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「山手線を歩いて一周」卒業旅行も行けない大学生の休日を楽しむ知恵

  • 2021.3.26
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コロナ禍の今、大学生たちの卒業旅行はどう変化しているのでしょうか。思い出づくりの場として人気が高まっているスポットから、旅行に代わる新たな楽しみ方まで、およそ10人もの学生たちが語り合いました。若者文化に詳しい原田曜平さんが聞き出した、彼らの意外な行動とは──。

山手線
※写真はイメージです

【座談会参加者】
國武 那汰莉さん/立教大学文学部3年生。
河内 杏南さん/早稲田大学文化構想学部2年生。
齊藤 龍星くん/早稲田大学政治経済学部2年生。
高杉 真由香さん/慶應義塾大学総合政策学部2年生。
山本 祥子さん(仮名)/慶應義塾大学法学部1年生。
鈴木 かのんさん/桜美林大学ビジネスマネジメント学群2年生。
工藤 慶人くん/一橋大学経済学部2年生。
加藤 耀くん/東京理科大学理工学部2年生。
坂後 裕菜さん/上智大学総合グローバル学部1年生。
福永 怜生くん/早稲田大学商学部5年生。

卒業旅行は「手軽・近場・密回避」が主流に

【原田】今、大学生はコロナの影響で卒業旅行に行きにくい状態になっているよね。5年生の福永くんは後輩たちが、2~3年生の皆は周りの先輩たちがどうしているのか教えてくれるかな。

【福永】僕は去年に卒業旅行を済ませたのでコロナの影響はなかったんですが、今年卒業する後輩たちはいろいろ工夫しているみたいです。リゾートスタイルのキャンプ「グランピング」か、旅行でも車で行ける近場にする子が多いですね。行き先を決める時も、飛行機で行くような遠方ははばかられるようで、「飛行機かどうか」が判断の境目になるって言っていました。手軽・近場・密にならない・飛行機が不要っていうのが決め手みたいです。

【國武】福岡にいる知り合いは、県内で済ませるって言っていました。本当は海外に行きたかったけどコロナでやめたって。私自身は、緊急事態宣言が解除されたら、密にならないスキー場とかに行こうって友達と話しています。

【坂後】私の先輩は、コロナがちょっと収まっている時に沖縄に行ったりしていました。最近だと、都内のホテルに泊まったり日帰り旅行したりしている人が多いですね。でもこれって、他の人から見たら、ただの日常的な遊びなのか卒業旅行なのかよくわからないですよね

行く派と行かない派にわかれる

【山本】4年生の姉は、近場に行くぐらいならしなくていいっていう「行かない派」と、せっかくだからって福岡や沖縄まで出かける「行く派」にはっきりわかれてるって言っていました。乗り物では、バスは換気がよくないイメージがあるから、飛行機や新幹線を使う人が多いみたいです。最近は、遠出せずにホテルでゆっくり過ごす「ホカンス(ホテル×バカンス)」も流行っているんですけど、卒業旅行に使うケースは周りでは聞いたことがないですね。

週末ホカンスに切り替え

【高杉】9月に卒業した先輩は、内定先や家族に言われて卒業旅行をやめたそうです。その代わり、入社後、コロナが落ち着いた時期に毎週末ホカンスをしたって。卒業旅行で行くはずだった3泊4日を、週末ごとに分散して楽しんだみたいです。

「内定先から卒業旅行を止められて行かない人が多い」と指摘する工藤くん。
「内定先から卒業旅行を止められて行かない人が多い」と指摘する工藤くん。

【工藤】周りから行かないように言われた人は多いですよね。4年生の人に聞いたら、「バイト先や内定先から行かないように言われたから行かない」って。後は、祖父母と暮らしていて、うつしてはいけないっていう責任感からやめる人もいます。でも、皆本当は、コロナがなければ行きたいんですよ。行きたくない人はいないと思います。

【加藤】知り合いに、春から群馬で教員をする予定の人がいるんですが、学校側から「卒業旅行には行かずに早めに群馬に来てくれ」って言われたそうです。本人は、生徒に迷惑をかけたらいけないから、もともと旅行には行かないつもりだったって言っていました。

【鈴木】私の先輩は、オンライン海外ツアーのインド旅行に参加していました。

【加藤】旅行に行けないからって、新しい趣味を始めた人もいますよね。友達はカメラを始めて、一人で田舎に行って写真を撮ったりしているみたいです。

一人旅に出かける若者が増加中

【原田】旅行に行けなくなったことが、新しい趣味を見つけるきっかけになったわけだ。ホカンスもそうだけど、コロナで若者の休日の過ごし方が少し変わってきているのかもしれないね。街から離れた場所なら密も避けやすいし、プチ旅行気分も味わえるしね。でも、今の若者にとって一人旅ってアリなの? ちょっと寂しい気もするけど。

【齊藤】全然アリですよ。僕はコロナ前から一人旅が好きで、日帰りで関東近郊に出かけたりしていました。

【加藤】僕も一人旅は好きですね。まあ、友達がいないから一人で行くしかないっていうのもあるんですけど(笑)。以前はよく一人で、軽井沢1泊2日とかでスノーボードをしに行っていました。

日帰り一人ドライブもアリ

【高杉】私も、よく一人で日帰りドライブをしています。最近免許を取ったばかりで、友達を乗せるのはまだ怖いから。運転の練習も兼ねて、少し遠目の場所に行って趣味の写真を撮ったりして楽しんでいます。

【齊藤】旅行会社も、今は遠くに出かけるプランより、街から離れた場所にある隠れた名店やちょっといいホテルをおすすめしてくれたらうれしいですね。僕は、何もない田舎にポツンとあるようなおいしい店が好きなんです。

「自転車に乗り始める若者も増えた」と河内さん
「自転車に乗り始める若者も増えた」と河内さん

【原田】若者にそうしたニーズがあるのなら、これからは旅行会社が出すプランも変わってくるかもしれないね。じゃあ旅行以外ではどうかな? 皆の周りで、コロナの影響で流行り始めている遊び方があったら教えてくれるかな。

【國武】オンライン読書会を始めた子が何人かいます。知識系や勉強系の本が多いんですが、皆で同じ本を読んだ後に、オンライン上で感想や分析を言い合っているそうです。

【河内】散歩する人や自転車に乗る人も増えましたね。自転車は、今は自分で持っていなくても簡単に借りられるから、気軽に始められるんだと思います。

3~4人で山手線を一周

【山本】友達は3~4人で、山手線を歩いて一周するっていう遊びをやっていました。通った駅を一つずつインスタのストーリーに上げていて、「いいね」も結構ついていましたね。

【國武】私は、ランチしに遠めの場所まで行くようになりました。これまでは近所ばかりだったけど、今は隣駅や田舎のほうでお店を開拓しています。

【高杉】公園に行く若者も増えた気がします。都内だけでも石神井公園、等々力渓谷公園、昭和記念公園とかたくさんありますよね。でも、ピクニックに行くわけじゃなくて、ただ友達と散歩しておしゃべりして帰るっていう人が多い。エアビーはお金がかかるから、それに代わる「少しキレイめな場所」として公園を選ぶんじゃないかな。仲のいい友達と対面で、気兼ねなく話せる場所を求めている若者は結構いると思いますよ。

【原田】皆、密に気をつかいながら遊び方を工夫していたんだね。若い子は、ずっと家にいるのも友達と会えないのもつらいだろうけど、コロナの影響で出かけられる場所は限られている。そんな中で、田舎や公園へ行ったり、地元のエリア内で少しだけ遠出したりしているわけだ。

今回の座談会では、卒業旅行の現状や、旅行に代わる若者の楽しみ方を聞きました。グランピングやホカンスのほか、1泊ずつの分散型小旅行や日帰り旅行も人気が高まっているようです。また、行き先としては公園、郊外といった新たな場所が支持を得ている様子。地元などの近場をあらためて探索しようとする動きもあり、これは世界中でローカル意識が高まりつつある現状ともリンクしているように思いました。こうした傾向は旅行に代わる楽しみ方として定着するのか、それともコロナ期だけの一過性のもので終わるのか、引き続き注視していこうと思います。

構成=辻村洋子

原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。信州大学特任教授。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」「Live News it!」、日本テレビ「バンキシャ」等に出演中。「原田曜平若者研究所」のYouTubeチャンネルでは、コロナ禍において若者の間で流行っていることを紹介中。

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