とも同じぐらい働いて、それぞれが自活できるだけの収入を得ていることが多いです。

だから、家事育児も平等に負担するのが常識とされています。ただ、女性は出産するとどうしてもキャリアにブランクができますから、現状の制度だと男性より年金が少なくなりがちです。この問題は、報道はもちろん若い女性向けの雑誌でもよく取り上げられていて、性別・年代問わず関心が高いですね。

このように、女性も男性と同じく一生働くことが大前提なので、若さが有利に働く職業に価値を見いだす人はあまりいません。恋愛や結婚でも同じです。女性が若くても年齢を重ねていても、扱いにはさほど差がないんですよ。若い女性を好む中高年男性は、むしろ「恥ずかしい人」という感じ。だから「パパ活」も成り立ちません。若さ=価値という前提がないので需要がないのです。

どんなにお金持ちと結婚しても夫婦別財布

——結婚相手に求める条件も、日本とはかなり違ってきそうですね。

【サンドラ】そうですね。ドイツでは、結婚は生活のためではなくて恋愛の延長という感覚です。婚活や恋活も盛んですが、年収より趣味が合うかどうか、一緒にいて居心地がいいかどうかなどが重視されています。

ドイツ出身のコラムニスト、サンドラ・ヘフェリンさん
写真=本人提供

年収もまったく気にならないわけではありませんが、お金持ちの人と結婚しても夫婦別財布であることも多いし、家を買うにしてもそれぞれの稼ぎから半分ずつ出すことになるので、相手の年収はあまり関係ないんですよ。ドイツでは結婚の際に夫婦財産契約を結ぶカップルもいますし、基本的には夫婦であっても「自分の資産は自分の資産」という感覚が日本よりも強いのです。

結婚と言えば、日本では夫が家にいるとイライラするという女性も多いみたいですね。以前、友達から「日本には主人在宅ストレス症候群っていう病気があるんだよ」と教えてもらいました。テレビでも、街頭インタビューで専業主婦の方が「残業が減って夫に早く帰ってきてもらっても困る」と言っているのを見たことがあります。

これはドイツにはない感覚だな、面白いなと思って、なぜそうなるのか私なりに考えてみました。結論としては、そう言う女性たちは、居心地じゃなくて年収とか長男次男とかのスペックを重視して結婚したからかなと。

結婚前に、一緒にいる時の居心地を確かめるのは大事だと思います。例えば、台風で2人きりでホテルの部屋に閉じ込められてテレビもネットも使えない、そんな状況で10時間一緒に過ごせるかどうか。そう想像してみて「過ごせる」と思った相手と結婚するようにすれば、熟年離婚もなくなるのかなと思いました。

なぜ日本の女性は夫をウザいと感じるのか

日本では、妻が夫の悪口を書き込む投稿サイト「旦那デスノート」も話題になりましたよね。なかなか過激な内容で私も面白く読みましたが(笑)、ドイツには別居中や離婚調停中ならともかく、そうでないのに夫の悪口を言う女性はあまりいません。

結婚は恋愛の延長なので、気持ちがなくなったら離婚するのが当たり前。もし女友達に「夫が家にいるとウザい」などと言ったら、「別れなさい」と説教されるのがオチです。でも、ドイツの離婚は日本よりかなり大変で、最低でも1年間別居して裁判所を通してと時間も手間もかかるんですよ。

それでも手間を惜しまず離婚しようとするのは、別れたら生活していけないという人がほとんどいないからでもあると思います。男女どちらにも「養う」「養ってもらう」という発想がない。これは、一生食べていける職を選ぼうとする姿勢ともリンクしていますね。

ドイツ人も建前と本音を使い分ける

——結婚後の家事育児分担はどうなのでしょう。日本でも「平等に負担すべき」とは言われていますが、実際は女性の負担がかなり大きくなっています。

サンドラ・ヘフェリン『なぜ外国人女性は前髪を作らないのか』(中央公論新社)
サンドラ・ヘフェリン『なぜ外国人女性は前髪を作らないのか』(中央公論新社)

【サンドラ】ドイツでも、昔は、家事育児は女性の仕事とされていました。最近は男性もかなり分担するようになりましたが、このコロナ禍による在宅勤務で、また妻の負担が大きくなりつつあるようです。夫は部屋にこもって仕事してばかりで、結局妻がやることになるケースが増えていると。あるドイツのテレビ番組は「コロナ収束後、女性は元の平等負担に戻れるのか」と問題提起していました。

ドイツの男性に「家事育児を妻と平等に負担するつもりがあるか」と聞いたら、きっとYesと答えるでしょう。でも、それは建前であって本音ではないかもしれません。本音と建前は日本特有のものと思われがちですが、実はドイツ人も使うんですよ。

建前上は平等にと言っても、本音では家事育児はしたくないと思っている男性もいると思います。ただ、今のドイツで堂々と「俺はやらない」と言えば、周囲から一斉に非難を浴びることになる。男女平等に関しての社会的圧力は日本よりかなり大きいですからね。

日本にはない「パートナー圧」とは

私自身は、社会の中で女性の地位が高くなることを望んでいるので、男女平等への圧に関してはいいことだと思っています。でも、なくしてほしい圧もあるんですよ。実はドイツを含む欧米社会は「パートナー圧」がかなりキツいんです(笑)。

ドイツには、映画でもレストランでも旅行でも、行くならカップルでという共通認識のようなものがあります。未婚既婚を問わず「人にはパートナーがいるべき」という考え方が、強く定着しているんですね。だから一人では出かけにくいですし、時には「パートナーがいないということは人間的に欠陥があるんじゃないか」と見られることもあります。

女子会やおひとり様など日本では普通の楽しみ方も、ドイツでは変な目で見られることが多いです。私はどちらも大好きなので、そこは日本のほうが断然いいですね。以前、ドイツで一人でレストランに行ったら、「あの人なんで一人で来てるの?」みたいなスタッフや客の視線が痛くて……。日本ではまったく感じたことのない視線でした。

どの社会にも長所短所はあるものです。ドイツでは、特に女性が独り身でいると周りがうるさいので、焦って「だめんず」にひっかかる人も多い。不倫に寛容なのも、パートナーがいない人より不倫している人のほうが、まだ印象がいいからかもしれません。

男女ともに「男性=大黒柱」の感覚が根強い日本

——日本企業での勤務経験もおありですが、女性活躍についてはどんな印象をお持ちですか?

【サンドラ】私は女性らしさや男性らしさは否定しませんが、仕事は「男の仕事」「女の仕事」と分けるべきではないと思っています。やはり双方が肩を並べて、それぞれの能力を生かせる場所で同じように働ける環境を目指してほしいですね。

日本にはまだ「男性=大黒柱」という感覚が、男女ともに残っているように感じます。それに男性の中には、活躍している女性を指して「あいつは男だから」と言う人もいますよね。この言葉からは、「仕事で活躍できるのは男」という古い思い込みと、「俺はあいつを女として見ていない」というものすごくどうでもいいアピールが感じられて、本当に嫌な気持ちになります。

女性のことを「あいつは男」なんて言うべきではないし、そもそも女性として見ているかどうかなんて聞いていないのに。本当に、あの言葉はもう禁止にすべきだと思います。

現場体験を基に女性の生き方を発信していきたい

——今後はどんなテーマを取り上げていく予定でしょうか。

【サンドラ】マイノリティーにスポットを当てていきたいと思っています。私は日本と外国の両方にルーツがあるので、その視点から女性問題についても書いていきたいですね。私はドイツでも日本でも学校に通い、会社で働き、生活の現場を経験してきました。おかげで、観光客や駐在員の立場だったら見えない景色を見ることもできました。執筆の際は、やはりこの「現場体験」を大事にしていきたいです。

それと、フェミニズムにも興味がありますね。『なぜ外国人女性は前髪を作らないのか』は割とマイルドな内容ですが、今後は女性の生き方についてもう少し直接的な書き方をしてみたい。家族についても、親子の問題点や、国際結婚の盲点などについて書いてみたいと思っています。

日本の女性は、若さを求められたり家事育児をメインにした生き方を求められたりと、何かと圧が多いですよね。でもドイツにも自活して当然、パートナーがいて当然と違う形の圧があり、生き方に悩む女性も少なくありません。これからも両方の長所短所に目を向けながら、女性や家族、社会について発信していけたらと思います。

構成=辻村 洋子

サンドラ・ヘフェリン
著述家・コラムニスト
ドイツ・ミュンヘン出身。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフ」にまつわる問題に興味を持ち、「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ「ハーフを考えよう!」 著書に『ハーフが美人なんて妄想ですから‼』(中公新書ラクレ)、『体育会系 日本を蝕む病』(光文社新書)、『なぜ外国人女性は前髪を作らないのか』(中央公論新社)など。

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