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パートナーシップ制度と結婚。似て非なるその現実と課題[結婚の先輩に聞け!Vol.05]

  • 2021.3.28
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時代やライフスタイルが刻々と変化するなか、結婚のカタチもそれに合わせて多様化している。そのなかには、正式な結婚制度として現在は認められていないものの、オリジナルの新しい結婚スタイルを確立している人もいる。話を訊くと、どんな制度であれ互いへの想いやその存在意義は、家族そのものだ。
今回紹介するのは、約2年前に都内の区役所で「パートナーシップ制度」を使って届け出が受理されたGoshiさんとサトウさん。トランスジェンダーの2人に結婚観や「パートナーシップ制度」の実態について話を訊いた。

パートナーシップと結婚の違い。社会のなかでの低い認知

明るくてオープンマインドなGoshiさんと落ち着きがあり穏やかな印象のサトウさん。取材時に2人のやりとりを聞いているだけでも、すごく仲がいいことが伝わってくる。聞くと、2人は高校1年生から約15年来の付きあいとのことで思わず納得。長い間親友関係だった2人が2年前に「同性パートナーシップ制度」を申請したのもごく自然の流れだったようだ。

「高校生の時から一緒に遊んできた長年の親友。近年はより一緒に過ごすことが増えていたこともあり、サトウから『一緒になりませんか』といわれました。僕も望んでいたので、パートナーとして一緒に暮らすことになりました。二人暮らしを始める際に、どうせなら『パートナーシップ制度』を使ってみようということで申請することにしたんです」(Goshiさん)

友達から、パートナーに発展した2人。それぞれに結婚に対しての価値観を訊いてみると、「パートナーシップ制度」に対する理想と現実のギャップが見えてきた。

「『パートナーシップ制度』が適用されたという状態ではあるのですが、結婚したという実感があまりないんです。僕らが申請した区では、渋谷区のような“条例”ではなく、法的効力がない“要綱”として制定されているもの。効力を発揮する場面は実はあまりないんですよ。ただそれとは別に僕の場合、仕事柄人に会う機会が多いので、『パートナーシップ制度の証明書を取得しました』と周りにはっきり宣言ができるようになりました。他人に理解してもらうのには分かりやすい“制度”ですし、助かっている面もあります。口に出して言えるということや、第三者から婚姻関係と同じように認めてもらえるのはすごく肯定されている気持ちになるんだなと実感はしています」(Goshiさん)

確かに、昨今「パートナーシップ制度が普及している」という世の中の流れもあり、恋人以上の“正式なパートナー”であると周りからの認識してもらえることが多いだろう。だが、昨今なんとなく法的に整備されてきたような印象が強いが、実態はまだ条例以下の小さな動きでしかない。パートナーのサトウさんに話を訊くとGoshiさんとは真逆の意見を述べる。

「私はすごく親戚が多いので、昔から結婚式に出席する数も多かったんです。大勢でワイワイ、誰かが結婚となるとみんなでお祝いをする。でもいざ自分が『パートナーシップ制度』を使ったからといって、親族一同にご報告、とはいかない。私にとって『結婚』は、あくまで互いの親族に戸籍上の繋がりが生じることだし、身近な家族にとっても籍が動かないと実感が沸かない部分が多いのかなと。だから『結婚した』とは思えないのかもしれません」(サトウさん)

つまり、それぞれが身を置く環境によって、「外からの見え方」や言葉の認識に違いがあるとのことだ。「結婚」という言葉なら、誰がどう聞いても夫婦として認識される。でも「パートナーシップ」という言葉は、どういう関係なのか理解できない人も多いだろう。

パートナーシップ制度では叶えられない日々のあれこれ

現在日本で広がりつつある「パートナーシップ制度」には、大きくわけて2種類存在する。①法令のひとつであり議会の議決を経て決定される “条例”と②首長や区長の権限で策定される事務用マニュアルのような“要綱”だ。実はこの2つ、似ているようで大きく違う。

都を例にだすと、 “条例”を制定する渋谷区のような①は、「男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」が議会の承認を経て成立したもの。そのなかで「男女の婚姻関係と異ならない程度の実質を備えた、戸籍上の性別が同じ二者間の社会生活における関係」をパートナーシップとして定義している。公正証書による契約書を作成することで2人のあいだに法律的に担保された関係が成立するのだ。それと比べると、Goshiさんとサトウさんが申請した②“要綱”の場合は、いわば文言のみ。自治体の基本的な、または重要な内部事務の取扱いについて定めたものであり法的な効力はない。

「自分はサラリーマンなので、会社の福利厚生制度が気になりました。法的に夫婦として認められていれば、不動産契約は、夫か妻かが世帯主になりますよね。僕たちは“夫婦ではなく同居”という扱い。会社の住宅補助などの制度も適用が難しいんです。もちろん、理解がある会社なので交渉すればできると思いますが、正直そういう手間も面倒だなと思いまして」(サトウさん)

そして、困難に直面するのは制度や法的なハードルだけというわけでもなさそうだ。一緒に住む家を探す際、不動産会社に「うちはそういう面倒くさいのは嫌だから」と、門前払いにあったそうだ。まだまだ2人のような人たちを受け入れる土壌が世の中で整ってないことがうかがえる。

「『パートナーシップ制度』を申請したとき、区役所の方からは、区営住宅の入居ができること、災害時の情報提供(安否確認など)を家族と同じようにできることなどの話を聞きました。また、公営の病院がある自治体では面会や説明を家族同様に受けられる場合もありますが、自分たちの区にはちょうど公営の病院がなかったため、これは当てはまりませんでした。最近では、家族割りなどの民間のサービスも少しずつ広まっていることも教えていただきました」(サトウさん)

では、2人は「パートナーシップ制度」を利用することにはどんな意味があると捉えているのか。「使わない=不要、と思われるのは困る。だから目立った実利がなくても利用している」サトウさんは訴える。自分に特にメリットがないからといって使わない・・・・・・という人が多ければ、不必要と判断されてしまうだろう。2人をはじめLGBTQ+に該当するさまざまな立場の人たちへの理解を広めるためにも、“次のステップ”へと世論を動かすためにも、個々のアクションには切実な想いが込められているのだ。

小さくても、一歩ずつ。変わり始めた日本

無論、彼らのようなカップルでも平等な生活やサービスを受ける権利がある。誰がどう言おうとそれを確かなものにするためには、やはり同性同士での結婚を国の法律で認めるべきではないだろうか。

「自分たちみたいなLGBTQ+の人でも法律婚という選択ができるようにしたい。世の中が少しずつ変わっていけばいいなと思います。とはいえ、ここ10年で少しずつ状況が変わってきている。自分たちのようなケースが最初のステップだと思っています。その数を積み上げることで何か変わればいいという気持ちで、今ある制度をどんどん使っていきたいと思います」(Goshiさん、サトウさん)

区から都へ、都から国へと一つひとつ結果を積み上げていくことが大切だ。アジアで最初に同性婚を立法した台湾だって、少しずつステップを踏んでいった。2015年に高雄や台北で始まった「パートナーシップ制度」が80%のエリアにまで広がり、開始から4年で同性婚の法制化へと至ったのだ。
日本でも、小さなアクションがたくさん始まっている。個人はもちろん、企業、国へとその連鎖が広がることを期待したい。

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