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日本人の食生活の持続可能性保健福祉大学長「Jミルク」セミナーで語る

  • 2021.3.25
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Jミルク講演会に登壇した中村丁次氏(画像は神奈川県立保健福祉大学提供)

新型コロナウイルス禍に伴う巣ごもり生活で、以前よりも食生活に関心が向けられるようになった。SDGs(持続可能な開発目標)の観点から、栄養について考える機運も高まっている。また、動物性の食品が気候変動に与える影響から、肉類や牛乳・乳製品をネガティブに位置付け、植物性の食生活を推奨する動きも欧米を中心にみられる。

乳業関係者の業界団体「Jミルク」は2021年3月23日、「『日本人の栄養とSDGs』~未来に向けた『ジャパン・ニュートリション』~」と題したセミナーを開催した。神奈川県立保健福祉大学学長の中村丁次氏が登壇し、日本の食生活の持続可能性や牛乳・乳製品の役割について講演した。

現在のフードシステムには大変革が必要

「栄養不良」はまだ世界中に存在する。その解決法を模索するにあたり、日本の「栄養」が鍵を握っているのではないか――中村氏は、こう指摘する。

世界保健機関(WHO)が2019年に示した「持続可能な健康な食事」のための指針によると、現在のフードシステムには大きな変革が必要だ。現状では食生活に関連した肥満といった疾患が世界的に死因の主要疾患になっている一方で、8億人が低栄養の状況にある。

さらに、現代の食料システムは世界の温室効果ガス排出量のうち20〜35%を放出するなど、持続可能なものではない。変革なしには、今後健康な食事もままならなくなるとされている。そこで、健康的な食事と環境に良い持続可能な食事をいかに両立するかが課題となる。

持続可能で健康的な「ジャパン・ニュートリション」を世界へ

肉や牛乳はタンパク質やビタミンの栄養源にもなるが、畜産の生産過程では、牛の「ゲップ」や排泄物により温室効果ガスが多く排出される。ただし、畜産を今後日本で制限していく必要はないと中村氏は語る。

日本人が生活全体で排出するCFP(CO2に換算した温室効果ガスの排出量)のうち、肉類と牛乳・乳製品を含む畜産由来の割合は6.7%だ。これは欧米での生活に対する畜産由来のCFP割合の半分以下だという。その上、食事によって生み出される1人あたりの温室効果ガス排出量を比較すると、日本はG20諸国の中で2番目に排出量が少ない。

中村氏によると、日本人は稲作を中心とした伝統的な食事を継承しつつ、明治以降に欧米の栄養学を導入。肉、卵、牛乳・乳製品など、栄養密度の高い食品や料理を取り入れ、持続可能で健康な食事を創造したのだという。

魚介類、大豆、牛乳・乳製品を中心として肉類を適度に食べる日本食が、健康にも地球にも良いと中村氏は語る。「ジャパン・ニュートリション」と呼ばれる、こうした日本独自の栄養や経験が、栄養に関する議論のヒントになると考えているとのことだ。今後は世界の人々の健康や幸福のために「ジャパン・ニュートリション」を発信していくとした。

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