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「骨壺を特注したのに、死んだら盗まれた」のは誰?

  • 2021.3.23
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戦後日本を代表する大衆小説作家・山田風太郎が923人の死に際を切り取った『人間臨終図巻』(徳間書店より全4巻)は、長年多くの人から愛されている。2019年にはサメマチオさんによって漫画化され、このたび待望の第2弾が登場した。

2021年3月19日に発売された『追読人間臨終図巻II 文豪編』(徳間書店)では、『人間臨終図巻』の中から近代以降の125人に厳選した日本の文豪の死に様が漫画で描かれている。文学史に名を残す作家の「死に様」から、魅力にあふれた「生き様」が窺える。

原作者の山田風太郎は、1922年生まれ、2001年没。推理小説や忍法帖、明治ものなどで名を馳せた、戦後日本を代表する娯楽小説の大家。『誰にも出来る殺人』『甲賀忍法帖』『警視庁草紙』など多数の著書があり、2000年には第4回日本ミステリー文学大賞を受賞。奇想天外なアイデアを用いた大衆小説で知られている。

では、本書の一部を紹介していこう。有名な作家がたくさん収録されている。

<江戸後期~明治初期生まれの人>

国木田独歩 享年37(1871年~1908年)「僕は今死にたくない」(『人間臨終図巻1』より)

「早すぎた天才」と言われ続けようやく認められた矢先に病に倒れた独歩。

「今僕が死ぬと、世間では、独歩はいいときに死んだ、などというだろうが、僕は今死にたくない」

島木赤彦 享年50(1876年~1926年)「これで解散だ」(『人間臨終図巻2』より)

当時は不治の病とされていた胃がんを患った島木赤彦は、家族に「解散宣言」をする。

「今夜おれはまいるかも知れない。これで解散だ」

<明治中期生まれの人>

志賀直哉 享年88(1883年~1971年)「焼場のきたない骨壷に入れられる事は厭わしく」(『人間臨終図巻4』より)

「私は灰になった後でも、焼き場のきたない骨壺に入れられることは厭わしく」

とのたまっていた志賀直哉。オーダーメイドの骨壺をつくらせたにも関わらず、その骨壺が盗まれるという残念な結果に......。

永井荷風 享年80(1879年~1959年)「余死する時葬式無用なり」(『人間臨終図巻4』より)

久保田万太郎 享年74(1889年~1963年)「湯豆腐やいのちのはてのうすあかり」(『人間臨終図巻3』より)

<明治後期生まれの人>

林芙美子 享年48(1903年~1951年)「あたしなら、こんな濁った川では死なないわ」(『人間臨終図巻1』より)

平林たい子 享年67(1905年~1972年)「これほど生命力の強いたい子は、ついに病気を克服し、戦後超人的な執筆活動を開始した」(『人間臨終図巻3』より)

<大正~昭和初期生まれの人>

柴田錬三郎 享年61(1917年~1978年)「柴田錬三郎は昭和五十二年(中略)過労のため体重三十八キロほどになり、慶応病院に入院した。」(『人間臨終図巻2』より)

寺山修司 享年48(1935年~1983年)「私の墓は、私のことばであれば充分」(『人間臨終図巻1』より)

文学史をおさらいしながら、文豪の人間性に触れ、作品を読むのとは違った角度から楽しめる。ちょっとした教養にも雑談のタネにもなる一冊。

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