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万引きGメンへの報復はおそろしい! 不良グループ捕まえた2日後……店長が「大変なことが起こってさ」と漏らしたワケ

  • 2021.3.28
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写真ACより

こんにちは、保安員の澄江です。

過日、ドラッグストアで万引きをして保安員に捕まり、懲役刑を受けて出所した男(35)が、捕捉した保安員の関係先に複数回汚物を送って嫌がらせをしたとして、大阪府迷惑防止条例違反で逮捕されるという事件がありました。捕まったことに対する報復のため、使用済みの靴下やスリッパ、紙屑入りのごみ袋などをダンボールに詰めて、着払いで送りつけていたとのこと。汚水を入れたウォーターサーバー用のタンクを送りつけたこともあったそうで、その発想に驚きつつも、宅配便の配送料金が気になりました。警察の調べに対して被疑者は、ゴミを送ったのではなくプレゼントのつもりだったと供述しているそうで、まるで反省の色はないようです。

いやがらせ行為は、出所直後から始まったと報道されています。保安員の住所を知り得た背景が気になりますが、それに言及する記事は見当たりませんでした。被害者や逮捕者の住所氏名は、被害届や供述調書、現行犯人逮捕手続き書(乙)などを見れば、複数個所に記載されています。逮捕者である私たちの住所を被疑者が知り得るには、それらの書類を覗き見るほかなく、それ以外の手段は考えられません。

経験がある方なら、おわかりいただけると思いますが、捜査官は取調べ中に、取調室をたびたび出入りします。慎重な方が担当であれば、隙を見せることなく書類を見えないように隠して退出されますが、なかには気遣うことなく放置して退室してしまう方もおられるので、やろうと思えばできてしまうことは否定できません。長時間にわたり密室で行われるため、そのチャンスは豊富で、タイミングさえあえば簡単に盗み見ることができるといえるでしょう。

見てはいけない、撮影してはいけないと言われるほど、それに固執してしまう人がいるのも事実です。私自身、検事席に置かれた被疑者の経歴書や身分帳(刑務所で使用される個人台帳)を目にしたとき、どんな内容が書かれているのか非常に気になりました。もちろん、無断で盗み見るようなことはいたしませんが、逮捕者を逆恨みする被疑者の立場であったら、どうでしょう。このような形の情報漏洩から、より凶悪な被害が生じる可能性は捨てきれず、ぜひとも逮捕者の住所を知り得た経緯を明らかにしていただき、再発防止策を講じてもらいたいものです。今回は、私が経験した万引き犯の報復行為について、お話ししたいと思います。

フードコートのテーブルで爪を切る! モラルなしの不良グループ

当日の現場は、関東の郊外に位置する大型ショッピングセンターH。食品のほか、書籍や衣料品、日用品、コスメドラッグなどまで扱う老舗店舗です。近隣に商店が少ないため、この店のフードコートは異様な活気を見せており、老若男女を問わず、数多くのお客さんが来店される人気スポットになっています。

ここのところ、そのフードコートが地元高校生を中心に構成される不良グループのたまり場と化してしまい、それに乗じて万引き被害も増えているということで、その摘発を依頼されました。予算の関係上、単独勤務ではありますが、お店の方が全面協力してくださることを約束してくれたため、捕捉時の恐怖は控えめで済みそうです。事務所まで挨拶に出向くと、どことなく近藤正臣さんに似た渋めの店長が、色つきの眼鏡を直しながら言いました。

「売場にいる高校生は、だいたいやっているから、なるべく捕まえてください。あと、フードコートでの迷惑行為を見かけたら、これで呼んでもらえるかな。ちょっと隙をみせると、すぐ調子に乗るから、なかなか大変なんだよね」

保安専用と書かれた充電器から、PHS端末を外した店長が、それを私に差し出しながら言いました。あまり聞かない依頼を受け、戦々恐々とした気持ちで現場に向かった私は、フードコートの状況から把握することにします。すると、昼前にもかかわらず、フードコート内には多くの高校生がたむろしていました。いくつか勉強しているグループもいますが、そのほとんどがスマホのゲームに興じており、テーブルに伏して寝ているグループまで見受けられます。

一番ひどいのは、テーブルに足を投げ出して足の爪を切っている者のいるグループで、その足元には、切った爪の破片や飲食物の残骸が散らかっていました。皆一様にワイシャツの襟元を大きく開き、さまざまな色に髪を染めた4人組で、足の爪を切っている白に近い金髪の男がリーダー格の雰囲気を漂わせています。どことなく元TOKIOの山口達也さんに似た体格のいい男で、彼の発する威圧的な雰囲気が、ほかの客を遠ざけているように見えました。マナーやモラルを守らないことで目立ちたいのか、奇声を上げてじゃれ合い、キックボクシングのマネごとまで始めたので、店の外に出てから店長に連絡を入れます。

「また、あいつらか。どうせ言っても聞かないから、売場に出て悪さするまで、目を離さないでもらえますか。従業員にも、注意するよう伝えておくので」

お菓子にアイス、雑誌、コミックスも万引き!

フードコートの外にある雑貨屋に潜んで、彼らの動向を見守ること90分。ようやくに動き出して、食品売場に向かった彼らは、売場通路の端に見張りを立てる動きを見せました。近づくことができず、かなり離れたところから状況を見守ると、部活用らしい大きなバッグを開いて、チョコレートやポテトチップス、ボトルガムなどの商品を次々に隠していくところを現認。早速、店長に連絡を入れて、現在の状況を報告します。

「やったの、見れたの!? 本当に、間違いない?」
「間違いないですよ。まだやりそうな雰囲気ですけど、一緒に見ますか?」
「いや、間違いないなら、110番しちゃう。あいつら、絶対に暴れるから」

そのまま注視を続けると、菓子パンとドリンク、それに高価なほうのアイスクリームを同様の方法で隠した彼らは、その足で書店に向かっていきました。十分な現認があるので、深追いすることなく店の外から動向を見守れば、団子状態になって、オートバイと格闘技の雑誌をバッグに隠すところを目撃できました。続いて、怪しくも楽しげな目つきでコミックス売場に向かう彼らを目で追っていると、現場に臨場した刑事から声をかけられます。

「ご苦労様です。あいつらですね?」
「はい」
「やったのは、間違いない?」
「食品売場で、お菓子やアイス、ドリンクを入れて、いまさっき雑誌を入れるところも見ました。これからコミックスをやると思いますよ」

するとまもなく、予想通り人気コミックスを実行した彼らに、3人の刑事が声をかけました。その場で同行を求められた彼らと、別のパトカーで警察署に向かい、一通りの手続きを済ませて事務所に戻ります。

「今日は、よくやってくれました。発注しておくので、また来てもらえますか?」

それから、2日後。ご指名をいただいたため、勤務予定を変更して、この店に入ります。事務所に出向くと、挨拶もそこそこに、どこか元気のない様子の店長が言いました。

米袋に穴! 防犯カメラに映っていたのは?

「こないだは、お疲れさま。昨日のことなんだけどね、ちょっと大変なことが起こってさ……」

話を聞けば、食品売場に陳列される複数の米袋に穴を開けられる被害に遭われたそうで、夜中まで防犯カメラの検証作業をされたと話しています。

「さっき、ペットボトルのフタが開けられてる被害も発覚してね。いくつか苦情も入ってて、困っちゃうよ」
「防犯カメラには、なにも映っていないんですか?」
「それがさ、ちょっと不鮮明なんだけど、こないだの子たちみたいなんだよね。そろそろ警察も来ると思うから、一緒にいてくれる?」

その後の調べで、一連の犯行は、彼らによるものだと判明。正面口の扉につけられた鍵穴に瞬間接着剤を注入していた事実も判明し、後日、逮捕される事態となりました。警察に呼ばれた店長が、担当刑事に犯行理由を聞いたところ、前回の犯行後、出入禁止にされたことが許せず、いわゆる報復心から犯行に至ったようだと話していたそうです。

最終的には、彼らの保護者が弁償金を分担して支払うことで、事態は終結。この日を境に、当該高校の生徒は、この店に出入りすることを学校から禁じられたそうで、荒れていたフードコートに平穏が戻りました。

澄江(すみえ)
万引きGメン(保安員)歴40年以上。スーパーで品出しのパートをしている時に、万引き犯を捕まえたことがきっかけで、この世界に。現在も週5日は現場に立っている。

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